今の収入に少し上乗せできたら助かる方が多いのではないでしょうか。将来に備えて、今のうちに別の仕事も経験してみたいと感じる方もいるでしょう。会計年度任用職員として働きながら副業を考えるのは、ごく自然な思いです。
その一方で、公務員という立場を考えると、副業しても大丈夫なのか、職場への届出は必要なのか、知らずにルールを破らないかと不安になりますよね。「職場に聞いたら変に思われるのでは」「今の仕事に影響したら困る」と、相談そのものをためらう方も多いはずです。
調べても、パートタイムなら可能という説明と、公務員は許可が必要という説明が並び、かえって分かりにくく感じるかもしれません。
会計年度任用職員が副業を始められるかどうかは、全員一律では決まりません。最初に確認したいのは、自分がパートタイムかフルタイムか、勤務先の自治体がどのような兼業規程を設けているか、予定する副業が雇用・業務委託・個人事業のどれに当たるかです。
パートタイム会計年度任用職員は、地方公務員法第38条の営利企業への従事等の制限について、フルタイム会計年度任用職員とは異なる扱いになります。
ただし、パートタイムなら無条件で自由という意味ではありません。信用失墜行為の禁止、守秘義務、職務専念義務などの服務規律は適用され、自治体独自の届出制度や勤務時間基準が設けられている場合もあります。
この記事では、2026年6月時点の法令・公的資料を基に、「何から確認すればよいのか」を順番に整理します。
難しい条文を覚える必要はありません。自分の任用区分と勤務先のルールを確認し、必要に応じて人事・服務担当へ相談すると、不安を減らしながら進められます。
会計年度任用職員の副業は任用区分と勤務先規程で決まる

まず知っておきたいのは、会計年度任用職員の副業は一律に禁止されているわけではない、という点です。ただし、「禁止ではないなら、すぐに始めてもよい」とも限りません。
最初に、自分がどこに当てはまるかを大まかに確認してみましょう。
| 区分・副業形態 | 副業の考え方 | 最初に確認する項目 |
|---|---|---|
| パートタイム | 一律禁止ではないが、自治体によって届出が必要 | 兼業届、勤務時間、服務規程 |
| フルタイム | 任命権者の許可が必要になる可能性が高い | 地方公務員法第38条、勤務先の許可基準 |
この表はあくまで入口です。同じパートタイムでも自治体によって手続きが異なるため、最後は勤務先の規程で確認します。
地方公務員法第22条の2第1項では、会計年度任用職員を勤務時間によって区分しています。第1号がパートタイム、第2号がフルタイムです。
地方公務員法第38条は、職員が営利企業の役員になったり、自ら営利企業を営んだり、報酬を得て事業・事務に従事したりする場合の制限を定めています。
同条の適用関係は任用区分で異なるため、まず勤務条件通知書や採用通知書で自分の区分を確認しましょう。
少しややこしいのですが、地方公務員法の条文を読むだけでは、実際に必要な手続きまでは分かりません。自治体によっては、パートタイム会計年度任用職員にも兼業届の提出や勤務時間の基準を設けています。
採用時の書類や職員向けポータル、服務規程、届出様式まで確認すると、自分が次に何をすればよいのかが分かるはずです。
パートタイムとフルタイムでは確認すべき手続きが違う

