政治とお金の関係を語る上で、財務省の存在は欠かせません。なぜ多くの政治家が財務省の方針に従うのか、不思議に思う人も多いでしょう。そこには、明治時代から続く制度の仕組みと、財務省が握ってきた強大な権力が関係しています。
財務省は税制や予算だけでなく、他の省庁に比べて圧倒的な情報量と判断力を持ち、政治家さえも影響を受ける立場にあります。また、社会保障費の増加などを背景に、増税したがる理由についても表と裏の動きがあります。
さらに、「財務省をなくすべきではないか」との声に対しては、現実的な問題が立ちはだかります。解体すれば一時的に財政の混乱や信用不安を招く可能性があり、解体するデメリットも軽視できません。本記事では、財務省と政治家の関係を制度・利害・歴史の面からわかりやすく解説していきます。
- 政治家が財務省に従いやすい歴史的な背景
- 財務省が持つ権力と主計局の役割
- 増税を求める理由とその根拠
- 財務省解体によるデメリットと課題
財務省の言いなりになるのはなぜか?背景を探る

- 政治家が財務省の言いなりとなる背景
- 政商関係の実像
- 財務省の権力は、なぜ強いのか?
- 増税したがる理由は何ですか?
- 財務省は何がしたいのか?
政治家が財務省の言いなりとなる背景
政治家が財務省に「言いなり」となる背景には、明治時代から続く制度の流れが関係しています。大きな理由は、財政の管理を中央で一括して行う仕組みが早くから整っていたからです。
明治政府は「富国強兵」を目指し、全国の税をまとめて管理する大蔵省(今の財務省)を中心に据えました。さらに、地方にあったお金の力を中央に集め、すべて国がコントロールできるように変えていきました。
これにより、大蔵省はお金の流れを握る「最強の役所」としての地位を確立。政治家は法律を作っても、実際に予算をもらわなければ動かせないため、どうしても財務省に頼らざるを得ませんでした。
特に以下の3つが要因です。
- 予算編成権:他の省庁の活動費を決める
- 税制設計権:税金のしくみを作る
- 情報独占:経済や財政に関する専門知識を握っている
このようにして、歴史的に政治家と財務省の「上下関係」が強まっていったのです。
ただし、2001年の省庁再編以降は、予算編成権の一部が内閣府の経済財政諮問会議などに移されるなど、財務省の権限は大蔵省時代よりも縮小しています。
また、族議員や政治主導改革の動きなど、政治家と財務省の関係は時代や政権によって変動があり、近年は必ずしも一方的な従属関係とは言い切れません。
政商関係の実像
政治家が財務省の意見に従いやすくなるのは、企業や業界団体との「利害の交差点」に財務省が立っているためです。この関係を通じて「政商」という構図が生まれています。
たとえば、大企業や団体が政治家にお金を出して応援する一方、財務省には天下り先を提供するケースがあります。このようなつながりがあると、政治家は財務省を敵に回しづらくなるのです。
政商関係の構図は以下のようになります。
主体 | 利害の内容 |
---|---|
政治家 | 献金・選挙支援がほしい |
業界団体 | 税制優遇や規制緩和を求める |
財務省 | 省の方針に従う政治家を望む |
さらに、財務省が政党の税制調査会の事務局を実質的に動かしているため、税制の変更も財務省が主導しやすくなっています。
こうして、政治家は「見えない圧力」の中で財務省の意向を優先せざるを得なくなり、「言いなり」状態が続いているのです。
財務省の権力は、なぜ強いのか?

財務省の中でも主計局という部署が大きな力を持っているのは、「予算の入り口と出口」を一手に握っているからです。国の予算をつくるとき、各省庁はまず財務省に「これだけお金がほしい」と伝えます。そして、その内容をチェックし、どこまで認めるかを決めるのが主計局の仕事です。
ここで注目したいのが「査定権」と「情報独占」です。
主計局の強み
- 各省の予算を細かくチェックできる
- 膨大な経済・財政データを独自に持っている
- 政治家でさえ知らない数字を握っている
これにより、政治家や他の役所は主計局の判断を無視できません。たとえば、環境省が環境保護のために新しい取り組みを始めたくても、主計局が「効果が薄い」と判断すれば予算はつきません。主計局はお金の流れだけでなく、政策そのものに大きな影響を与えています。

増税したがる理由は何ですか?

財務省が増税を強く求めるのは、毎年増え続ける国の支出を支えるためです。とくに高齢者向けの医療や年金、介護など「社会保障費」が急激にふくらんでおり、税金だけでは賄いきれない状況になっています。
以下のような理由があります。
主な理由
- 社会保障費が年間約38兆円に
- 国の財政赤字が継続し、債務残高が累増
- 日本の信用を守るために財政を安定させたい
さらに、国際的な信用格付機関は「日本が借金を返せるかどうか」を重視して見ています。増税をしないと、格付けが引き下げられ、国債金利が上昇するリスクもあるのです。
とはいえ、増税にはデメリットもあります。消費税が上がれば、買い物が減って景気が悪くなるおそれがあります。また、現役世代の負担がさらに重くなるという問題もあります。
このように、増税は国の財政と国民生活のバランスを取るための、難しい選択と言えるでしょう。
財務省は何がしたいのか?
財務省の最大の目標は「プライマリーバランスの黒字化」です。これは、国が借金をせずに毎年の支出をまかなえるようにするという目標で、政府は2025~2026年度の達成を目指しています。この考え方をもとに、財務省は「増税」と「支出の見直し」を重視しています。
主な目的
- 国の信用を守る(借金をこれ以上ふやさない)
- 財政がこわれるのを防ぐ
- 自分たちの力や予算を保ちたい
また、もう一つの裏の目的として「省益の確保」があります。予算や人事、税制に関する決定をにぎることで、財務省の力を保ち続けているのです。
例えば、税制調査会という重要な場では、財務省の官僚が中心となって話を進めています。そのため、政治家や国民の声が通りにくくなり、「また増税か」と感じさせてしまう場合もあります。このように、表向きの目的と裏の動きが入り混じっているのが現実です。
財務省の言いなりが、なぜ問題視されるのか?

