地方自治体で働く会計年度任用職員としての経験を活かし、正職員を目指したいと考える方は年々増えています。とはいえ、「どうやって正職員になれるのか?」「試験の内容は?」「志望動機はどう書けばいい?」と悩む方も多いのではないでしょうか。
この記事では、会計年度任用職員から正職員になるための基本的な流れや、合格に向けて準備すべきポイントをわかりやすく解説します。具体的には、採用試験の種類や内容、面接で聞かれやすい質問、そして志望動機の書き方など、実務経験をどのようにアピールすればよいかをまとめています。
また、転換時に気になる年休の引き継ぎルールや、正職員と任用職員との待遇の違いについても詳しくご紹介します。これから正職員を目指す方にとって、確かな一歩を踏み出せる情報をお届けします。
- 会計年度任用職員から正職員になるための制度や試験のしくみ
- 任用職員としての経験が公務員試験で有利になる理由
- 正職員と任用職員の待遇や仕事内容の違い
- 志望動機や面接で評価されるポイントと対策
会計年度任用職員から正職員を目指す前に知るべきこと

- 会計年度任用職員は公務員になれる?
- 会計年度任用職員の経験は公務員試験で有利?
- 正規職員と会計年度任用職員の職務・待遇の違い
- 年休は引き継がれる?
会計年度任用職員は公務員になれる?
会計年度任用職員でも、公務員として正規採用される道はあります。制度上は「非常勤の地方公務員」として扱われており、正規職員になるには試験に合格する必要があります。
まず、制度の仕組みを簡単に説明します。会計年度任用職員は、地方自治体で1年間単位の契約で働く職員のことです。フルタイムやパートタイムの形があり、仕事内容は正規職員のサポート業務や専門分野の仕事が中心です。ただし、更新は毎年必要で、最大でも3年〜4年ほどで契約が終了する場合があります。
では、正規の公務員になれるかというと、次のような方法があります。
- 自治体が実施する「会計年度任用職員向けの採用試験」に応募する
- 一般の公務員試験を受ける
- 経験者採用枠や特別枠を活用する
特に最近では、会計年度任用職員としての経験や勤務評価をもとにした「特別選考枠」を設けている自治体もあります。このような枠では、実務経験が評価され、筆記試験が一部免除になることもあります。
ただし、制度の内容は自治体ごとに違うため、あらかじめ自治体の公式サイトや募集要項をよく確認する必要があります。
言いかえると、会計年度任用職員は、公務員になるための足がかりにはなりますが、必ず正規職員になれるわけではありません。準備と情報収集が合格のカギです。
会計年度任用職員の経験は公務員試験で有利?

会計年度任用職員の経験は、公務員試験において有利に働くケースが多くあります。実際、勤務経験者の合格率が高い自治体もあり、内部で働いた実績が評価されやすい傾向があります。
その理由のひとつは、自治体の仕事やルールにすでに慣れている点です。たとえば、業務の流れや専門用語を理解していることで、面接でのやり取りがスムーズになります。また、内部資料や政策に日常的に接していることで、論文や小論文試験にも強くなります。
以下のような点で有利に働きやすいです。
- 面接で実務経験をアピールできる
- 地域の課題を具体的に語れる
- 公務員の行動やマナーを理解している
- 指導を受けた職員が面接官である場合もある
さらに、政令指定都市や中小の自治体では、会計年度任用職員出身者の採用比率が高いというデータもあります。とくに、福祉・土木・事務職などでは、現場でのスキルがそのまま即戦力として評価されやすくなっています。
ただし注意したいのは、勤務経験だけで合格が保証されるわけではない点です。筆記試験の対策や志望動機の作成も欠かせません。つまり、「経験があるから大丈夫」ではなく、「経験をどう伝えるか」が合否を分けるカギとなります。
正規職員と会計年度任用職員の職務・待遇の違い

