公務員という安定した立場でありながら、自身の経験や趣味を発信できるブログ運営に魅力を感じる方は少なくないでしょう。
しかし、その一方で、公務員ブログは禁止されているのではないかという不安や、もし収益化した場合に問題とならないか、といった疑問がつきまといます。
万が一、副業とみなされ公務員のブログがばれた場合、どのような処分が待っているのか、また、公務員のブログ収入を家族名義で管理する方法に違法性はないのか、といった具体的な悩みは尽きません。
この記事では、それらの不安や疑問を解消するため、法律や実例に基づき、公務員のブログ運営に関するルールと現実を多角的に解説します。
- 公務員のブログ運営が法律でどのように規制されているか
- 収益化が許可されるケースと具体的な申請手順
- 副業が発覚する典型的な経路と身元がバレないための対策
- 規則に違反した場合の懲戒処分の実態とリスクの大きさ
公務員ブログの運営ルールと法的規制の全体像

- 公務員のブログ運営|禁止制度の根拠
- ブログ収益化の許可条件とは
- 公務員はアフィリエイトは禁止されていますか?
- ブログ収入は家族名義でOK?
- 許可不要でブログを運営できる範囲
公務員のブログ運営|禁止制度の根拠
公務員のブログ運営が「禁止」と言われる背景には、主に2つの法的な義務が存在します。それは「営利企業従事制限(副業禁止)」と「職務専念義務」です。
まず、国家公務員法第103条や地方公務員法第38条では、職員が許可なく営利を目的とする企業や団体で役員になったり、自ら営利事業を営んだりすることを原則として禁じています。
しかし、2025年6月以降は副業規制が緩和され、所定の許可を得て条件を満たせば、営利目的のブログ運営も可能となりました。したがって、ブログに広告を掲載して収益を得る行為も、適切な手続きを経て許可を受ければ認められる場合があります。
次に、国家公務員法第101条や地方公務員法第35条で定められた「職務専念義務」があります。これは、勤務時間中は職務に全力を尽くさなければならないという義務です。そのため、勤務時間中にブログを執筆・更新する行為は、この義務に明確に違反することになります。
これらの規制は、公務員が全体の奉仕者として、職務の公正さを保ち、国民の信頼を損なわないために設けられています。したがって、ブログ運営自体が一律に禁止されているわけではなく、収益を目的とする場合でも、勤務時間外に行い、必要な許可を得ていれば問題ないとされています。
ブログ収益化の許可条件とは

公務員がブログを収益化する場合、原則として任命権者からの許可が必須となります。ここでは、収益源別に許可が得られやすいケースと、その申請手順の概要を解説します。
Google AdSense・アフィリエイト
Google AdSenseやアフィリエイト広告による収益化は、「営利目的の事業」と明確に判断されやすいため、許可申請が必要です。2025年の規制緩和により、ブログの内容や規模、職務との関係性によっては許可されるケースも増えくるでしょう。
過去には、無許可で広告収入を得ていた職員が懲戒処分を受けた事例も報告されています。例外的に許可される可能性があるとすれば、ブログの内容が公務とは全く無関係な趣味の領域であり、収益もごく少額である場合などが考えられますが、申請内容や職務との関係性次第で許可される事例が増えています。
有料note・電子書籍
一方、有料noteの販売や電子書籍の出版といった「執筆活動」は、内容次第で許可が得られる可能性があります。特に、職務とは直接関係のない専門知識や趣味に関する内容で、社会貢献性が高いと判断された場合、許可のハードルは下がります。
許可申請の手順
許可を得るためには、まず所属する省庁や自治体の人事担当部署に相談し、指定された申請書を提出する必要があります。
申請書には、ブログのテーマ、収益化の方法、予想される収益額、作業時間などを具体的に記載し、本業の職務に一切支障がないことを明確に説明することが求められます。
その後、所属長からの意見書を添えて提出し、人事部門での審査を経て、最終的に任命権者が許可・不許可を決定します。
公務員はアフィリエイトは禁止されていますか?

「公務員はアフィリエイトが禁止されている」という話をよく耳にしますが、これは法律で名指しで禁止されているわけではありません。しかし、その仕組みから「営利企業従事制限」に抵触する可能性が極めて高いのが実情でした。
アフィリエイトは「成果報酬型広告」と呼ばれ、ブログ訪問者が広告をクリックし、商品購入やサービス登録に至った場合に、広告主である企業から報酬が支払われます。
この活動は、特定の営利企業の販売促進に協力し、その対価として継続的に報酬を得る行為と見なされます。この点が、国家公務員法第103条や地方公務員法第38条が禁じる「自ら営利企業を営む」または「報酬を得て事業に従事する」ことに該当すると判断されてきました。
人事院の規則では、事業の規模や収益の大小にかかわらず、営利目的の活動は規制の対象とされていました。月数千円程度のわずかな収益であっても、許可なく行えば懲戒処分の対象となり得ます。
しかし、2025年6月以降は規制が緩和され、「公務能率の確保」「職務の公正の確保」「職員の品位の保持」という3原則を満たし、職場の許可を得ればアフィリエイトも可能となりました。
例外的に、非営利団体の活動支援の一環として行う場合や、家業の手伝いとして無報酬で行う場合など、ごく限定的な状況で問題ないとされる余地は従来から存在していましたが、2025年6月以降は、一定の条件を満たせば広い範囲で副業が認められるようになっています。
ブログ収入は家族名義でOK?