パートタイムでも自治体の届出制度を確認する
パートタイム会計年度任用職員は、地方公務員法第38条の扱いがフルタイムとは異なります。ここだけを見ると「パートタイムなら自由に副業できる」と思いやすいのですが、服務上のルールまでなくなるわけではありません。
少し面倒に感じても、最初に確認しておけば、後から「届出が必要だった」と慌てずに済みます。
多摩市は会計年度任用職員について、信用失墜行為の禁止、守秘義務、職務専念義務などが適用されると案内しています。
同市では、他の仕事との兼業は届出により可能とされ、勤務への支障や公序良俗への適合が確認事項です。週の総勤務時間については、残業を含めて40時間を超えない基準になっています。
広陵町の規程では、パートタイム会計年度任用職員が兼業を始める前に任命権者へ届け出る仕組みです。町での勤務と兼業時間が重ならない、1日の合計が7時間45分以内、週の合計が38時間45分以内、週に1日以上は双方の仕事をしない日を設ける、といった要件があります。
多摩市と広陵町だけを比べても時間基準は同じではありません。ネット上で見かけた「週40時間まで」という数字だけで決めず、自分の勤務先ではどの基準が使われているのかを確かめるほうが安心です。
フルタイムは任命権者の許可が必要になる可能性が高い
フルタイム会計年度任用職員は、地方公務員法第38条の営利企業への従事等の制限を踏まえた確認が必要です。予定する活動が役員就任、自営、報酬を得る事業・事務への従事に当たる場合、任命権者の許可が論点になります。
許可基準や申請様式は勤務先によって異なります。「少額だから副業にはならないだろう」「休日だけなら大丈夫だろう」と判断したくなる気持ちは自然ですが、金額や曜日だけでは決まりません。
活動内容、契約形態、予定時間、報酬、本業との利害関係をメモにまとめてから担当部署へ相談すると、話が進みやすくなります。
なお、単発の謝礼、資産運用、不用品の売却、継続的な事業活動では扱いが異なる可能性があります。名称ではなく、実態を伝えて確認する姿勢が安全です。
副業を始める前に確認する3つの資料

1. 勤務条件通知書・採用通知書
まずは、自分の任用区分、週の勤務時間、勤務日、任用期間を確認してみましょう。「非常勤だったはず」としか覚えていなくても珍しくありません。勤務条件通知書を開き、パートタイムかフルタイムかを確かめるところから始めれば十分です。
勤務条件通知書には、勤務時間や服務に関する参照先が記載されている場合があります。書類が見つからなければ、人事担当へ再確認しましょう。
2. 服務規程・兼業規程
次に、勤務先の規程で次の項目を探します。
- 兼業が許可制か届出制か
- 対象となる活動や報酬の範囲
- 勤務時間・休息日の基準
- 利益相反や職務上の利害関係に関する制限
- 信用を損なう業務、守秘義務違反、勤務への支障に関する基準
- 内容変更時や副業終了時の報告
自治体の公式サイトを探しても、規程が見つからない場合があります。庁内規程や職員向け手引きだけに掲載されているケースもあるため、「検索して出てこないから届出は不要」とは判断せず、担当者に尋ねてみましょう。
3. 届出書・許可申請書
様式がある場合は、記入項目を先に確認します。一般に、副業先、業務内容、契約形態、勤務日・時間、報酬見込み、本業との関係などが確認対象になり得ます。
書類名が「届出書」だからといって、提出したその日から始めてよいとは限りません。反対に、「許可申請書」という名前でなくても、事前相談や所属長の確認が必要な職場もあります。「いつから始めてよいですか」と提出時に一言確認しておけば、後から迷わずに済むでしょう。
副業の形態によって労働時間の扱いが変わる

他社に雇用される副業
アルバイトやパートのように、別の使用者と労働契約を結ぶ場合は、労働時間の通算が問題になります。
厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン わかりやすい解説」は、労働者が雇用される形で副業を行う場合、原則として本業と副業先の労働時間を通算して管理する必要があると説明しています。
ここで、「本業が週30時間なら、副業は週10時間まで」と考えたくなるかもしれません。しかし、実際はそれほど単純ではありません。
法律上の労働時間管理と、自治体が服務上設けている兼業時間の基準は別々に確認する必要があります。勤務先が週38時間45分や週40時間などの独自基準を置いている場合は、そちらも確認しましょう。
詳しい考え方は、会計年度任用職員の副業は何時間まで?上限ルールの完全ガイドで確認してください。
業務委託・請負による副業
Webライティング、デザイン、動画編集、講師、コンサルティングなどでは、業務委託契約を結ぶ場合があります。
契約書に「業務委託」と書かれていても、実際には相手から勤務場所・時間・方法を細かく指示され、労働者と同じように働いているなら、契約名だけで労働法上の扱いは決まりません。
また、労働時間の通算対象にならない形態であっても、自治体の兼業規程が定める合計従事時間や健康管理の基準から外れるとは限りません。契約形態と実際の働き方の両方を担当部署へ伝えましょう。
ブログ・物販などの個人事業
ブログ運営、ハンドメイド販売、継続的な物販など、自ら収益活動を行う場合は「自営」に当たるかが論点になります。広告収入がまだ少ない段階でも、営利目的、継続性、事業性、作業内容を含めて判断される可能性があります。
「まだ1円も稼いでいないのだから、収益が出てから相談すればよい」と考える方もいるでしょう。ただ、ブログでは広告掲載前でも、営利目的で継続的に運営する段階を確認対象とする勤務先があり得ます。
後から慌てないためにも、収益化を考え始めた時点で相談し、回答をメモに残しておくと安心です。個人事業の詳細は、今後公開予定の「会計年度任用職員のブログ副業の始め方」で解説します。
会計年度任用職員が副業を始める5つの手順

