会計年度任用職員は有給休暇を繰り越しできる?|上限やルールを解説

会計年度任用職員は有給休暇を繰り越しできる?|上限やルールを解説

会計年度任用職員は有給を繰り越せるのか?という疑問や、そもそも会計年度任用職員は有給休暇が何日もらえるのか、といった点は多くの方が気になるところです。

実際、正規職員に比べて会計年度任用職員は有給休暇が少ないと感じる場面もあるかもしれません。また、体調不良などで会計年度任用職員が欠勤が多くなった場合のリスクや、会計年度任用職員の年休が年度途中の採用でも取得できるのかなど、具体的な運用に関する不安もあるかと思います。

この記事では、会計年度任用職員の有給休暇の繰り越しに関するルールや条件、注意点を網羅的に解説します。

この記事でわかること
  • 有給休暇を繰り越せる条件と上限日数
  • 勤務形態別の付与日数と計算方法
  • 繰り越しに関連する労働基準法との関係
  • 欠勤を避け、有給を賢く使うための注意点
目次

【会計年度任用職員】有給休暇の繰り越しと基本

【会計年度任用職員】有給休暇の繰り越しと基本
  • 会計年度任用職員は有給を繰り越せますか?
  • 有給休暇は何日もらえる?付与日数のルール
  • 有給休暇と労働基準法・自治体内規との関係
  • 有給休暇が少ない理由と勤務日数による差異

会計年度任用職員は有給を繰り越せますか?

会計年度任用職員も、年次有給休暇(年休)を翌年度に繰り越すことが可能です。これは、労働基準法第115条で年休の請求権の時効が2年と定められているためです。したがって、その年度内に消化しきれなかった年休は、自動的に消滅するのではなく、翌年度に持ち越されます。

この繰り越しにあたって、職員側で特別な申請手続きを行う必要は基本的にありません。未消化の年休は、使用者である自治体によって管理され、自動的に次年度の残日数に加算される仕組みです。

ただし、年休の繰り越しが認められるのは「継続勤務」している場合に限られます。例えば、年度末で一度任用が終了し、短い空白期間を挟んで次年度も同じ自治体で再度任用された場合などは、実質的に勤務が継続していると判断される場合が多いです。

しかし、1ヶ月以上の空白期間がある場合や、他の自治体へ移った場合は継続勤務と見なされず、年休が引き継がれないことがあるため注意が必要です。

有給休暇は何日もらえる?付与日数のルール

有給休暇は何日もらえる?付与日数のルール

会計年度任用職員に付与される有給休暇の日数は、週の勤務日数や継続して勤務した期間によって変動します。これは、各自治体が定める条例や規則、そして労働基準法第39条の規定に基づいています。

例えば、週5日勤務のフルタイム職員の場合、採用から6ヶ月継続勤務すると基本的に10日が付与されます。その後は継続勤務年数に応じて日数が段階的に増えていき、6年6ヶ月以上勤務すると最大の20日が付与されることになります。

一方で、週の勤務日数が少ないパートタイム職員の場合は、その日数に比例して付与日数が少なくなります。

継続勤務年数週5日勤務週4日勤務週3日勤務週2日勤務
0.5年(初年度)10日7日5日3日
1.5年(2年目)11日8日6日4日
2.5年(3年目)12日9日6日4日
6.5年以上20日15日11日7日

※上記は一例です。詳細は所属自治体の規定をご確認ください。

自身の勤務形態と勤続年数を確認し、正しい付与日数を把握しておくことが大切です。

有給休暇と労働基準法・自治体内規との関係

会計年度任用職員の有給休暇制度は、各自治体が定める内規(条例や規則)によって運用されています。地方公務員法に基づく職員の勤務条件は、労働基準法の適用対象となる職種を除き、基本的に自治体の条例等で定められますが、労働基準法が適用される職務に従事する場合、内規の内容は同法が定める最低基準を下回ることはできません。

労働基準法では、適用対象となる労働者について、採用から6ヶ月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した場合、最低10日の有給休暇付与を義務付けています(週5日勤務の場合)。労働基準法の適用対象となる職員の場合、自治体の内規がこの基準を満たしていなければ、労働基準法の規定が優先して適用されます。

自治体が法律を上回る有利な条件を設けることは可能です。実際、多くの自治体では法定基準を満たした上で、時間単位取得の許可や独自の特別休暇制度の導入など、職員の働きやすさを考慮した制度設計が行われています。

有給休暇が少ない理由と勤務日数による差異

有給休暇が少ない理由と勤務日数による差異

会計年度任用職員の有給休暇が、正規職員と比較して少ないと感じられることがあります。この最も大きな理由は、勤務日数が少ないパートタイム職員の場合、法律に基づいて有給休暇の日数が比例して少なくなる「比例付与」という仕組みが適用されるためです。

例えば、週5日勤務であれば初年度に10日付与されますが、週3日勤務であれば5日、週2日勤務なら3日と、勤務実態に応じて日数が調整されます。これは、勤務日数が異なる職員間の公平性を保つための措置と考えられます。

また、有給休暇とは別に、体調不良の際に取得する「病気休暇」の制度も影響しています。会計年度任用職員の場合、この病気休暇が一部または全部無給であることが少なくありません。