公務員本人が副業規制を回避するため、配偶者や親など家族の名義を借りてブログを運営し、収入を得る方法を検討する方がいます。しかし、この手法には税務上および法律上の大きなリスクが伴うため、慎重な判断が必要です。
最も重要なポイントは、「名義貸し」と「家族が主体的に事業を運営している」ことの違いです。単に口座や契約の名義を家族にしただけで、実質的な運営(記事執筆、サイト管理、収益管理など)をすべて公務員本人か行っている場合、それは「名義貸し」と判断されます。
税務署は「実質所得者課税の原則」に基づき、所得が実質的に誰に帰属するかを判断するため、税務調査で否認され、公務員本人の所得として追徴課税される恐れがあります。
一方、家族自身が主体となってブログを運営し、公務員本人はあくまで「無報酬で家業を手伝う」範囲に留まるのであれば、法律上の問題は生じにくいと考えられます。この場合、ブログのドメインやサーバー、ASPの契約、収益振込口座など、すべてを家族名義で統一し、確定申告も家族が行う必要があります。
いずれにしても、安易な名義貸しは懲戒処分のリスクを高めるだけでなく、家族をトラブルに巻き込む可能性もあるため、絶対に行うべきではありません。
許可不要でブログを運営できる範囲
公務員がブログを運営すること自体は、法律で一律に禁止されているわけではありません。許可申請が不要で、問題なく運営できるのは、完全に非営利の範囲に留まる場合です。
具体的には、アフィリエイト広告やGoogle AdSense、有料記事の販売など、収益化に繋がる要素を一切排除したブログ運営がこれに該当します。
趣味の記録、日常の出来事、専門知識の無償提供など、個人の表現活動として行うブログであれば、原則として自由です。これは、Twitter(X)やInstagramといったSNSでの情報発信と同様の扱いです。
ただし、非営利のブログであっても、注意すべき点が3つあります。
一つ目は「守秘義務」です。職務上知り得た個人情報や内部情報を公開することは、法律で固く禁じられています。
二つ目は「信用失墜行為の禁止」です。公務員の信用を損なうような不適切な発言や、特定の個人・団体を誹謗中傷する内容は、懲戒処分の対象となります。
三つ目は「職務専念義務」で、前述の通り、勤務時間内にブログを更新する行為は許されません。
これらのルールを守り、収益化を目的としない限り、公務員もブログを通じた自由な情報発信を楽しむことが可能です。
公務員ブログのリスク管理と発覚後の現実

- ブログがばれた時の発覚経路
- バレないための具体的な匿名化対策
- 副業による処分の判例
- 公務員で一番重い処分は何ですか?
- 公務員ブログの運営ルールと法的規制(まとめ)
ブログがばれた時の発覚経路
無許可で収益化ブログを運営している場合、それが職場に発覚するリスクは常に存在します。発覚に至る典型的な経路は、主に以下の4つです。
一つ目は、前述の「住民税の増加」によるものです。確定申告で普通徴収を選択し忘れると、住民税額の不自然な増加から給与担当者に気づかれる可能性があります。ただし、自治体によっては普通徴収を選択できない場合もあるため注意が必要です。
二つ目は、「内部からの通報」です。職場の同僚や上司に、飲み会の席でうっかり話してしまったり、ブログを運営している様子を見られたりすることで情報が漏れ、そこから人事部に通報されるケースは少なくありません。信頼している相手であっても、安易に副業の話をすることは避けるべきです。
三つ目は、「ネット上からの身元特定」です。ブログや連携するSNSのプロフィール、記事の内容から個人が特定されるケースが非常に多く見られます。本名や顔写真はもちろん、出身地、勤務先の自治体名、職場の写真などを不用意に公開すると、第三者によって容易に身元が割り出され、職場に通報される危険性があります。
四つ目は、技術的な「IPアドレスの照合」です。万が一、職場のパソコンやWi-Fiネットワークを使ってブログの更新作業を行ってしまうと、そのアクセスログから個人が特定される可能性があります。私的な活動は、必ず個人の端末と回線で行うことが鉄則です。
バレないための具体的な匿名化対策