手順1:自分の任用区分を確認する
勤務条件通知書を見て、パートタイムかフルタイムか、週何時間勤務かを把握します。年度途中で勤務条件が変わった場合は、最新の通知書を使ってください。
手順2:予定する副業の情報を整理する
副業先の名称、仕事内容、契約形態、予定時間、報酬、開始日、本業との利害関係を書き出します。ブログなど開始時点で収益が確定していない活動は、収益方法と作業内容を説明できる状態にしておきましょう。
手順3:規程と様式を確認する
職員向けポータル、服務規程、兼業規程、届出・許可様式を探します。見つからないときは、一人で答えを出そうとしなくて構いません。
所属長や人事・服務担当へ「副業を検討しており、確認すべき規程を教えてほしい」と尋ねれば、必要な窓口につないでもらいやすくなります。
手順4:必要な届出・許可を済ませる
事前手続きが定められているなら、副業開始前に提出します。口頭相談だけでよいのか、書面が必要かも確認してください。仕事内容や勤務時間が変わったときの変更届も忘れないようにします。
手順5:本業・健康・情報管理を定期的に見直す
開始後は、勤務時間、睡眠、体調、本業への影響を記録します。職場のパソコン、メール、電話、勤務時間、内部資料を副業に使ってはいけません。住民情報、未公表施策、取引先情報など、本業で知った非公開情報を利用しない姿勢も欠かせません。
副業で避けたい4つの行為

本業と副業の時間を重ねる
勤務時間中に副業作業を進める、職場のパソコン・メール・電話・内部資料を副業に使う、本業のシフトと副業先の勤務時間を重ねる、といった行為は避けましょう。職務専念義務や勤務実績、情報管理の問題につながります。
職務上の立場や情報を利用する
許認可、契約、補助金、税、福祉などの業務で関係する相手から仕事を受けると、利益相反や公正性への疑念が生じます。内部情報を記事や教材へ流用する行為も認められません。
本業に支障が出る働き方を続ける
寝不足、遅刻、欠勤、集中力低下が続けば、勤務への支障と判断される可能性があります。規程上の上限内でも、健康状態に問題があれば作業量を減らしてください。
勤務先に隠す前提で対策する
「職場に分からなければ問題ないのでは」と思うほど、不安が大きくなる場面もあるかもしれません。しかし、住民税の納付方法や匿名アカウントだけを頼りに副業を隠すのは、安全な進め方とはいえません。
税務上の手続きと、勤務先への服務上の届出は別の話です。隠し方を探すより、必要な手続きを一つずつ確認するほうが、安心して長く続けられます。
勤務先に分かる経路や適切な対応は、会計年度任用職員の副業はバレる?リスクと対策で詳しく解説しています。
副業収入の税金は「20万円」だけで判断しない

