選挙で投票する際、「候補者の漢字を間違えたらどうしよう」「もし書き間違えたら、せっかくの一票が無効票になってしまうのでは?」と不安に感じた経験はありませんか。投票は国民の大切な権利ですが、その方法を誤ると意図が正しく伝わらない可能性があります。
この記事では、投票用紙の正しい訂正方法である二重線の引き方から、選挙で無効票となる漢字やひらがなの扱いの違い、意外と知られていない選挙で無効票になる苗字だけの記入ケース、そして混同されがちな無効票と白票の違いに至るまで、あなたの疑問や不安を解消するための情報を網羅的に解説します。
- 無効票になってしまう書き方の具体的なパターン
- 漢字間違いや書き損じをした際の正しい訂正方法
- どのような場合に有効票または無効票と判断されるかの基準
- あなたの一票を確実に有効にするための実践的な知識
選挙の無効票と漢字の間違い|有効・無効の判断基準

- 公職選挙法に学ぶ投票用紙の書き方と無効例
- 選挙で無効票になる漢字とひらがなの違い
- 苗字だけ書くと無効票になる理由
- 同姓候補者がいる場合の按分票とは
- 無効票と白票の違いを事例で分かりやすく解説
公職選挙法に学ぶ投票用紙の書き方と無効例
選挙における投票は、公職選挙法という法律に基づいて厳格なルールが定められています。したがって、このルールから外れた書き方をすると、あなたの票は無効になる可能性があります。
その理由は、誰に投票したのかという投票者の意思が明確に確認できる必要があるためです。例えば、候補者名以外のメッセージを書き加えたり、複数の候補者名を並べて書いたりすると、投票者の意思を一つに特定できなくなります。これが「他事記載」や「複数記載」として無効票の対象となるわけです。
具体的にどのようなケースが無効になるか、以下の表で確認してみましょう。これらの例を避けることが、あなたの一票を活かすための第一歩となります。
無効票となる主なパターン | 具体例 | 根拠 |
---|---|---|
候補者名以外のことを記載 | 「山田太郎 がんばれ」「佐藤花子さんへ」などのメッセージ | 他事記載とみなされるため |
2人以上の候補者名を記載 | 「山田太郎」「佐藤花子」と並べて書く | どの候補者に投票したか特定できないため |
候補者名を自書していない | パソコンで印字した紙を貼る、ゴム印を使う | 代理投票などを除き、本人が自筆で書く「自書式」が原則であるため |
どの候補者か判別できない | 字が崩れていて読めない、意図不明な記号や落書き | 投票者の明確な意思が確認できないため |
所定の投票用紙を使用しない | メモ用紙や名刺などに書いて投票する | 選挙管理委員会が交付した正規の投票用紙以外は認められないため |
白紙で投票する(白票) | 何も書かずに投票箱に入れる | 投票の意思表示はあるものの、支持する候補者がいないと判断されるため |
選挙で無効票になる漢字とひらがなの違い

候補者名を漢字で書くべきか、ひらがなで書くべきか迷う場合があるかもしれません。この点について、選挙では有権者の意思を最大限尊重する考え方が基本にあります。
このため、候補者名は漢字だけでなく、ひらがなやカタカナで書いても原則として有効票として扱われます。例えば、「山田 太郎」という候補者がいる場合、「やまだ たろう」や「ヤマダ タロウ」と書いても、誰に投票したかが明確に判断できるため問題ありません。
漢字で書いた場合に多少の間違い、例えば「斎藤」を「斉藤」と書いてしまったり、漢字の画数が少し違ったりしても、社会通念上、特定の候補者を指していることが明らかであれば有効とされるケースがほとんどです。
一方で、ひらがなやカタカナは、そもそも漢字のような複雑な誤記が発生しにくいため、より確実に票を投じたい場合に適した方法と考えられます。ただし、あまりにも大きく間違えてしまい、同姓の別候補者と区別がつかなくなるような場合は無効になる可能性もあるため、注意が必要です。
苗字だけ書くと無効票になる理由
投票用紙に候補者の苗字だけを記入した場合、その票の扱いは選挙区の状況によって変わります。必ずしも無効票になるわけではありませんが、リスクが伴う書き方であることは確かです。
もし、その選挙に立候補している候補者の中に、同じ苗字の人物が一人もいなければ、苗字だけの記入でも個人を特定できるため、その票は有効として扱われます。例えば、「山田」という候補者が一人しかいない選挙区で「山田」と書けば、それは「山田」候補への一票と判断されます。
しかし、同じ苗字の候補者が複数人いる場合は、話が全く異なります。例えば、「山田 A子」と「山田 B太」という二人の候補者がいる選挙区で、投票用紙に「山田」とだけ書かれていた場合、開票する側はどちらの「山田」候補に投票したかったのかを特定できません。
このようなケースでは、その一票は特定の候補者の得票にはならず、「按分票」という特殊な扱いを受けるか、状況によっては無効票と判断される場合もあります。
同姓候補者がいる場合の按分票とは

