会計年度任用職員として勤務する中で、「もし急に病気になったら、休暇はもらえるのだろうか」「休暇中の給料はどうなるのか」といった不安を感じたことはありませんか。
特に、会計年度任用職員の病気休暇が無給なのはなぜか、という疑問や、長期療養で90日を超える場合の扱いはどうなるのか、といった点は多くの方が気になるところです。
また、休暇の申請には診断書が必須なのか、もし無給になった場合に生活を支える傷病手当の制度は利用できるのかなど、知っておくべきことは多岐にわたります。これらの情報を知らないままだと、いざという時に適切な対応ができず、困ってしまうかもしれません。
この記事では、会計年度任用職員の病気休暇に関する日数の基本から、有給・無給の違い、給与への影響、申請に必要な手続きまで、あなたの疑問や不安を解消するために網羅的に解説します。
- 基本的な病気休暇の日数と、有給・無給のルール
- 休暇中の給与計算や、無給時に利用できる公的支援
- 休暇申請に必要な書類と、具体的な手続きの流れ
- 長期療養や復職時の注意点と、契約更新への影響
会計年度任用職員の病気休暇とその日数|基本知識

このセクションでは、会計年度任用職員の病気休暇に関する最も基本的なルールと、それが給与にどう影響するのかを解説します。
- 年間10日の有給病気休暇|基本知識と取得方法
- 病気休暇の日数は繰り越しできるか?
- 会計年度任用職員の病気休暇|有給と給料の関係
- 休暇取得時の給与計算と勤怠処理
- 傷病手当の申請法
年間10日の有給病気休暇|基本知識と取得方法
会計年度任用職員の働き方において、病気休暇の制度は安心して勤務を続けるための重要な基盤となります。
近年、非正規公務員の処遇改善の流れを受け、2025年4月以降、多くの自治体で会計年度任用職員を対象とした「年間10日の有給病気休暇」が導入されます。これまで無給が原則であったり、有給でも日数が非常に少なかったりした状況を改善するための大きな一歩と言えます。
この休暇を取得するには、一般的にいくつかの条件を満たす必要があります。例えば、「6か月以上の任期があること」や「週3日以上または年間121日以上勤務していること」などが多くの自治体で設けられています。
申請の基本的な流れは、まず体調不良を感じたら医療機関を受診し、速やかに上司へ休暇取得の意向を連絡します。その後、自治体の規定に応じた証明書類(領収書や診断書など)を提出し、承認を得るという手順になります。この制度は年度ごとにリセットされるため、計画的な利用が求められます。
病気休暇の日数は繰り越しできるか?
病気休暇の日数が年度末に残った場合、翌年度に持ち越せるのかは多くの方が気になる点です。
結論から言うと、会計年度任用職員の病気休暇は、原則として翌年度への繰り越しはできません。病気休暇は、地方公務員法上の「特別休暇」に位置づけられており、その性質上、その年度内で消化されることが前提となっています。つまり、年度の最終日である3月31日を過ぎると、未消化の日数は消滅してしまいます。
一方で、年次有給休暇(年休)は、法律で繰り越しが認められています。年休は労働基準法に基づく休暇であり、年度内に使い切れなかった日数分を、最大20日を限度として翌年度に持ち越すことが可能です。
同じ「休暇」という名前がついていても、病気休暇と年次有給休暇では制度の根拠やルールが全く異なるため、混同しないよう注意が必要です。
休暇の種類 | 繰り越しの可否 | 根拠・特徴 |
---|---|---|
病気休暇 | 原則、不可 | 特別休暇の一種。その年度限りで消滅する。 |
年次有給休暇 | 可能(最大20日) | 労働基準法に基づく休暇。取得理由を問わない。 |
会計年度任用職員の病気休暇|有給と給料の関係

