テレビの選挙速報やニュースを見ていると、「衆議院と参議院の両方なれるのかな?」とふと疑問に思ったことはありませんか?政治家のニュースでよく聞く「鞍替え出馬」という言葉に関しても、もし両方の議員になれるならわざわざリスクを冒して移動する必要もない気がしますよね。
実は私たちが普段何気なく見ている国会には、憲法や法律で定められた非常に厳格なルールが存在します。検索でよく調べられている両院の違いやどっちが偉いのかといった序列、給料の仕組み、そして立候補に関する兼職の禁止規定など、意外と知らない政治の裏側について、私の視点でわかりやすく解説していきます。
- 衆議院と参議院を兼職できない法的な理由と根拠
- 鞍替え出馬をした瞬間に発生する自動失職の仕組み
- 給料や権限における両院の意外な共通点と明確な違い
- 政治家があえてリスクを負って鞍替えをする戦略的な理由
衆議院と参議院の両方なれるか法的ルールと違い

まず結論からお話しすると、日本において一人の人物が衆議院議員と参議院議員の両方を同時に務めることは絶対にできません。これは「物理的に忙しいから無理」といったレベルの話ではなく、憲法などの法律でガチガチに禁止されているからです。
では、なぜそこまで厳格に分けられているのか、それぞれの仕組みやルールの違いとあわせて見ていきましょう。
衆議院と参議院はどうやって決まるのか
衆議院と参議院では、議員の選び方、つまり選挙の仕組みそのものが大きく異なります。私自身、公務員時代に選挙事務に関わったことがありますが、この違いは非常に重要です。
まず衆議院ですが、こちらは「小選挙区比例代表並立制」という方式をとっています。地域ごとの代表を1人選ぶ小選挙区と、政党の得票数に応じて議席を配分する比例代表の2つがあります。
衆議院の最大の特徴は、なんといっても「解散」があることですね。任期の途中でも、総理大臣の判断で全員クビ(解散)になり、選挙が行われます。そのため、衆議院議員は常に「次の選挙」を意識せざるを得ません。
一方、参議院は「選挙区」と「比例代表」で選ばれますが、決定的な違いは「解散がない」ことです。しかも、3年ごとに半数ずつ改選するというルールがあります。これにより、参議院議員は一度当選すれば6年間はじっくりと腰を据えて活動できるわけです。このように、決め方や任期の安定性に大きな差があるため、両方を兼ねることは制度的にも不可能な構造になっています。
衆議院と参議院の違いと人数の基礎知識

「どっちも国会議員でしょ?」と思われがちですが、人数や立候補できる年齢(被選挙権)にも明確な違いがあります。これを知っておくと、ニュースの見え方が少し変わるかもしれません。
| 項目 | 衆議院(下院) | 参議院(上院) |
|---|---|---|
| 定数(人数) | 465人 | 248人 |
| 任期 | 4年(解散あり) | 6年(解散なし・3年毎半数改選) |
| 被選挙権(なれる年齢) | 満25歳以上 | 満30歳以上 |
衆議院の方が人数が多く、任期が短いのが特徴です。また、参議院は「良識の府」とも呼ばれ、より経験豊富な人材を求めるという意味合いからか、立候補できる年齢が30歳以上と高めに設定されています。
人数が違うので、単純に衆議院の方が「数による力」は強いと言えますが、参議院には解散がない分、長期的な視点での議論が期待されているんですね。
衆議院と参議院で与党と野党の構成は変わるか
これは非常に面白いポイントなのですが、衆議院と参議院では選挙のタイミングが異なるため、「衆議院では与党が勝っているのに、参議院では野党が過半数を占めている」という状況が生まれることがあります。これをいわゆる「ねじれ国会」と呼びます。
通常、総理大臣は衆議院の多数派から選ばれるため、政権与党は衆議院を制しています。しかし、参議院選挙で与党が大敗すると、参議院だけ野党が多数派になります。こうなると、衆議院で可決した法案が参議院で否決されてしまい、なかなか法律が決まらないという事態に陥ります。
もし一人の人間が両院を兼職できてしまったら、この「ねじれ」によるチェック機能(抑制と均衡)が全く働かなくなってしまいますよね。だからこそ、構成メンバーを完全に分ける必要があるのです。
鞍替え出馬による自動失職の仕組み