前述の通り、同じ苗字の候補者が複数いる場合に苗字だけを記入すると、「按分票(あんぶんひょう)」として処理されることがあります。これは、無効票とは異なり、投票者の意思を完全に無駄にしないための仕組みです。
按分票の基本的な考え方は、特定できない票を、該当する候補者たちの「有効得票数の比率に応じて分け合う」というものです。これにより、どの候補者への一票か不明確な票も、民意の縮図として選挙結果に限定的に反映させることができます。
具体例を挙げてみましょう。「鈴木」とだけ書かれた票が100票あったとします。そして、選挙区には「鈴木 一郎」候補と「鈴木 花子」候補が立候補しており、彼らのフルネームで書かれた確定票がそれぞれ600票と400票だったとします。
この場合、得票比率は600対400、つまり3対2です。この比率に基づき、「鈴木」票100票が分けられます。
- 鈴木 一郎候補には、100票 × (600 / (600 + 400)) = 60票が加算されます。
- 鈴木 花子候補には、100票 × (400 / (600 + 400)) = 40票が加算されます。
按分票は小数点以下の計算になる場合もあり、最終的な当落に影響を与える可能性もゼロではありません。
無効票と白票の違いを事例で分かりやすく解説
「無効票」と「白票」は、どちらも特定の候補者の得票にはなりませんが、その性質と意味合いには違いがあります。
まず、無効票とは、公職選挙法の定める要件を満たしていない全ての票の総称です。これには、候補者でない人の名前を書いた票、複数の候補者名を書いた票、落書きをした票など、さまざまなケースが含まれます。
白票は、投票用紙に何も記入せずに投票された票を指します。つまり、無効票と白票は「記載内容が不適切なために無効になる票」と「何も記載がないために無効になる票(白票)」という違いがあります。
両者の最も大きな違いは、有権者の意思表示の解釈にあります。例えば、判読不能な文字や他事記載がある無効票は、単なる記載ミスやルール違反と見なされる場合が多いです。
一方で、白票は「投票には来たが、支持したい候補者や政党がいない」という、有権者による積極的な意思表示だと解釈されることがあります。実際に、政治への関心が低いわけではないものの、選択肢に不満を持つ有権者が白票を投じるケースは少なくありません。\
選挙の無効票と漢字の間違い|正しい訂正方法と注意点

- 投票用紙を訂正する二重線の正しい引き方
- 投票用紙の書き損じは塗りつぶしで訂正可?
- 投票用紙は消しゴム使用で無効票になる?
- 不安な場合は投票用紙の交換も可能
- 選挙の無効票や漢字間違いを防ぐポイント
投票用紙を訂正する二重線の正しい引き方
投票用紙への記入を間違えてしまった場合、最も確実で推奨されている訂正方法が「二重線を引く」ことです。この手順を守れば、あなたの訂正は有効と認められ、大切な一票が無駄になることを防げます。
その理由は、二重線による訂正が、誰の目から見ても「元の記載を明確に打ち消し、新しい記載を優先する」という意思表示として最も分かりやすいためです。開票作業は迅速かつ正確に行われる必要があり、一目で意図が伝わる訂正方法が求められます。
正しい手順は以下の通りです。
- まず、間違えてしまった候補者名や政党名の全体に、はっきりと2本の平行線(または1本線でも訂正の意思が明確であれば有効となる場合があります)を引きます。
1本線や斜線でも訂正の意思が明確であれば有効票とされることがありますが、より明確にするためには2本線で抹消することが推奨されます。 - 次に、その二重線のすぐ横や、空いているスペースに、正しい候補者名や政党名を丁寧に記入します。訂正後の文字が記載欄の枠からはみ出してしまっても、誰に投票したか判読できれば問題ありません。
このシンプルな手順を守ることで、あなたの訂正の意思は明確に伝わり、正しくカウントされることになります。
投票用紙の書き損じは塗りつぶしで訂正できる?
候補者名を書き損じた際、とっさに黒く塗りつぶして訂正しようと考える方がいるかもしれません。しかし、この方法は推奨されていません。
なぜなら、塗りつぶしてしまうと、その下に何が書かれていたのか、そしてどのような意図で訂正されたのかが不明確になるからです。最悪の場合、判読不能と判断されたり、あるいは意図的な目印や符号とみなされたりして、票全体が無効になってしまうリスクがあります。
前述の通り、各自治体の選挙管理委員会が一貫して推奨しているのは、二重線による訂正です。これは、元の記載を打ち消した上で、新たに正しい記載をしたことが明確に分かるためです。塗りつぶしでは、この「訂正した」というプロセスが伝わりにくくなります。
せっかく正しい候補者名を書こうとしても、訂正方法が不適切だったために無効票となっては意味がありません。したがって、書き損じた場合は塗りつぶすのではなく、必ず二重線で抹消し、その横に正しい名前を記入するようにしてください。
消しゴム使用で無効票になる?