病気で休む際に最も気になるのが、休暇中の給料がどうなるか、という点です。会計年度任用職員の病気休暇は、有給になるケースと無給になるケースがあります。
まず、前述の通り、2025年度から多くの自治体で導入された「年間10日の病気休暇」は、有給として扱われます。この期間内であれば、休んでも通常通り給料が支払われるため、安心して療養に専念できます。
また、勤務中や通勤中のケガが原因である「公務災害・通勤災害」と認定された場合も、期間の定めなく有給扱いとなるのが一般的です。
しかし、これらの条件に当てはまらない場合や、有給の10日間を使い切ってしまった後の休暇は、原則として無給となります。
もしもの場合に備え、自身の勤務先の自治体で有給病気休暇が何日付与されるのか、そしてそれを超えた場合はどうなるのかを事前に確認しておくことが大切です。
休暇取得時の給与計算と勤怠処理
休暇を取得した際の給与計算と勤怠の扱いは、その休暇が有給か無給かによって大きく異なります。
有給の病気休暇を取得した場合、勤怠上は「有給休暇」として処理され、給与も通常勤務時と同様に全額が支払われます。このため、給与明細上の変動は基本的にありません。
一方、無給の病気休暇を取得した場合は、勤怠表に「病気休暇(無給)」などと記録されます。そして、給与計算の際に、休んだ日数または時間分の報酬が差し引かれます。この減額方法は自治体によって異なり、「1日単位」で控除される場合もあれば、「1時間単位」で細かく計算される場合もあります。
また、社会保険料の扱いにも注意が必要です。有給休暇中はもちろん、無給の休暇中であっても社会保険の加入者である限り、健康保険料や厚生年金保険料は毎月の給与から控除されます。
給与が支給されない無給期間が長くなると、保険料が給与から天引きできず、後日自分で納付しなければならないケースも出てくるため、事前に人事担当者に確認しておくと安心です。
傷病手当の申請法

年次有給休暇を使い切ってしまった、あるいは温存しておきたいという状況で無給の病気休暇を取らざるを得ない場合、生活を支えるための公的な支援制度があります。それが、健康保険から支給される「傷病手当金」です。
傷病手当金は、病気やケガのために働くことができず、会社から十分な給与を受けられない場合に、被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度です。この制度を利用するには、以下の4つの条件を全て満たす必要があります。
- 業務外の病気やケガであること(通勤災害や公務災害は対象外)
- 医師が「就労不能」と認めていること
- 連続する3日間を含み、4日以上仕事を休んでいること(待機期間)
- 休んでいる期間について、給与の支払いがないこと
支給額は、おおよそ給与の3分の2に相当する額です。申請には、専用の申請書に自分で記入する部分のほか、事業主(自治体)と医師にそれぞれ証明をしてもらう必要があります。
書類の準備に少し時間がかかる場合もあるため、長期で休むことが決まったら、早めに所属先の人事担当や加入している健康保険組合に相談を開始するのが賢明です。
会計年度任用職員の病気休暇とその日数|申請方法と注意点

休暇制度を実際に利用する際には、手続きの流れや注意点を正確に把握しておくことが不可欠です。ここでは、申請に必要な書類から長期療養時の対応、そして制度利用が評価に与える影響までを詳しく見ていきます。
- 診断書の提出要件
- 病気休暇を90日間に延長する手順
- 休暇取得が契約更新や評価に与える影響
- 家族の看護や子の病気で休暇は使える?
- 会計年度任用職員の病気休暇と日数を正しく理解する(まとめ)
診断書の提出要件
病気休暇を申請する際、どのような場合に診断書が必要になるのかは、実務上の重要なポイントです。
一般的に、休暇を取得する期間によって求められる証明書類が異なります。多くの自治体では、休暇が連続して7日を超える場合に、医師の診断書の提出を義務付けています。
これは、長期の療養が必要であることを客観的な証拠に基づいて証明するためです。この「連続7日」には、土日や祝日といった週休日も含まれる点に注意してください。
一方で、休暇が7日以内の比較的短期である場合は、必ずしも診断書は必要とされません。その代わりとして、医療機関を受診した事実がわかる「領収書」や「診療明細書」などの提出で認められるケースがほとんどです。
ただし、これらの日数の区切りは自治体によって若干異なる場合があるため、必ずご自身の勤務先の規定を確認することが大切です。
ケース別の必要書類まとめ
ケース | 主な必要書類 | 補足 |
---|---|---|
7日以内の休暇 | 医療機関の領収書、診療明細書など | 受診日と医療機関名が確認できる書類 |
7日を超える休暇 | 医師の診断書 | 病名、療養期間などが明記されたもの |
特定の感染症 | 診断書または自治体指定の証明書 | インフルエンザや新型コロナウイルスなど |
診断書の発行には費用がかかり、これは原則として自己負担となります。休暇申請時に速やかに提出できるよう、早めに医師に依頼しておきましょう。
病気休暇を90日間に延長する手順