「衆議院から参議院へ」、あるいはその逆へ移動することを「鞍替え(くらがえ)」と言いますが、これには非常にシビアなルールがあります。それが「自動失職」です。
公職選挙法第90条には、現職の議員が他の選挙に立候補の届出をした瞬間、その日のうちに自動的に今の職を失うと定められています。つまり、「もし選挙に落ちたら元の議員に戻ろう」という保険をかけることは絶対にできません。
【自動失職のポイント】
本人が「辞めます」と辞表を出さなくても、立候補の手続きが受理された瞬間に、強制的に議員の身分を失います。これを「退路を断つ」と表現することもありますが、制度上、退路は強制的に断たれる仕組みになっているのです。
給料や待遇に格差はあるのか
「衆議院の方が偉いなら、給料も高いんじゃないの?」と考える方もいるかもしれませんが、実は給料(歳費)は全く同じです。
法律で「国会議員の歳費は月額129万4,000円」と決まっており、これに期末手当(ボーナス)などが加わります。衆議院議員だから高い、参議院議員だから安い、といった格差は一切ありません。秘書の数や新幹線の無料パスなどの待遇も基本的には平等です。
ただ、給料は同じでも、「いつクビになるかわからない(解散がある)」衆議院と、「6年間身分が保証される」参議院では、精神的な安定感という意味での待遇には大きな差があると言えるかもしれませんね。
衆議院と参議院の両方なれる可能性がない中の戦略

制度上、両方のバッジを同時につけることはできません。だからこそ、政治家たちは自分のキャリアや目的に合わせて、「今はどちらの院に所属すべきか」を戦略的に選んでいます。ここからは、政治家の視点に立ってその選択の裏側を探ってみましょう。
衆議院と参議院はどっちが上で権限が強いか
給料は同じですが、権限の強さという点では明確に「衆議院の優越」が憲法で定められています。
例えば、予算の決定や総理大臣の指名などで両院の意見が食い違った場合、最終的には衆議院の決定が優先されます。また、内閣を倒すことができる伝家の宝刀「内閣不信任決議案」を出せるのも衆議院だけです。
【なぜ衆議院が強い?】
衆議院は解散があり、任期も短いため、「国民の最新の意見を反映している」と考えられているからです。そのため、重要な決定権は衆議院(下院)に強く持たせています。
つまり、政治的なパワーゲームにおいては、衆議院の方が「上」であるという見方が一般的です。総理大臣を目指すような野心ある政治家が衆議院にこだわるのは、このためです。
政治家は衆議院と参議院どちらに立候補すべきか

では、これから政治家を目指す人はどちらに立候補すべきなのでしょうか?これはその人の「目的」によります。
- 総理大臣になりたい人
間違いなく衆議院です。慣例として総理大臣は衆議院議員から選ばれますし、権力の中心は常に衆議院にあります。 - 特定の政策をじっくり進めたい人
解散のない参議院がおすすめです。6年間という長い任期を使って、教育や福祉など専門的な課題に取り組むことができます。
私が見てきた中でも、地元に根付いて長く活動したいタイプは地方議員や参議院を、国政の中心で派手に戦いたいタイプは衆議院を目指す傾向があるように感じます。
鞍替えのリスクと辞職のタイミング
先ほど「自動失職」の話をしましたが、実際には立候補の届出を待たずに、選挙の直前に自ら「辞職」するケースも多く見られます。これには高度な政治的計算があります。
例えば、参議院議員が衆議院選挙に出るために辞職する場合、そのタイミングによって「補欠選挙」がいつ行われるかが変わってきます。自分の抜けた穴を埋める選挙を、有利な日程に合わせるために辞職時期を調整するのです。
しかし、最大のリスクはやはり「落選すればただの人」になること。現職の参議院議員という安定した地位(残り任期数年)を捨てて、解散総選挙という博打に打って出るわけですから、そのプレッシャーは計り知れません。それでも鞍替えするのは、それ以上のリターン(大臣ポストや総理への道)があるからこそでしょう。
タレント候補が参議院を選ぶ理由

選挙のたびに話題になる芸能人や有名人の出馬ですが、その多くが参議院の比例代表から出ていることに気づきませんか?これには明確な理由があります。
衆議院の小選挙区は「地元の代表」を選ぶ色合いが濃く、その地域でドブ板選挙をして信頼を勝ち取る必要があります。一方、参議院の全国比例は「日本全国どこからでも投票できる」仕組みです。つまり、テレビで知名度があるタレントさんは、全国に散らばるファンから票を集めやすいのです。
「知名度があれば当選しやすい」というシステム上の相性が良いため、タレント候補は必然的に参議院を選ぶことが多くなります。
衆議院と参議院の両方なれるわけではない(まとめ)
ここまで見てきた通り、日本の国会制度では衆議院と参議院の両方なれるということは絶対にありません。
憲法48条の兼職禁止規定は、権力の集中を防ぎ、両院がお互いをチェックし合うために不可欠なルールです。給料は同じでも、任期や権限、そして求められる役割は全く異なります。政治家たちはその違いを理解した上で、自分のキャリアや成し遂げたい政策に合わせて、時にリスクを負って「鞍替え」という決断を下しています。
次にニュースで「衆参同日選挙」や「鞍替え出馬」という言葉を聞いたときは、「ああ、彼らは今、人生をかけた片道切符の勝負をしているんだな」と思い出してみてください。きっと今までとは違った深みを持ってニュースが見られるはずですよ。


