会計年度任用職員として働く中で、妊娠が判明した際、多くの方がキャリアに関する不安を抱えることでしょう。会計年度任用職員が妊娠したらまず何をすべきか、育児休業の条件はどのように定められているのか、また、産休・育休中の収入面、特に育児休業給付金や育休中のボーナスの扱いがどうなるのかは、生活設計において非常に気になる点です。
さらに、育休取得後の契約更新や、万が一の育休明けの雇い止めといったリスクに対して、どのように備えればよいのか、具体的な知識が求められます。
この記事では、そのような悩みに寄り添い、育休の取得から職場復帰、そして再度の任用を目指すまでの全プロセスを、網羅的にかつ分かりやすく解説します。
- 会計年度任用職員の育休取得に関する具体的な条件や手順がわかる
- 産休・育休中に受け取れる給付金や手当、ボーナスの実態がわかる
- 育休を理由とした不当な雇い止めを防ぐための法的根拠と対策がわかる
- 契約が更新されなかった場合の救済策や再度の任用を目指す方法がわかる
会計年度任用職員が育児休業を取得し再度の任用を目指すまで

- 妊娠したら取るべき行動と届出全手順
- 育児休業の条件と取得手順を具体例付きで解説
- 育児休業給付金の全額ガイドで支給額を確認
- 育休中のボーナス支給実態と減額パターン
- 育休延長時の更新申出の留意点と調整術
妊娠したら取るべき行動と届出の手順
妊娠が判明したら、できるだけ早めに住民登録地の自治体窓口で妊娠届出書(医療機関発行)を提出し、本人確認書類を持参して母子健康手帳の交付を受けてください。
なお、マイナンバーの提示を求められる場合もあります。また、マイナポータルでオンライン申請した場合でも、母子健康手帳自体は窓口での受け取りが必要です。その後、体調や職場の状況を考慮しつつ、直属の上司へ報告するのが一般的な流れとなります。
報告後は、人事担当者や総務課など、所属する自治体が指定する窓口へ正式に届け出る必要があります。このとき、産前産後休業(産前6週間・産後8週間)の申請をはじめ、母子保健健診のための休暇や、つわりがひどい場合の妊娠症状に対応した休暇など、様々な制度を利用するための手続きを進めていきます。
なお、妊娠症状に対応した休暇等の制度名や運用は自治体によって異なるため、利用を希望する場合は必ず所属自治体でご確認ください。
提出が必要な書類は多岐にわたるため、事前にリストアップしておくとスムーズです。主に「産前産後休業届」や、必要に応じて医師の診断書、母子健康手帳の写しなどが求められます。
また、妊娠届出時には本人確認書類やマイナンバーの提出を求められる場合があります。手続きを円滑に進めるためには、早めに担当部署へ相談し、必要書類や提出期限を正確に確認しておくことが鍵となります。
育児休業の条件と取得手順を解説
会計年度任用職員が育児休業を取得するためには、いくつかの条件を満たす必要があります。まず、大前提として雇用保険に加入していることが求められます。これは、週の所定労働時間が20時間以上あり、31日以上の雇用見込みがあれば対象となるものです。
次に、育児休業の申出時点で、子どもが1歳6か月に達する日までに労働契約が満了することが明らかでない、という条件があります。つまり、契約の継続や更新の見込みがあることが、育休取得の要件となるのです。例えば、4月1日から翌年3月31日までの契約期間中に子どもが生まれ、契約更新の見込みがあれば育休を取得できます。
なお、育児休業の取得期間は原則として子どもが1歳に達する日までですが、保育所に入れない等の特例がある場合は、1歳6か月または2歳まで延長可能です。
取得手順としては、まず育児休業を取得したい旨を職場に申し出ます。その後、原則として休業開始予定日の1か月前までに「育児休業申請書」などの正式な申請書類を提出します。
この書類には、休業期間や子の氏名・生年月日などを記入します。書類提出後、任命権者から承認通知書が交付されることで、正式に育休が開始される流れです。
育児休業給付金の支給額を確認