正規職員と会計年度任用職員には、仕事の内容だけでなく、給料や休みの面でもはっきりとした差があります。ここでは、主なちがいを3つのポイントに分けて紹介します。
1. 雇用の安定性
- 正規職員
定年まで働けることが前提で、長く安定して勤められます。転勤や異動はありますが、雇い止めの心配はほとんどありません。 - 会計年度任用職員
1年ごとの契約です。更新されるケースが多いですが、必ず継続できるわけではないため、不安定になりがちです。
2. 仕事内容と責任
- 正規職員
政策づくりや全体の調整など、リーダーとしての役わりも多くなります。業務の幅が広く、部署間の連携も担当します。 - 会計年度任用職員
事務補助や現場の作業が中心です。正職員の指示を受けて動く場面が多く、決定権のある業務は少なめです。
3. 給与・賞与・手当
- 正規職員
月給制で、年2回の賞与(ボーナス)や各種手当が支給されます。昇給や退職金もあるため、長く働くほど収入が安定します。 - 会計年度任用職員
月給制・日給制または時給制で、賞与は正規職員と同じく年2回の賞与(ボーナス)が支給されますが、金額が少ない傾向です。退職金は条件によって変わります。
正規職員と会計年度任用職員では、働き方や待遇に大きなちがいがあります。将来の安定ややりがいを求めるなら、正規登用を目指す道も考えてみましょう。
年休は引き継がれる?

会計年度任用職員から正職員になったとき、年次有給休暇(年休)がどうなるかは多くの人が気になる点です。実はこの年休、きちんと条件を満たせば引き継がれる可能性が高いです。
年休の扱いは、以下の2つのポイントで判断されます。
- 同じ自治体での勤務かどうか
- 転換に空白期間があるかどうか(1か月以内が目安)
つまり、同じ自治体で連続して勤務し、間に長いブランクがなければ、任用職員の期間も「継続勤務」と見なされます。
例えば、3年間パートで週3日勤務をしていた人が正職員になったとすると、勤続3年として週5日勤務に合わせた日数で年休が付与されます。なお、未使用の年休が残っている場合は、次のような点に注意しましょう。
- 古い年休は2年間で消滅します
- 転換後の年休は、新しい勤務条件に基づいて再計算されます
- 年休の「引き継ぎ」は自治体のルールによって扱いが違います
また、転換のタイミングによっては、年休の「二重付与」が起きないよう調整される場合もあります。たとえば4月が年休の基準日なら、転換を3月に行うことで付与時期をズラすなどの対応がされることもあります。
年休の取り扱いについては就業規則をよく確認し、人事担当に相談しておくと安心です。引き継ぎがあるかどうかは、事前の確認が何よりも大切です。
会計年度任用職員から正職員になるための実践対策

- 志望動機の書き方で合否が変わる理由
- 面接で聞かれる質問と回答例
- 看護師が会計年度任用職員から正職員になる方法
- 正職員登用を勝ち取る人の特徴とは?
- 会計年度任用職員から正職員になるための実践対策(まとめ)
志望動機の書き方で合否が変わる理由
志望動機は、正職員採用試験の中でも合否に大きく関わる重要なポイントです。特に、会計年度任用職員として働いた経験がある人は、その経験をどう伝えるかで面接官の印象が大きく変わります。
まず大切なのは「なぜ正職員を目指すのか」をはっきりさせることです。単に「安定しているから」ではなく、仕事を通してどんな役割を果たしたいのかを言葉にする必要があります。たとえば、「住民の声を形にする仕事にもっと関わりたい」というように、自分の思いや目的を具体的に表すと効果的です。
次に、「これまでどんな課題を見つけ、どう動いたか」を伝えると説得力が増します。以下のような例がよく使われます。
- 窓口業務の申請手続きを改善し、待ち時間を15分短くした
- 説明資料を見直して、高齢者からの質問を3割減らせた
このように数字や成果を入れると、面接官がイメージしやすくなります。
最後に注意したいのは、自己中心的な動機を書かないことです。「正職員の方が給料がいいから」などは、マイナス印象になりやすいため避けたほうがよいでしょう。
志望動機は「やりたいこと+できること+その根拠(実績)」で組み立てると、あなたの強みを伝えやすくなります。
面接で聞かれる質問と回答例

