地方公務員を目指す際、「転勤」は気になる点の一つです。勤務地は県内なのか、それとも県外への異動もあるのでしょうか。また、地方公務員の転勤と結婚の両立は可能か、といった点も生活設計に関わります。
一方で、国家公務員の全国転勤は辛いという話も聞かれます。国家公務員は全国転勤がある職種が多いですが、転勤廃止の動きはないのでしょうか。この記事では、地方公務員の転勤の実態について、国家公務員との違いも交えながら詳しく解説します。
- 地方公務員の基本的な転勤範囲(県内・県外)
- 転勤がない、または少ない地方公務員の職種
- 国家公務員の転勤事情との具体的な違い
- 転勤が結婚やライフプランに与える影響
地方公務員の転勤はどこまで?基本と例外

- 地方公務員の転勤|基本は「県内」異動?
- 地方公務員が転勤で「県外」へ行く例外とは
- 「地方公務員で転勤なし」を叶える職種
地方公務員の転勤|基本は「県内」異動?
地方公務員の転勤は、基本的には「採用された自治体内」に限定されます。国家公務員のように全国を異動することはなく、地域に根差して働くことが前提となっています。
その理由は、地方公務員が地域密着型の行政サービスを担う役割を持つためです。
例えば、都道府県職員の場合、異動範囲は「県内全域」となります。本庁だけでなく、県内各地にある振興局や税務事務所などの出先機関へ配属されることもあります。県の面積が広い場合、離島や山間部への異動で引越しが必要になるケースも考えられます。
一方で、市町村職員(市役所や町村役場)の場合は、異動範囲が「所属する市区町村内」です。多くの場合、引越しを伴う異動は稀であり、生活拠点を変えずに働き続けることが可能です。
また、公立学校の教職員も地方公務員であり、基本的には都道府県内、あるいは政令指定都市の場合は市内での異動が中心となります。
地方公務員が転勤で「県外」へ行く例外とは

原則として自治体内での異動が基本ですが、地方公務員であっても「県外」へ転勤する例外的なケースが存在します。
これは主に、職員の人材育成や、他の自治体・機関との連携強化を目的として行われます。
具体的な例としては、まず「国や他の自治体への出向」が挙げられます。例えば、若手の都道府県職員が経験を積むために、霞が関の省庁へ数年間出向するケースです。また、自治体間の人事交流として、他県の自治体で勤務することもあります。
次に「研修派遣」です。国の省庁などで実施される専門的な研修に参加するため、一時的に県外へ赴任する場合があります。
他にも稀なケースとして、地域の活性化などを目的に民間企業へ出向することもありますが、これらは全ての職員が経験するわけではなく、あくまで例外的な措置と理解しておくとよいでしょう。
「地方公務員で転勤なし」を叶える職種
地方公務員の中でも、特に「転勤なし」または転居を伴う異動が極めて少ない職種を希望する場合、市町村の事務職が最も有力な選択肢となります。
市役所や町村役場の職員は、その自治体の中での部署異動が基本です。自治体の規模が小さければ、どの部署に異動しても自宅から通える範囲内であることがほとんどでしょう。特に、東京23区の特別区職員も、採用された区の内部での異動が中心となるため、転居の必要性は低いと考えられます。
また、学校事務職員なども、教員と同様に自治体内での異動が基本ですが、市町村採用の場合はより狭い範囲での異動となる傾向があります。
ちなみに、国家公務員の中にも転勤が少ない職種は存在します。例えば、特許庁や会計検査院などは、基本的に東京にしか拠点がないため、原則として転勤がありません。ただし、採用の窓口が異なる点には注意が必要です。
地方公務員の転勤と国家公務員との違い

- 「国家公務員の全国転勤が辛い」本当の理由
- 国家公務員で全国転勤がある主な職種
- 公務員の転勤、拒否はできる?希望は通る?
- 地方公務員の転勤と結婚後の生活設計
- 国家公務員の転勤廃止は実現するのか
- 地方公務員の転勤、国家公務員との違い(まとめ)
「国家公務員の全国転勤が辛い」本当の理由
国家公務員の転勤は、地方公務員とは異なり「全国規模」となることが多く、これが「辛い」と言われる主な理由です。
数年ごと(時には1~2年)に全く異なる地域へ引越しを伴う異動が命じられるため、生活基盤が安定しにくいという大きな負担があります。
具体的には、まず精神的な負担が挙げられます。新しい職場や地域コミュニティでの人間関係をゼロから構築し直すストレスや、頻繁な環境変化による孤立感を感じる人も少なくありません。
次に、経済的な負担です。引越し費用や新しい住居の契約費用は手当で補助される部分もありますが、自己負担が発生することも多いです。また、単身赴任を選択すれば、二重生活のコストがかかります。
そして、家族への影響も深刻です。配偶者がいる場合、転勤のたびに仕事を辞めるか、単身赴任を受け入れるかの選択を迫られ、キャリア形成に大きな支障が出ます。また、子どもがいる場合は、転校を繰り返すことによる精神的な負担や学習環境の変化も考慮しなくてはなりません。
国家公務員で全国転勤がある主な職種