- 財務省はなぜ嫌われる?
- 財務省で一番偉い人は誰ですか?
- 金融庁と財務省はどちらが上ですか?
- 財務省の解体はどうすれば実現できるのか?
- 解体するデメリットとは?
- 財務省の言いなりになるのはなぜか?(まとめ)
財務省はなぜ嫌われる?
財務省が多くの国民から「嫌われている」と言われる背景には、いくつかの大きな理由があります。その中でも目立つのが、増税の推進、不十分な説明、そして繰り返される不祥事です。
主な不信の原因
- 消費税などで国民の負担を重くしてきた
- 難しい言葉で説明し、一般の人にわかりにくい
- 過去に公文書改ざんなどの不祥事を起こした
このような動きに対して、国民は「一方的」「上から目線だ」と感じやすくなります。また、政府の中で強い力を持っているため、政治家も財務省の意向を無視できず、「言いなり」と見える場面も多く見られます。
もちろん、国の財政を守る大切な役目を持っている面もありますが、説明不足や不祥事が続くと信頼は失われていきます。これが世論の反発を生む大きな要因と言えるでしょう。
財務省で一番偉い人は誰ですか?
財務省で一番偉いのは「事務次官」と言われています。ただし、これは官僚としての話です。一方で、政治のトップは「財務大臣」です。どちらが上かは役割によって変わります。
官僚と政治家のちがい
立場 | 名前の例 | 役割 |
---|---|---|
政務 | 財務大臣 | 政策を決めるトップ |
官僚 | 事務次官 | 省の中の実務トップ |
また、予算をつくる現場の中心となるのが「主計局長」です。この人は、ほとんどの官僚が目指す「事務次官」へのステップでもあります。
政治と行政のバランスの中で「誰が一番偉いか」は一つでは決まりません。表向きは大臣ですが、裏では官僚の力も無視できないのが現実です。
金融庁と財務省はどちらが上ですか?

表向きは金融庁の方が「序列上は高い」とされています。なぜなら金融庁は内閣府の外局という立場だからです。しかし、実際の力では財務省がはるかに上です。
3つの視点で比較
比較項目 | 財務省 | 金融庁 |
---|---|---|
法律の強さ | 予算・税制・国債を担当 | 金融監督が中心 |
人事ルート | 金融庁長官の多くは財務省出身 | 財務省に出向する形が多い |
予算規模 | 約30兆円 | 約2,400億円 |
こうした背景から、金融庁は形式上独立していても、財務省の影響を強く受けています。特に人事や予算面では、財務省が実権をにぎっているといえるでしょう。
ただし、金融庁もリーマンショック後などでは迅速な判断を下し、評価された実績もあります。それでも、ふだんの政策や調整の場面では財務省に主導権があるのが現実です。
財務省の解体はどうすれば実現できるのか?
財務省をいきなりなくすのは現実的ではありません。しかし、少しずつ役割を分けることは可能です。とくに、予算・税金・金融といった大事な仕事を整理して、それぞれ別の機関にゆだねていく方法があります。
ステップごとの進め方
- 主計局の機能 → 第三者機関へ移す
- 税の制度 → 国会の中に中立委員会をつくる
- 金融監督 → 金融庁をさらに強化
こうすれば、一つの組織に力が集まりすぎるのをふせげます。次に大切なのは「誰が決めるのか」を明確にするルールです。これには政治家や専門家がチェックできる仕組みを作る必要があります。
段階的に制度を整えることで、大混乱を避けながらバランスのよい改革ができるでしょう。急ぎすぎると混乱しますので、時間をかけた見直しが大切です。

解体するデメリットとは?

財務省を解体すると、いくつかの大きな問題が出るおそれがあります。中でも心配なのが「国の予算をどうやって決めるか」という点です。現在は財務省が全体をまとめていますが、それがなくなると混乱が起きる可能性があります。
起こりうるデメリット
- 財政全体を管理する役所がなくなる
- 国際的な信頼が下がる
- 政治家の人気取りが加速するおそれ
とくに外国の投資家にとって、日本の「お金のルール」があいまいになると、安心してお金を預けられません。その結果、日本の信用が下がり、円の価値にも悪い影響が出るかもしれません。
また、予算の決め方がバラバラになると、無駄なお金が増える心配もあります。制度を変える前に、これらのリスクへの対策が欠かせません。
財務省の言いなりになるのはなぜか?(まとめ)
記事のポイントをまとめます。
- 明治期から財政を中央集権化した制度が続いている
- 財務省は予算編成権を持ち、政治家の政策実行に影響を与える
- 税制設計の主導権を握り、国の税ルールを決めている
- 経済・財政の専門情報を独占し、判断材料をコントロールしている
- 政治家は予算獲得のために財務省の了承を得る必要がある
- 財務省は業界団体や企業との利害関係にも関与している
- 天下りや献金などを通じて政商関係が構築されている
- 税制調査会を財務省が実質的に仕切っている
- 主計局が予算の査定と配分を一手に担っている
- 政策の可否も主計局の判断で左右されることがある
- 財務省は「プライマリーバランス黒字化」を最重要目標にしている
- 省の力や予算を維持するための省益確保も意識している
- 説明不足や不祥事により、国民の不信感が強まっている
- 政治家の税制方針が財務省の意向に左右されやすい
- 財務省の力は形式上より実際の運用面で大きく働いている
