内閣の権限ではないものとは?三権分立と地方自治のルールを解説

内閣の権限ではないものとは?三権分立と地方自治のルールを解説

こんにちは、「脱!地方公務員のつぶやき」運営者のようすけです。

ニュースや公務員試験の勉強で内閣の権限ではないものという言葉を耳にして、具体的にどこからどこまでが内閣の仕事で、何ができないことなのか疑問に思ったことはありませんか。

内閣総理大臣といえば国のトップというイメージが強いですが、実は日本国憲法や法律によって、その権限には明確な限界が定められています。三権分立の仕組みや国会との関係、あるいは地方自治体との対等な関係など、意外と知られていないルールがたくさんあるのです。

この記事では、内閣が手出しできない領域について、わかりやすく整理してお伝えします。

この記事で分かること
  • 内閣とその他の機関(国会・裁判所)の役割分担がわかります
  • 総理大臣でも絶対に介入できない「聖域」について理解できます
  • 地方自治体に対して内閣ができないことが明確になります
  • 公務員試験やニュース理解に役立つ権限の境界線が整理できます
目次

内閣の権限ではないものとは?

内閣の権限ではないものと基礎知識

まずは、そもそも内閣や総理大臣が持っている本来の権限と、それが及ばない基本的なラインについて解説します。ここを理解することで、なぜ「できないこと」が存在するのかが見えてくるかなと思います。

日本国憲法における内閣の権限は?

日本国憲法において、内閣は「行政権」の主体として定義されています。具体的には、法律を誠実に執行することや、外交関係を処理することなどが主な仕事ですね。

もう少し噛み砕くと、国会が決めた予算や法律に基づいて、実際に国を動かしていく実動部隊のトップチームといったところでしょうか。憲法73条には内閣の仕事が列挙されていますが、あくまで「法律の範囲内」で動くことが大前提となっています。

憲法73条で定められた主な事務

法律の執行、外交関係の処理、条約の締結、公務員に関する事務、予算の作成、政令の制定、恩赦の決定など。

総理大臣にはどんな権限がありますか?

内閣のリーダーである内閣総理大臣には、内閣を代表して行政各部を指揮監督する権限があります。また、自衛隊の最高指揮監督権を持っているのも総理大臣ですね。

特に強力なのが、国務大臣の「任命権」と「罷免権」です。これは、自分のチームメンバー(大臣)を自由に選び、また辞めさせることができるというもので、内閣の一体性を保つための切り札と言えるでしょう。

しかし、そんな強い権限を持つ総理大臣でも、行政権の外側にある「司法」や「立法」の領域には、手出しができない仕組みになっています。

内閣と内閣総理大臣の権限の違い

内閣と内閣総理大臣の権限の違い

ここで少しややこしいのが、「内閣の権限」と「内閣総理大臣の権限」の違いです。

内閣というのは、総理大臣とその他の国務大臣全員で構成される「合議体(チーム)」のことです。例えば、閣議決定という言葉をよく聞くと思いますが、これはチーム全員の意見が一致して初めて決定できるものです。つまり、総理大臣一人の独断ですべてを決められるわけではないということですね。

一方で、先ほど触れた大臣の罷免などは総理個人の権限です。試験対策などで覚える際は、「チームで決めること」と「リーダー単独でできること」を区別しておくと良いかもしれません。

裁判官の罷免や判決への介入

さて、ここからが本題の「内閣の権限ではないもの」の核心部分です。まず絶対に覚えておきたいのが、司法権への介入禁止です。

どれだけ内閣が「この裁判の判決は気に入らない」と思っても、判決の内容を変更させたり、担当の裁判官をクビ(罷免)にしたりすることは絶対にできません。これは憲法で「司法権の独立」が強く保障されているからです。

ここがポイント!