一口に国家公務員といっても、全ての職種で全国転勤が頻繁にあるわけではありません。全国転勤が前提となるのは、主に「総合職(キャリア)」と一部の「専門職」です。
総合職は、将来の幹部候補として採用され、政策の企画立案や省庁間の調整などを担います。多様な業務経験や広い視野を養うため、霞が関の本省と全国の出先機関、時には海外の在外公館などを1~3年程度の短いサイクルで異動するのが一般的です。
一方で、同じ国家公務員でも「一般職」は、多くがブロック単位(例:関東甲信越、近畿など)や地域限定での採用となります。そのため、異動があったとしても採用された地域内が基本となり、全国転勤は少ない傾向にあります。
専門職については、職種によって異なります。例えば、労働基準監督官は全国転勤がありますが、国税専門官は採用された国税局(全国12ブロック)の管内での異動が基本となるなど、その専門性が求められる範囲によって異動の規模が変わります。
| 職種区分 | 転勤の範囲・頻度(目安) | 主な特徴 |
| 総合職(キャリア) | 全国(海外含む) / 1~3年ごと | 幹部候補。多様な経験を積むため。 |
| 一般職 | ブロック内・地域限定が基本 | 定型的な事務処理。生活基盤を維持しやすい。 |
| 専門職(例:国税) | 採用国税局管内が基本 | 専門性を活かす。全国転勤は限定的。 |
| 専門職(例:労基) | 全国 | 専門職だが、全国配置の必要性あり。 |
公務員の転勤、拒否はできる?希望は通る?
結論から言うと、公務員が業務命令である「転勤(人事異動)」を原則として拒否することはできません。
なぜなら、国家公務員法や地方公務員法において、職員は職務上の命令に従う義務があると定められているためです。正当な理由なく拒否を続けた場合、懲戒処分の対象となる可能性もあります。これは、組織として公平な行政サービスを提供するために必要な措置と考えられています。
ただし、やむを得ない事情がある場合は、配慮される余地があります。
例えば、育児や家族の介護など、家庭の事情でどうしても転居が難しい場合です。このようなケースでは、正式な辞令が出る前の「内示」の段階で、上司や人事担当課に相談することが大切です。その際、診断書や公的な証明書類の提出を求められることもあります。
もちろん、相談したからといって必ずしも希望が通るわけではありません。組織の人員配置の都合と、個人の事情を天秤にかけて判断されることになります。
地方公務員の転勤と結婚後の生活設計

地方公務員は、国家公務員の総合職などと比較して、結婚後の生活設計が立てやすいというメリットがあります。
最大の理由は、転勤の範囲が採用された自治体内に限定されるため、地理的な生活基盤が非常に安定しているからです。
例えば、夫婦共働きを続ける場合、配偶者が転勤のたびに仕事を辞める必要がありません。また、マイホームを購入するタイミングも計りやすいと言えます。将来的に県内の遠隔地(都道府県職員の場合)に異動する可能性を考慮する必要はありますが、全国転勤に比べればはるかに計画的です。
さらに、子育てにおいて、実家や親戚の近くに住み続けるといった選択もしやすくなります。保育園の送迎や急な発熱時などに支援を受けられる環境を維持できることは、共働き家庭にとって大きな利点となるでしょう。
国家公務員の転勤廃止は実現するのか

国家公務員の転勤制度について、「全面的に廃止する」という動きは、現在のところ現実的ではありません。しかし、そのあり方を見直そうとする動きは着実に進んでいます。
その背景には、働き方の多様化や、育児・介護と仕事の両立を重視する社会的な要請があります。
例えば、テレワークの導入が省庁でも進んでおり、場所にとらわれない働き方が可能になりつつあります。また、2025年には、職員の事情に応じて転勤なしの働き方を選択できるような、より柔軟な人事制度の運用も提言されています。
一方で、転勤制度そのものは維持される流れもあります。2025年8月の人事院勧告では、離島や山間部など(特地)へ転勤する職員への手当を手厚くする見直しが示されました。
このように考えると、制度の「廃止」を目指すというよりは、テレワークや柔軟な人事運用によって「転勤しなくてもよい働き方」を選択できる余地を広げつつ、どうしても転勤が必要な場合の「負担軽減(手当増額)」も同時に進めている、というのが現状と言えそうです。
地方公務員の転勤、国家公務員との違い(まとめ)
地方公務員の転勤に関する今回の記事のポイントを以下にまとめます。
- 地方公務員の転勤は採用された自治体内が基本
- 都道府県職員は県内全域(引越し伴う場合あり)
- 市町村職員は市町村内(引越しは稀)
- 教職員も県内または政令市内が基本
- 地方公務員でも国や他自治体への出向で県外に行く例外もある
- 「転勤なし」希望なら市町村の事務職が有力
- 国家公務員は「総合職」などで全国転勤が多い
- 国家公務員の転勤は精神的・経済的・家族的負担が大きい
- 公務員の転勤は原則拒否できない
- 育児や介護の事情は内示段階で相談が可能
- 地方公務員は転勤が少ないため結婚後の生活設計が立てやすい
- 共働き継続やマイホーム購入の計画が安定する
- 国家公務員の結婚両立は単身赴任などの課題と工夫が必要
- 国家公務員の転勤「全面廃止」は現実的ではない
- テレワーク導入や手当見直しなど制度の柔軟化は進んでいる


