公務員は安定した職業というイメージが強く、就職先として根強い人気を誇っています。しかし実際には、若手職員の離職が増えており、特に入庁から3年以内に辞めてしまうケースが目立っています。
公務員の離職率データを詳しく見ると、20代の若手における退職率が高いことが明らかになっており、その背景には、業務の厳しさや人間関係の悩みなど、さまざまな要因が存在します。現場では過重な仕事によって心身をすり減らし、若手が潰れるような状況に追い込まれることも少なくありません。
本記事では、離職率の現状や推移をもとに、若手が辞める理由や、3年以内の離職が集中する要因についてわかりやすく解説していきます。
- 離職率の全体的な推移と現状
- 若手公務員の離職率が高い理由と背景
- 省庁別に見る国家公務員の離職傾向
- 離職を防ぐための対策や支援の取り組み
公務員の離職率|その実態と背景を探る

- 公務員の離職率|若手はなぜ高い?
- 入庁から3年以内の壁とは
- 離職率の推移|過去10年の背景
- 国家公務員の離職率と省庁別の差
公務員の離職率|若手はなぜ高い?
結論から言えば、若手公務員の離職率が高い主な理由は、理想と現実のギャップ、職場の人間関係、そして将来への不安です。
まず、総務省の調査によると、20代の地方公務員の離職率は他の年代よりも高い傾向にあります。特に最初の3年間で退職する割合が多く、現場では「若手が定着しない」と悩む声も増えています。
理由の一つは、安定を求めて入庁したものの、実際は激務だったという現実に直面するからです。定時退庁が難しい部署もあり、サービス残業が続くケースも見られます。また、上下関係が厳しい体質に馴染めない若手も少なくありません。
さらに、民間企業と比べてスキルの幅が広がりにくいと感じ、将来に不安を抱える人もいます。
以下のような理由が複合的に離職率を押し上げています。
- 業務量と給料が釣り合わない
- 異動の頻度が高くストレスが続く
- 評価制度が曖昧で成果が見えにくい
- 将来像が描きにくい
これらの課題に対処しなければ、今後も若手の流出は続く可能性があります。
入庁から3年以内の壁とは

最初の3年間で辞めてしまう公務員が多いのは、制度上の仕組みと心理的な要素が重なっているからです。
総務省の資料によると、公務員全体の離職率は1%前後で、20代でも2〜3%程度ですが、新規採用職員のうち3年以内に退職する割合が他の年代よりも高くなる傾向があります。これは、就職後すぐに見える「理想と現実の差」が大きな原因です。
例えば、「住民のために役立ちたい」という思いで入庁しても、実際は事務処理やルールの運用が中心になります。このギャップに失望し、やりがいを感じられずに辞めるケースが少なくありません。
また、3年目というのは「異動」が発生しやすい時期でもあります。新しい環境への適応が難しいと感じる人にとって、それが離職を決めるきっかけになる場合もあります。
主な退職理由は以下の通りです。
主な理由 | 詳細な内容 |
---|---|
ミスマッチ | 業務内容や職場風土が合わない |
メンタル不調 | 慣れない業務や人間関係で心が疲れる |
転職意欲 | 民間の働き方に魅力を感じる |
キャリア不安 | スキルが身につかないと感じる |
これを防ぐには、入庁前の職場理解を深めることや、若手を支える仕組みづくりが不可欠です。現場ではOJT制度や定期的な面談の導入が進められています。
言い換えれば、「最初の3年間」が公務員人生の分かれ道となっているのです。
離職率の推移|過去10年の背景

過去10年の公務員の離職率を見てみると、全体としては大きな変化はありませんが、若手職員を中心にやや増加傾向が見られます。安定よりも自分の成長や働きやすさを重視する傾向が強くなってきました。
総務省が出しているデータによれば、2013年度の地方公務員の離職率はおおむね1%台前半で推移しており、2023年度も同様に1%前後にとどまっています。全体の離職率は大きく変動していませんが、若手職員の離職が増加している点は注目に値します。
背景には次のような要因が影響しています。
- 働き方改革の途中段階で混乱が生じている
- 人員不足による業務の偏り
- 若手の価値観の多様化
ポイントとして、離職率は一時的な波よりも「長期の流れ」で見ることが大切です。以下に10年間の動きを簡単にまとめました。
年度 | 離職率(地方公務員) |
---|---|
2013 | 約1.1% |
2015 | 約1.2% |
2018 | 約1.1% |
2020 | 約1.2% |
2023 | 約1.2% |
この表からも分かるように、年々の大きな変化はありませんが、全体の離職率は1%前後で推移しています。今後の改善には、組織としての働き方や若手支援策の見直しが求められます。
国家公務員の離職率と省庁別の差
国家公務員の離職率は、省庁によって大きく異なります。これは業務の忙しさや人事制度、働き方のちがいが関係しているからです。
たとえば、以下のような省庁は離職率が高い傾向にあります。
離職率が高い省庁 | 主な理由 |
---|---|
厚生労働省 | 夜遅くまでの業務や出張が多い |
財務省 | 激しいプレッシャーと人事の厳しさ |
経産省 | 長時間の会議や調整が多い |
一方で、文部科学省や農林水産省などは比較的落ち着いた環境だといわれています。ただ、業務量や配属先によって状況は変わるため、すべてが当てはまるとは限りません。
離職率が高くなる背景には、次のような要素もあります。
- 昇進競争が激しい
- 人事異動が多く落ち着けない
- 政策決定にかかわるプレッシャーが強い
これらの影響で、心身ともに疲れ、転職を考える人が増えています。職場改善に取り組む動きも出てきましたが、課題はまだ多く残っています。
公務員の離職率から見る働き方の課題と今後