公務員がリスクを抑えながらブログを運営するためには、匿名性を徹底することが鍵となります。身元が特定されないための具体的な対策は、多岐にわたります。
まず、ブログやSNSのプロフィール設定が基本です。本名、顔写真、勤務先の自治体名や部署名など、個人に繋がる情報は一切記載してはいけません。ニックネームは本名から類推できないものを選び、プロフィール画像にはフリー素材やオリジナルのイラストを使用するのが安全です。
次に、記事の内容にも細心の注意を払う必要があります。職務上知り得た情報は絶対に書かず、住んでいる地域や職場が特定できるような記述も避けるべきです。
「地方公務員」といった曖昧な表現に留めるのが無難です。また、投稿する写真に位置情報(Exif情報)が含まれていないかを確認し、削除する習慣をつけましょう。
さらに、SNSの運用も慎重に行うべきです。副業用のブログとプライベートのSNSアカウントは完全に分離し、相互にリンクさせないようにします。副業に関する話題をプライベートアカウントで発信するのは、身バレの大きな原因となります。
これらの対策を講じることで、第三者から個人を特定されるリスクを大幅に下げることが可能です。
副業による処分の判例

公務員がブログやSNSが原因で懲戒処分を受ける事例は、実際に数多く報告されています。処分の重さは、その行為の悪質性や社会への影響度によって異なり、軽い順に「戒告」「減給」「停職」「免職」の4段階に分かれています。
例えば、SNS上で特定の個人に対して「死ね」などの暴言を投稿した市職員が「減給」の処分を受けた事例があります。また、職務上の立場を利用して得た情報をブログで公開し、守秘義務に違反した場合は、「停職」などのより重い処分が科される可能性が高いです。
副業関連では、許可なくネットオークションで継続的に利益を得ていた職員が「減給」、病気休職中にライブ配信で収入を得ていた職員が「停職」となったケースなどが報じられています。
ブログでのアフィリエイトや広告収入については、判例として争われた事例は確認されていませんが、無許可で継続的に営利活動を行っていた場合、処分の対象となることが実務上指摘されています。収益額の大小だけでなく、営利活動を継続的に行っていたという事実そのものが問題視されるのです。
処分の量定は、行為の悪質性や継続性、本人の反省の度合い、隠蔽工作の有無などを総合的に考慮して決定されます。軽い気持ちで行った投稿や収益化が、予期せぬ重い処分に繋がる可能性があることを、常に念頭に置く必要があります。
公務員で一番重い処分は何ですか?

公務員に科される懲戒処分の中で、最も重いものは「懲戒免職」です。これは、民間企業における「懲戒解雇」に相当し、職員の意思に関わらず、その身分を強制的に剥奪する極めて厳しい処分です。
懲戒免職は、公金の横領、悪質なハラスメント、飲酒運転による人身事故、長期の無断欠勤など、公務員としての信用を著しく失墜させ、情状酌量の余地がないと判断される重大な非違行為に対して適用されます。
懲戒免職と混同されやすいものに「諭旨免職」がありますが、両者には大きな違いがあります。諭旨免職は、懲戒免職に相当するほどの重大な違反ではないものの、職員としての適格性に問題があると判断された場合に、自発的な退職を促す処分です。
項目 | 懲戒免職 | 諭旨免職 |
---|---|---|
処分の重さ | 最も重い | 懲戒免職より軽い |
退職金 | 原則として全額不支給 | 一部または全額支給されることが多い |
退職理由 | 強制的な免職 | 自己都合退職扱い |
再就職制限 | 2年間は公務員になれない | 制限なし |
社会的影響 | 氏名等が公表され、信用を大きく失う | 比較的軽微 |
懲戒免職は経済的な打撃(退職金の不支給)に加え、その後のキャリアにも深刻な影響を及ぼします。公務員としての自覚を欠いた行動が、取り返しのつかない結果を招くことを示しています。
公務員ブログの運営ルールと法的規制(まとめ)
この記事で解説してきた内容を踏まえ、公務員が安全にブログを運営するための要点を以下にまとめます。
- ブログ運営自体は一律禁止ではない
- 収益化(副業)は法律で原則禁止されている
- 法的根拠は営利企業従事制限と職務専念義務
- 勤務時間中のブログ更新は職務専念義務違反
- 収益化には任命権者の許可が必須
- アフィリエイトや広告収入の許可は極めて困難
- 執筆活動(電子書籍など)は許可の可能性あり
- 無許可の収益化は懲戒処分の対象となる
- 趣味の非営利ブログなら許可申請は不要
- 非営利でも守秘義務と信用失墜行為には注意
- 家族名義でも実質本人が運営すれば名義貸し
- 名義貸しは税務・法務上のリスクが高い
- 副業がバレる主な経路は住民税と内部通報とネット
- 匿名性を徹底し個人特定のリスクを減らす
- 違反した場合の処分は戒告から免職まで様々
- 最も重い処分は退職金不支給の懲戒免職