一つの病気やケガによる病気休暇は、原則として「年度ごと(または任期ごと)に定められた日数」が上限とされています。しかし、重篤な疾病などで上限日数を超えてもなお長期の療養が必要な場合、所属自治体の規則に基づき、特例として休暇の延長が認められる場合があります。
この延長制度を利用するには、まず大前提として、上限日数の休暇満了後も引き続き療養が必要であると医師が診断していることが不可欠です。その上で、任命権者(所属長など)がやむを得ないと判断した場合にのみ、延長が承認されます。
具体的な手続きの流れとしては、休暇期間が満了に近づく時点で、改めて医師の診断書を取得し、延長申請書とともに提出します。これは自動的に延長されるものではなく、都度厳格な審査が行われます。
注意点として、この制度はあくまで「やむを得ない場合」の特例措置であること、そして休暇期間中に任期が満了する場合は、再度任用される見込みがなければ延長が認められないことなどが挙げられます。
長期療養が必要となった場合は、制度の適用の可否について、速やかに人事担当部署へ相談してください。
休暇取得が契約更新や評価に与える影響
病気休暇は労働者に認められた正当な権利です。したがって、制度に基づいて有給の病気休暇を取得したこと自体が、直ちに人事評価や次年度の契約更新で不利に働くことは基本的にありません。
ただし、注意が必要なのは、有給の範囲を超えて無給の休暇や欠勤が長期にわたるケースです。会計年度任用職員の人事評価は、勤務実績に基づいて行われます。
そのため、やむを得ない事情があるとはいえ、勤務日数が著しく少ない状況が続くと、評価や次年度の任用判断に影響を及ぼす可能性は否定できません。
また、ボーナス(期末手当・勤勉手当)は、算定期間中の勤務日数に応じて支給額が変動する場合があります。無給の休暇期間は、この勤務日数から除外されることが一般的であるため、結果的に支給額が減額されることもあります。
これらのことから、日頃の体調管理に努めるとともに、体調がすぐれない場合は無理をせず、まずは付与された有給の病気休暇や年次有給休暇を計画的に活用していくことが、自身の健康と雇用の安定を守る上で鍵となります。
家族の看護や子の病気で休暇は使える?
自身の体調不良ではなく、家族が病気になったり、子の看護が必要になったりした場合に、自身の「病気休暇」を使えるのか、という疑問を持つ方もいるかもしれません。
この点については、明確に区別して理解しておく必要があります。結論から言うと、本人の「病気休暇」を家族のために利用することはできません。病気休暇は、あくまで職員本人が負傷または疾病により療養が必要な場合に限定された制度です。
では、家族のケアが必要な場合はどうすればよいのでしょうか。このような目的のためには、「病気休暇」とは別に、以下のような「特別休暇」が設けられています。
- 子の看護休暇
小学校就学前の子が病気やケガをした際の看護のために取得できる休暇。 - 介護休暇・介護時間
要介護状態にある家族の介護や世話のために取得できる休暇。
これらの休暇も、自治体によって有給・無給の扱いや取得できる日数、対象となる家族の範囲などが異なります。家族に何かあった際に慌てないよう、病気休暇とあわせて、これらの家族をサポートするための休暇制度についても、内容を確認しておくことをお勧めします。
会計年度任用職員の病気休暇と日数を正しく理解する(まとめ)
この記事では、会計年度任用職員の病気休暇に関する様々な情報をお伝えしてきました。最後に、安心して制度を利用するために押さえておくべき重要なポイントをまとめます。
- 2025年度から多くの自治体で年間10日の有給病気休暇が導入
- 病気休暇の付与には6か月以上の任期などの条件がある場合が多い
- 有給・無給を問わず病気休暇は年度ごとにリセットされ繰り越しは不可
- 年次有給休暇は病気療養にも利用でき繰り越しも可能
- 有給休暇中は給与が満額支給される
- 有給日数の超過分や条件外の休暇は無給となり給与から控除
- 無給となる主な理由は任期付き雇用で制度が簡素化されているため
- 無給休暇が4日以上続く場合は健康保険の傷病手当金が利用可能
- 傷病手当金は給与のおおよそ3分の2が支給される生活保障制度
- 休暇が7日を超える場合は原則として医師の診断書が必要
- 7日以内の短期休暇は医療機関の領収書などで代替できることが多い
- 原則90日が上限だが医師の診断があれば延長が認められる特例もある
- 休暇取得自体が評価に直結するわけではないが長期の無給欠勤は影響の可能性
- 家族の看護や子の病気には「子の看護休暇」など別の特別休暇を利用
- 制度の細かなルールは自治体ごとに異なるため必ず所属先の規定を確認