- 若手が潰れる現場の真実
- 公務員を辞めてよかった?転職成功の事例
- 公務員と民間の離職率を比較
- 定年まで続く人と辞める人の分岐点
- 公務員の離職率から見る働き方の課題と今後(まとめ)
若手が潰れる現場の真実
若手公務員が「潰れてしまう」と言われる背景には、業務の重さと精神的な負担が大きく関係しています。特に新人や20代前半の職員に強いプレッシャーがかかっています。
現場では次のような声が多く聞かれます。
- 「配属初日から深夜まで残業が続いた」
- 「ミスが許されず、上司の目が常に怖い」
- 「人手が足りず、毎日がパンク状態」
メンタル不調に陥る若手も増えており、心療内科に通うケースもあります。
主なストレス要因は次の通りです。
- 業務量が多すぎる
- 指導が厳しすぎて相談できない
- 達成感を感じにくい
職場では最近、メンター制度や定期面談などの支援策が導入されています。ですが、それだけで十分とは言えません。若手が安心して働ける環境をつくるためには、組織全体の意識改革が必要です。
公務員を辞めてよかった?転職成功の事例

公務員を辞めた人の中には「辞めてよかった」と感じている人もいます。安定した職場を離れることに不安はつきものですが、転職後に自分らしい働き方を見つけた人も多く存在します。
転職成功の傾向を見ると、次のようなケースが目立ちます。
- 民間企業で専門スキルを活かす
- 地元企業でワークライフバランスを重視
- NPOなどでやりがいを優先した仕事に就く
転職市場では、公務員の「調整力」「報連相の正確さ」などが高く評価される傾向があります。また、業務の正確さや責任感もアピールポイントです。
ただし、気をつけたいのは「辞める理由」だけで転職先を決めることです。次の職場で何をしたいかを考えることが、後悔しない第一歩になります。
転職で見られる変化の例
内容 | 公務員時代 | 転職後 |
---|---|---|
年収 | 安定していた | 上がる人もいれば下がる人も |
働く時間 | 長時間になることも多い | 自分で調整できる場合も |
精神的な満足度 | 低くなることがある | 向上するケースもある |
変化を受け入れる準備があれば、転職は前向きな選択になり得ます。
公務員と民間の離職率を比較
公務員と民間企業では、離職率や働き方に明確な違いがあります。どちらが良いかは人それぞれですが、それぞれの特徴を知ることで、自分に合う働き方を見つけやすくなります。
ここでは、主な違いを簡単に整理してみましょう。
比較項目 | 公務員 | 民間企業 |
---|---|---|
離職率 | 約1~2%(地方公務員は1%前後、国家公務員は2%前後) | 約10~15%(企業により異なる) |
給与体系 | 年功序列が中心 | 実力や成果で差が出ることも |
昇進スピード | 緩やか | 早い人は20代でも管理職に |
働き方の柔軟性 | 部署によるリモートや時短も増えている | 企業や職種による |
ポイントは、公務員は「安定重視」、民間は「柔軟性と成長重視」といえます。最近では公務員の中でも、長時間労働や将来の不安から辞める人が増えてきました。
一方で、民間に転職した人の中には、「思ったより忙しい」「成果主義が合わない」と感じる人もいます。職場の制度や文化が自分に合っているかを見極めることがとても大切です。
どちらにもメリットとデメリットがあり、何を重視するかで満足度は変わります。比較することで、自分にとっての「働きやすさ」が見えてくるでしょう。
定年まで続く人と辞める人の分岐点

公務員として定年まで働く人もいれば、数年で退職を選ぶ人もいます。その差は、キャリアに対する考え方や、家庭・健康などライフステージの影響によって生まれます。
辞める人と残る人には、次のようなちがいがあります。
【辞める人の特徴】
- 仕事にやりがいを感じにくい
- 他の働き方に挑戦したくなった
- 家族の都合や転勤が合わない
【残る人の特徴】
- 安定した収入を重視している
- 社会貢献の実感がある
- 定年まで働く意思が強い
また、20代〜30代はキャリアを見直しやすい時期、40代以降は家庭や体力が判断に大きく影響します。下の表に分岐しやすいタイミングをまとめました。
年代 | 分岐のきっかけ |
---|---|
20代 | 入庁後のギャップ・転職市場への興味 |
30代 | 出産・育児・異動のストレス |
40代 | 昇進や責任へのプレッシャー |
50代 | 健康不安や将来の生活設計の見直し |
職場が合っていれば長く働きやすくなりますが、合わなければ心も体も疲れてしまいます。どの道を選ぶかは、価値観と環境のバランスで決まっていくのです。
公務員の離職率から見る働き方の課題と今後(まとめ)
記事のポイントをまとめます。
- 若手公務員の離職率は他の年代よりも高い傾向がある
- 入庁後3年以内に辞めるケースが特に多い
- 理想と現実のギャップが離職の大きな原因
- 職場の人間関係がストレスのもとになりやすい
- 異動の多さが定着を妨げる要因となっている
- 若手はキャリアや将来への不安を抱きやすい
- 公務員全体の離職率は1%前後で安定している
- 若手に限ると離職率が徐々に上昇している
- 省庁ごとに離職率の差があり、厚労省や財務省が高め
- 昇進競争や政策プレッシャーが国家公務員の離職要因
- 若手の「潰れる」背景には過重労働や孤立がある
- メンター制度や面談の導入など改善策も始まっている
- 転職後に満足している元公務員も多く存在する
- 民間と比較すると、公務員は離職率が圧倒的に低い
- キャリア観や家庭状況によって退職・残留の判断が分かれる