税金について調べると、「副業は20万円以下なら申告不要」という説明をよく見かけます。覚えやすい数字ですが、これだけで自分の申告が不要だと決めるのは早計です。
国税庁の「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」では、給与を1か所から受け、その全部が源泉徴収の対象となる人について、給与・退職所得以外の所得金額の合計が20万円を超える場合を申告が必要な例として挙げています。
給与を2か所以上から受ける人には、年末調整されなかった給与収入と給与・退職所得以外の所得を組み合わせた別条件です。
つまり、20万円は「売上」ではなく、条件によっては経費差引後の所得を指します。副業が別の勤務先から受ける給与なのか、ブログや業務委託による所得なのかによっても、確認方法は同じではありません。
医療費控除などのため確定申告をする場合の扱い、住民税の申告も別に確認が必要です。
最初から完璧な税務知識を身につける必要はありません。まずは領収書、請求書、報酬明細、契約書、入出金記録を残しておきましょう。判断に迷ったら、税務署や税理士、住んでいる自治体の税担当へ確認できます。
会計年度任用職員に向く副業は条件から選ぶ

副業を探していると、どうしても「月にいくら稼げるか」が気になります。ただ、会計年度任用職員の場合は、無理なく続けられるか、本業との関係に問題がないかという視点も同じくらい大切です。次の条件を比べながら、自分に合うものを探してみてください。
- 本業との利害関係がないか
- 勤務時間や場所を調整しやすいか
- 守秘義務違反につながらないか
- 初期費用や損失のリスクが大きくないか
- 長時間労働にならないか
- 勤務先の届出・許可基準を満たせるか
アルバイトは収入を得るまでが比較的早い一方、シフトと労働時間の調整が必要です。業務委託は時間を選びやすい反面、契約管理や税務処理を自分で行います。ブログはすぐに収益が出るとは限りませんが、文章や専門知識を蓄積できる選択肢です。
具体的な比較は、会計年度任用職員におすすめの副業|始め方と注意点を参考にしてください。どの副業を選ぶ場合も、申込みや契約より先に勤務先ルールを確認する順序は同じです。
よくある質問

パートタイムなら副業の届出は不要ですか?
不要とは限りません。パートタイムは地方公務員法第38条の扱いがフルタイムと異なりますが、自治体独自の兼業届や勤務時間基準が設けられる場合があります。「パートだから届出不要」と決めつけず、勤務条件通知書と勤務先規程を確認してみてください。
副業は週40時間までですか?
全国一律の結論ではありません。他社に雇用される副業では労働時間の通算が問題になりますが、法定労働時間の管理と自治体の服務上の基準は分けて考える必要があります。自治体によって週38時間45分、週40時間など異なる例があります。
ブログは収益が出る前なら届出不要ですか?
勤務先の基準によります。広告収入の有無だけでなく、営利目的、継続性、作業内容、自営に当たるかが確認対象になる場合があります。収益化の準備を始める前に相談するのが安全です。
副業所得が20万円以下なら何もしなくてよいですか?
一律にはいえません。所得税の確定申告が不要となる条件に該当しても、住民税の申告が必要な場合があります。また、副業が給与か給与以外の所得か、ほかの理由で確定申告をするかによって扱いが変わります。
誰に相談すればよいですか?
まず勤務先の人事・服務・給与担当へ確認します。税は税務署や自治体の税担当、契約や労働条件は労働局など、論点に応じて相談先を分けてください。
【会計年度任用職員】副業の申込みより先に勤務先ルールを確認する(まとめ)

会計年度任用職員の副業は、任用区分、勤務先規程、副業の契約形態によって必要な手続きが変わります。パートタイムだから自由、週40時間以内なら問題なし、所得20万円以下なら何も不要、といった単純な判断は避けましょう。
始める前の確認事項は次の5つです。
- 自分がパートタイムかフルタイムか
- 兼業が許可制か届出制か
- 副業が雇用・業務委託・自営のどれか
- 勤務時間、利益相反、守秘義務の基準を満たすか
- 税務・住民税の手続きが必要か
副業を考えるのは、今の暮らしや将来を少しでも良くしたいという前向きな一歩です。だからこそ、焦って始めて後から不安になるより、最初にルールを確かめておくほうが気持ちよく続けられます。
まずは勤務条件通知書と服務規程を手元に置き、予定している副業の内容を簡単に書き出してみてください。分からない部分を人事・服務担当へ確認すれば、必要な手続きを踏みながら、自分に合った働き方を落ち着いて検討できるはずです。