投票所に備え付けられている筆記具は鉛筆ですが、多くの場合、消しゴムは置かれていません。そのため、「持参した消しゴムで消しても良いのか」と疑問に思うかもしれません。結論から言うと、消しゴムの使用は避けるべきです。
その理由は、日本の選挙で使われる投票用紙の多くが「ユポ」と呼ばれる合成紙で作られていることに関係します。この用紙は、鉛筆で書きやすく、折り曲げてもすぐに開くため開票作業に適していますが、表面を消しゴムで強くこすると、紙が摩耗して毛羽立ったり、黒く汚れたりしやすい性質を持っています。
消した跡が汚れて文字が判読不能になったり、きれいに消しきれずに元の文字がうっすらと残って二重に記載したように見えたりすると、無効票と判断される可能性があります。
このように、良かれと思って消しゴムを使っても、かえって票を無効にしてしまうリスクを高めることになります。書き間違えた際は、消しゴムで消そうとせず、公式に推奨されている二重線での訂正を行うか、投票用紙の交換を申し出ることが賢明です。
不安な場合は投票用紙の交換も可能
書き間違えた箇所が多かったり、二重線で訂正しても判読しにくくなりそうだと感じたりした場合、無理に訂正を続ける必要はありません。有権者には、新しい投票用紙に交換してもらう権利があります。
これは、有権者が自身の投票の意思を、明確かつ間違いのない形で表明できるように保障するための制度です。訂正が重なると、開票する側も判断に迷う可能性が出てくるため、きれいな用紙で書き直すことが、結果的にお互いにとって最善の策となります。
投票用紙の交換を希望する場合は、記入した用紙を投票箱に入れてしまう前に、投票所の係員(投票立会人や職員)に「書き間違えたので、新しい用紙と交換してください」と申し出るだけです。理由を詳しく聞かれることもなく、速やかに新しい用紙を渡してもらえます。
せっかくの一票を、訂正の不備で無効にしてしまうのは非常にもったいないです。少しでも訂正に不安を感じたら、ためらわずに投票用紙の交換を申し出ましょう。
選挙の無効票や漢字の間違いを防ぐポイント
この記事で解説してきた、選挙における無効票や漢字間違いを防ぐための重要なポイントを、最後に箇条書きでまとめます。あなたの大切な一票を正しく投票するために、ぜひ参考にしてください。
- 投票用紙には候補者名または政党名のみを正確に記載する
- 候補者名は投票所に掲示されている正式名称で書くのが最も確実
- 漢字に自信がなければ、ひらがなやカタカナで書いても有効
- 多少の誤字や書き損じは、誰に投票したか分かれば有効になることが多い
- 応援メッセージや記号など、候補者名以外のことは書かない
- 複数の候補者名を一つの用紙に書くと無効になる
- 苗字だけの記入は、同姓の候補者がいると按分票や無効票のリスクがある
- 書き間違えた場合は、塗りつぶしたり消しゴムで消したりしない
- 訂正する際は、間違えた箇所に二重線を引き、横に正しく書き直す
- 二重線で訂正しても、枠からはみ出しても問題ない
- 訂正が多くなり分かりにくくなった場合は、投票所の係員に申し出て用紙を交換してもらう
- 投票箱に入れる前であれば、投票用紙の交換は何度でも可能
- 白票は無効票の一種だが「支持者なし」という意思表示にもなる
- 有効か無効かの最終判断は、投票者の意思が明確に読み取れるかどうかで決まる
- ルールを理解し、落ち着いて丁寧に記入することが最も大切