裁判官を辞めさせる(弾劾する)ことができるのは、国会議員で構成される弾劾裁判所だけです。内閣にはその権限がありません。

もし行政が裁判に口出しできたら、国にとって都合の悪いことはすべて無罪に…なんてことになりかねませんよね。だからこそ、ここは完全にシャットアウトされているのです。

内閣の権限ではないものの具体的範囲

内閣の権限ではないものの具体的範囲

司法以外にも、内閣には手出しができない、あるいは厳しく制限されている領域がいくつかあります。特に国会との関係や、地方自治体との関係性は非常に重要ですので、詳しく見ていきましょう。

法律の制定と国会の承認

「法律を作る」ことは、内閣の権限ではありません。これは国会(立法府)だけの権限です。

内閣は「こんな法律を作りたいです」という案(内閣提出法案)を出すことはできますが、それを審議して成立させるかどうかを決めるのは、あくまで国会議員たちです。つまり、内閣が勝手に新しいルールを作って国民に強制することはできない、というわけですね。

また、予算の決定も国会の議決が必要です。内閣は予算案を作るだけで、財布の紐を握っているのは国会だと言えます。

地方自治体への一方的な指示

地方自治体への一方的な指示

私が地方公務員時代にも感じていたことですが、国(内閣)と地方自治体の関係は「上司と部下」ではありません。現在は「対等・協力」の関係になっています。

したがって、内閣が地方自治体に対して「あれをやれ、これをやれ」と一方的に命令する包括的な指揮監督権は持っていません。国が地方に関与するには、必ず法律の根拠が必要です。

注意点

「法定受託事務(選挙やパスポートなど)」については国が強い関与をすることができますが、自治体独自の「自治事務」については、国は原則として助言や是正の要求までしかできず、強制的な指示はできない仕組みになっています。

内閣の権限である条約の締結と承認

条約の締結そのものは内閣の権限です。外交官が交渉してサインをするシーンをイメージするとわかりやすいですね。

しかし、ここで重要なのが「国会の承認」がないと効力を持たないという点です。内閣が外国と勝手に約束をしてきても、国会が「それはダメだ」と言えば、その条約は国内で完全な効力を発揮できません。

つまり、「締結」はできても「決定」を完結させることはできない、という制限がついているわけです。これも内閣の独走を防ぐための重要なブレーキの一つですね。

会計検査院など独立機関への指揮

行政機関の中にも、内閣の言うことを聞かなくていい「独立した機関」が存在します。代表的なのが会計検査院です。

会計検査院は、内閣が税金を正しく使っているかをチェックする機関です。もし内閣がここを指揮できてしまったら、「無駄遣いは見なかったことにして」と命令できてしまいますよね。それではチェックの意味がありません。

そのため、会計検査院の人事や検査内容について、内閣は指揮監督権を持たないことになっています。同様に、公務員の人事を扱う人事院も内閣からは独立した地位を持っています。

三権分立による内閣の権限の覚え方

三権分立による内閣の権限の覚え方

ここまで見てきた「内閣の権限ではないもの」を整理して覚えるには、三権分立の三角形をイメージするのが一番です。

相手内閣ができること内閣ができないこと(権限外)
国会(立法)解散の決定、法案の提出法律の制定、予算の議決
裁判所(司法)最高裁長官の指名裁判官の罷免、判決への干渉
地方自治体技術的助言、是正の要求根拠法のない指揮命令

「作る(立法)」のは国会、「裁く(司法)」のは裁判所、「実行する(行政)」のが内閣。この役割分担を意識すれば、自然と境界線が見えてくるはずです。

内閣の権限ではないものを正しく理解

今回は「内閣の権限ではないもの」について解説してきました。総理大臣や内閣は非常に大きな力を持っていますが、決して万能ではないことがお分かりいただけたかと思います。

裁判への介入禁止や、国会による承認の必要性、そして地方自治への配慮。これら「できないこと」のリストは、裏を返せば私たち国民の権利や自由を守るための防波堤でもあります。

権力が一箇所に集中して暴走しないよう、あえて「不自由」に作られている。そんな視点でニュースを見てみると、また違った発見があるかもしれませんね。

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