育児休業中の生活を支える重要な制度が、雇用保険から支給される育児休業給付金です。この給付金は、原則として育児休業開始前の2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上、または就業時間が80時間以上の月が12か月以上ある場合に受給資格が得られます。
支給額は、休業開始時の賃金を基に計算されます。具体的には、休業開始から180日間は「休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%」、181日目以降は「50%」が支給される仕組みです。ただし、支給額には上限が設けられており、毎年8月に見直されます。
また、2025年4月からは新たに「出生後休業支援給付金」が導入され、共働き夫婦がともに育児休業を取得した場合など一定の条件を満たすと、最大28日間は給付率が80%となる制度も開始されています。
申請手続きは、通常、事業主(自治体)を通じて行われます。初回申請時には「育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書」に、母子健康手帳の写しなどを添付してハローワークへ提出します。その後は、原則2か月ごとに支給申請を行うことで、継続して給付金を受け取ることができます。
育休中のボーナス支給は減額される?
会計年度任用職員の期末手当(ボーナス)は、育休中であっても支給される可能性があります。ただし、支給されるかどうか、また、その金額は自治体の規定や個人の勤務状況によって大きく異なるのが実情です。
多くの自治体では、期末手当の算定対象期間中に勤務実績があれば、支給日に育休中であっても手当が支給されます。例えば、夏の期末手当の算定期間が12月から5月である場合、その期間中に1日でも勤務していれば、在籍していると見なされ支給対象となる場合が多いです。
しかし、支給額は勤務日数に応じて減額されるのが一般的です。算定期間の全てを育児休業で休んだ場合は、勤務実績がないため期末手当は支給されないケースがほとんどです。
また、自治体によっては、会計年度任用職員には「勤勉手当」が支給されず「期末手当」のみという場合もありますので、ご自身の所属する自治体の給与条例や規則を事前に確認することが不可欠です。
育休延長時の更新と注意点

育児休業は、保育所に入れないなどの特定の理由がある場合、子どもが1歳6か月、さらには2歳になるまで延長が可能です。この延長を申請する際には、契約更新のタイミングと重なるため、特に慎重な調整が求められます。
延長の申出は、会社や自治体の定める期日までに(多くは2週間前まで)行うのが原則です。延長を希望する場合、まずはその意向を早めに人事担当者へ伝え、相談を開始することが大切になります。その上で、「育児休業承認請求書(延長)」といった様式の書類に、保育所の不承諾通知書や保育所等の利用申込書の写しなど、延長理由を証明する書類を添えて提出します。
最も重要な注意点は、育休を延長するためには、その延長期間中に任用期間が満了しない、つまり次年度の契約が更新されることが前提となる点です。
したがって、延長の申出と並行して、次年度の再任用の見込みについて人事担当者と密にコミュニケーションを取り、確認しておく必要があります。早めの相談と正確な情報共有が、円滑な手続きの鍵を握っています。
会計年度任用職員の育児休業と再度の任用に関するトラブル対策

- 再度の任用の回数ルールをわかりやすく整理
- 育休を理由とした雇い止めを防ぐ対策
- 更新されなかった時の救済策と不服申立て
- 不利益な扱いを受けた場合の相談窓口一覧
- 総まとめ|会計年度任用職員の育児休業と再度の任用の要点
再度の任用における回数制限
会計年度任用職員の再度の任用(更新)については、これまで多くの自治体で「原則2回まで(最長3年)」といった上限が設けられていました。しかし、近年、このルールは大きな転換期を迎えています。
国の通知により、この任用回数の上限は法律上撤廃されました。これにより、自治体の判断で、勤務成績が良好であるなどの条件を満たせば、上限なく再度の任用が可能となっています。多くの自治体で上限撤廃の動きが進んでいますが、全ての自治体で一律に適用されているわけではない点に注意が必要です。
自治体によっては、公平性の観点から引き続き独自の上限を設けていたり、専門性が高い職種に限定して長期任用を認めていたりする場合があります。したがって、長期間の勤務を希望する場合は、ご自身の所属する自治体の最新の条例や方針を、人事担当課などを通じて正確に確認することが不可欠です。
育休を理由とした雇い止めを防ぐ対策
育児休業の申し出や取得を理由に、契約を更新しない(雇い止め)といった不利益な取扱いをすることは、男女雇用機会均等法および育児・介護休業法によって明確に禁止されています。これは、会計年度任用職員にも適用される大切なルールです。
この法的根拠を正しく理解し、万が一、不利益な扱いを示唆された場合には、その旨を冷静に主張することが最初の対策となります。また、上司や人事担当者とのやり取りは、後々の証拠となる可能性があるため、メールや書面で記録を残しておくことをお勧めします。
さらに、契約更新の時期が近づいたら、育休取得中であっても、更新を希望する意思を明確に書面で伝えておくことが有効です。それでも雇い止めを通告された場合は、その理由を具体的に示すよう書面で求めましょう。理由が曖昧であったり、明らかに育休取得と関連がある場合は、不当な雇い止めである可能性が高いと考えられます。
更新されなかった時の救済策と不服申立て