そのため、病気で休む際に限りある有給休暇を使わなければならず、結果的に自由に使える有給休暇が少なくなってしまう、という状況が起こり得ます。これらの制度上の違いが、有給休暇が少ないという実感につながっていると考えられます。

【会計年度任用職員】有給休暇の繰り越しとその注意点

【会計年度任用職員】有給休暇の繰り越しとその注意点
  • 週4日勤務での年休計算と比例付与の具体例
  • 年休は年度途中でも取れる?採用時期と権利
  • 欠勤が多い時の注意点と有給の賢い活用法
  • 会計年度任用職員は有給休暇を繰り越しできる?(まとめ)

週4日勤務での年休計算と比例付与の具体例

週4日勤務の会計年度任用職員の有給休暇は、多くの場合「比例付与」の対象となります。ただし、注意すべき点として、週の所定労働時間が30時間以上あるかどうかで扱いが変わります。

週4日かつ週30時間未満の勤務の場合

週の労働時間が30時間未満の場合、勤務日数に応じた比例付与が適用されます。初年度(6ヶ月継続勤務後)は7日が付与され、その後は勤続年数に応じて下表のように日数が増加します。

継続勤務年数週4日勤務での付与日数
0.5年(初年度)7日
1.5年(2年目)8日
2.5年(3年目)9日
3.5年(4年目)10日
4.5年(5年目)12日
5.5年(6年目)13日
6.5年以上15日

週4日でも週30時間以上の勤務の場合

もし週4日勤務であっても、1日の労働時間が長く、週の合計労働時間が30時間以上になる場合は、パートタイム職員とは見なされません。

このケースでは、週5日勤務のフルタイム職員と同じ日数の有給休暇(初年度10日、最大20日)が付与されることになります。自身の労働契約がどちらに該当するかを確認しておくことが肝心です。

年休は年度途中でも取れる?採用時期と権利

年休は年度途中でも取れる?採用時期と権利

年度の途中(例えば10月1日など)から会計年度任用職員として採用された場合でも、有給休暇の取得権利は発生します。そして、付与された日からすぐに取得することが可能です。「採用から6ヶ月経たないと使えない」というルールはなく、半年待つ必要はありません。

年度途中で採用された場合の付与日数は、その年度の末日(3月31日)までの任用期間に応じて、月割りで計算されるのが一般的です。例えば、任用期間が6ヶ月であれば、週5日勤務の場合で10日、あるいは自治体の規則に応じて按分された日数が、採用と同時に付与されます。

このため、年度途中で採用された職員も、付与された日数の範囲内であれば、業務の状況を見ながら自身の都合に合わせて有給休暇を申請できます。

もちろん、業務の正常な運営に支障が出る場合には、使用者である自治体から取得時季の変更を求められる可能性はありますが、これは例外的なケースです。

欠勤が多い時の注意点と有給の賢い活用法

会計年度任用職員が欠勤を多くすると、いくつかの不利益が生じる可能性があります。まず、給与は「ノーワーク・ノーペイ」の原則に基づき、休んだ日数分だけ減額されます。また、期末手当(ボーナス)の査定においても、欠勤日数が多ければ支給額が減る一因となり得ます。

さらに、理由の不明確な欠勤や無断欠勤が続くと、勤務態度が問題視され、次年度の契約更新(再度の任用)に不利に働くリスクが高まります。

このようなリスクを避けるためにも、有給休暇の計画的な活用が鍵となります。体調不良や避けられない私用がある場合は、欠勤扱いとせず、必ず有給休暇を取得するよう手続きを取りましょう。

前述の通り、病気休暇が無給である場合も多いため、いざという時のために有給休暇を安易に消化せず、計画的に残しておくという視点も大切になります。日頃から自身の残日数を確認し、計画的に取得・活用することが、安定した勤務を続ける上で不可欠です。

会計年度任用職員は有給休暇を繰り越しできる?(まとめ)

この記事で解説した、会計年度任用職員の有給休暇の繰り越しに関する重要なポイントを以下にまとめます。

  • 会計年度任用職員も有給休暇の繰り越しは可能
  • 繰り越せる上限日数は最大20日
  • 有給休暇の権利の時効は2年間
  • 繰り越しに特別な申請手続きは原則不要
  • 繰り越しの条件として「継続勤務」が認められる必要がある
  • 1ヶ月以上の空白期間があると継続勤務と見なされない場合がある
  • 付与日数は週の勤務日数と勤続年数によって決まる
  • 週5日勤務なら初年度10日、パートタイムなら日数に比例して減少
  • 繰り越した古い有給休暇から消化するのが一般的
  • 労働基準法が定める最低基準を自治体の内規が下回ることはない
  • 週4日勤務でも週30時間以上働いていればフルタイム扱いとなる
  • 年度途中の採用でも採用日に有給休暇が付与されすぐに使用できる
  • 欠勤は給与減額や契約更新に影響するため有給休暇を活用すべき
  • 病気休暇が無給の場合もあるため有給の計画的利用が大切
  • 具体的なルールは必ず所属する自治体の規定を確認する
目次