会計年度任用職員から正職員を目指す面接では、一般的な質問だけでなく、「任用期間中の経験」を深く聞かれることが多いです。面接官は、その経験が正職員として役立つかどうかを見ています。
よくある質問と、その考え方は次のとおりです。
質問例 | 回答のポイント |
---|---|
任用期間中の成功体験は? | 数字で成果を伝える(例:処理時間を20%短縮) |
失敗した経験と学びは? | ミス後の行動を重視(例:マニュアルを作って全員で共有した) |
正職員としてやりたい業務は? | 現在の業務からつながるものを具体的に話す(例:防災マップの作成をリードしたい) |
さらに、面接では「正職員との違いをどう見ているか」もよく聞かれます。ここでは、「責任の重さ」「業務範囲の広さ」「長期的な視点」などを自分なりに説明できるとよい印象になります。
また、「あなたがいなくなったら職場はどう変わると思いますか?」といった意外な質問も出ることがあります。このときは、自分が周囲にどんな影響を与えていたかを具体的に話すようにしましょう。
面接では、過去の経験を未来のビジョンにつなげて語ることが重要です。話す内容をメモにまとめ、繰り返し声に出して練習することで、本番で落ち着いて話せるようになります。
看護師が会計年度任用職員から正職員になる方法

行政で働く看護師になるには、病院とは違うルートがあります。会計年度任用職員として自治体に入ったあと、正職員へ転換する道を選ぶ人も増えています。
このルートにはいくつかのパターンがあります。
- まずは会計年度任用職員として働き、経験を積む
- 一定期間の勤務後、正職員試験を受ける(自治体によっては試験免除や簡略化あり)
- 面接で、地域での健康づくりや保健活動への意欲をアピールする
特に長崎市など一部自治体では、35歳以上でも受験できる特別枠が設けられており、チャンスが広がっています。
試験内容は、次のようなものが多いです。
- 一般教養(中学〜高校レベルの国語・数学など)
- 専門問題(保健師や看護師としての知識)
- 面接(地域の課題への理解、行政でやりたいことなど)
行政保健師になると、夜勤は基本的にありません。日中勤務が中心なので、子育て中の人にも働きやすい環境といえます。
ただし、病院と違ってデスクワークが多く、住民とのやりとりや事務処理も必要です。最初は慣れないかもしれませんが、地域に関わるやりがいのある仕事です。
今後、行政で働きたい看護師の方は、まず任用職員としてスタートするのが一つの近道になります。
正職員登用を勝ち取る人の特徴とは?

正職員になれた人には、いくつかの共通した行動パターンがあります。ただ日々の仕事をこなすだけでなく、自分の強みを活かしながら周りと協力し、前向きに仕事に向き合っているのが特徴です。
以下のような行動をしている人が、登用される可能性が高いと言えます。
1.成果を見える形で残す
- 「書類管理をデジタル化して作業時間を半分に短縮」
- 「窓口での説明資料を作り、問い合わせ件数が30%減少」など
努力だけでなく、数字で説明できる実績があると強く評価されます。
2.周囲との連携を大事にする
- 上司や同僚にこまめに報告や相談をする
- 他の部署とも連携し、全体の流れを意識して動く
このような人は信頼されやすく、推薦を受けるきっかけにもなります。
3.成長意欲がある
- 自分で研修に参加したり、資格をとったりしてスキルを高めている
- 業務外でも「もっと良くするには」と考え、改善案を出している
- 失敗をふり返り、改善策を自分で考える
- 正職員として働くことへの明確なイメージを持っている
単に「登用されたい」という気持ちだけでなく、「どう貢献したいか」を伝える力も必要です。こうした日々の積み重ねが、チャンスをつかむカギになります。
会計年度任用職員から正職員になるための実践対策(まとめ)
記事のポイントをまとめます。
- 会計年度任用職員でも正規公務員になる道はある
- 採用試験を受けることで正職員になれる
- 一部自治体では特別選考枠が用意されている
- 任用職員の経験は面接や論文試験で有利に働く
- 面接では実務経験を数字や成果でアピールできる
- 正職員は雇用が安定しており長く働ける
- 任用職員は1年ごとの契約更新で不安定な面がある
- 給与・賞与・手当は正職員の方が高く安定している
- 会計年度任用職員でも年休が引き継がれる場合がある
- 年休の取り扱いは自治体ごとに違うため要確認
- 志望動機は経験・実績をもとに具体的に書くと良い
- 面接では過去の行動と将来の目標をつなげて話す
- 看護師も任用職員から行政職へ転換できる
- 行政保健師は夜勤がなく働きやすい職種といえる
- 登用される人は成果を見える形で残している