適正な理由なく契約を更新されなかった(雇い止めされた)場合、諦める必要はありません。いくつかの救済策を検討できます。
まず考えられるのが、都道府県に設置されている「都道府県労働局」への相談です。都道府県労働局では、労働者と使用者との間のトラブルを解決するための「あっせん」という手続きを行っています。これは、公平な第三者であるあっせん員が間に入り、話し合いによる円満な解決を目指す制度です。あっせんの申請は労働者個人でも行うことができます。
もう一つの方法として、裁判所に訴訟を提起することも可能です。雇い止めが無効であることの確認や、それによって生じた損害の賠償を求めることができます。この場合は、労働問題に詳しい弁護士に相談し、法的な観点から最善の方法を検討していくことになります。
不利益な扱いを受けた場合の相談窓口一覧
育児休業に関するハラスメントや雇い止めなど、不利益な扱いを受けて悩んだ際には、一人で抱え込まずに外部の専門機関に相談することが大切です。以下に主な相談窓口をまとめました。
相談窓口名 | 特徴 |
---|---|
都道府県労働局 雇用環境・均等部(室) | 育休やマタハラに関する専門の相談窓口。法律に基づいた助言や、紛争解決のための行政指導・あっせん制度の案内が受けられる。無料で相談可能。 |
総合労働相談コーナー | 全国の労働局や労働基準監督署内に設置。解雇や雇い止めなど、あらゆる分野の労働問題についてワンストップで相談できる。予約不要で、電話または面談での相談が可能。 |
労働組合(ユニオン) | 職場に労働組合があれば、組合を通じて団体交渉を申し入れることができる。組合がない場合でも、一人から加入できる地域の労働組合(ユニオン)に相談する選択肢もある。 |
法テラス(日本司法支援センター) | 資力要件を満たす場合に、無料の法律相談や弁護士費用の立替え制度を利用できる。法的な解決(訴訟など)を視野に入れる場合に有効。 |
これらの窓口は、プライバシーを守りながら安心して相談できる体制を整えています。状況に応じて、適切な窓口を選んで活用してください。
会計年度任用職員の育児休業と再度の任用(まとめ)
記事のポイントをまとめます。
- 妊娠判明後は安定期に入ってから直属の上司に報告し、人事担当部署へ届け出る
- 産前産後休業や母子保健健診休暇など、利用できる制度を事前に確認する
- 育休取得の条件は雇用保険への加入と契約更新の見込みがあること
- 育休申請は原則として休業開始予定日の1か月前までに書類を提出する
- 育児休業給付金は休業前の賃金の67%(当初180日)または50%が支給される
- 育休中の期末手当(ボーナス)は算定期間中の勤務実績に応じて支給される可能性がある
- 算定期間の全てを育休で休んだ場合、期末手当は支給されないことが多い
- 育休延長は保育所に入れない等の理由があれば可能だが、次年度の契約更新が前提となる
- 再度の任用回数の上限は法律上撤廃されたが、運用は自治体により異なる
- 所属する自治体の最新の再任用ルールを必ず確認する
- 育休を理由とする雇い止めは法律で禁止されている
- 不利益な扱いを防ぐため、職場とのやり取りは記録に残す
- 雇い止めなど更新トラブルの際は、労働委員会や弁護士に相談する
- 労働局や法テラスなど、無料で相談できる公的な窓口を活用する
- 自身の権利を正しく理解し、早めに専門家へ相談することが解決の鍵となる
