「専業主婦の年金はずるい」「優遇されすぎ」と感じたことはありませんか?実際に、会社員や自営業の配偶者と比べて、専業主婦が年金を払わずに将来年金を受け取れる仕組みには、さまざまな意見があります。こうした制度は「第3号被保険者」として扱われることが背景にありますが、その内容を正しく理解している人は多くありません。
また、専業主婦の立場で、国民健康保険と扶養のどちらが得かといった疑問を持つ人も増えており、働き方や年収の違いで将来の家計に差が出る可能性があります。一方で、今後この制度が見直され、廃止や縮小が議論されていることも事実です。
この記事では、専業主婦の年金制度の仕組みと、ずるいと言われる理由についてわかりやすく解説します。制度の背景や家計への影響、今後の動きまでしっかりと整理してお伝えしますので、ぜひ最後までご覧ください。
- 専業主婦の年金制度がずるいと感じられる理由
- 第3号被保険者制度の仕組みと対象者の条件
- 共働き世帯との制度上の違いや税制面の優遇
- 今後の制度見直しや廃止の可能性と影響
専業主婦の年金がずるいと言われる理由とは

- 専業主婦は年金を払わなくていいの?
- 専業主婦の年金は毎月いくらですか?
- ずっと専業主婦だった人は年金いくらもらえる?
- 専業主婦が優遇されすぎと言われる理由
- 専業主婦の年金はいつ廃止になりますか?
専業主婦は年金を払わなくていいの?
専業主婦が年金を払わなくてもいい理由は、「第3号被保険者制度」という仕組みがあるからです。これは、会社員や公務員の配偶者である専業主婦(20歳以上60歳未満)を対象とした制度です。配偶者の収入に扶養されていて、従業員50人以下の企業に勤める場合は年収が130万円未満、従業員51人以上の企業に勤めて週20時間以上働くなど一定の条件を満たす場合は年収が106万円未満であれば、自分で保険料を支払う必要はありません。
そのかわり、夫が加入している厚生年金から負担される形になっており、専業主婦本人の加入期間として年金額に反映されます。このしくみのおかげで、将来の老後の基礎年金も受け取ることができます。
ただし、扶養から外れた場合は自分で保険料を払う必要が出てくるため注意が必要です。また、専業主婦が短時間パートで働く場合でも、年収の上限を超えるとこの制度が使えなくなる可能性があります。働き方によって制度の対象から外れる場合もあるため、収入の確認と手続きが大切です。
専業主婦の年金は毎月いくらですか?

専業主婦が将来もらえる年金は、基本的に「老齢基礎年金」のみです。満額の受給条件は、20歳から60歳までの40年間ずっと保険料を納めたか、または第3号被保険者として制度に該当していた場合となります。
2024年度の満額は、年額で約81万6,000円、月にするとおよそ6万8,000円です。ただし、途中で未納期間や制度から外れていた時期があると、その分は減額されてしまいます。
実際に受け取っている人の平均額は、月5万4,000円から5万6,000円ほどとなっています。これは学生時代や結婚前など、加入していなかった時期があるためです。
標準モデル世帯では、夫が会社員で厚生年金を受給し、妻が専業主婦として基礎年金のみを受け取ります。その合計は月23万円ほどになりますが、妻の受給額はあくまで基礎年金のみとなる点に注意が必要です。
専業主婦が優遇されすぎと言われる理由
専業主婦が「優遇されすぎ」と言われる理由は、税金や年金の制度上にあります。まず、夫の年収だけで家庭が成り立つ場合、妻が働かずにいても国民年金保険料を払わずに済むことがあります。これが第3号被保険者制度です。
また、妻の年収が123万円以下なら夫に「配偶者控除」がつき、所得税や住民税が安くなる仕組みもあります(2025年からの基準)。これらの制度により、働かないことで逆に家計が得をする場合も出てきます。
一方、共働き世帯や自営業の妻は保険料を自分で払わなければならず、「ずるい」と感じる人もいます。また、年収の「壁」があるため、もっと働きたくても働けないという問題も起きています。
これらの制度は昔の家庭モデルを前提に作られており、時代に合わなくなってきているという指摘も増えています。制度の見直しが求められる理由はここにあります。
専業主婦の年金はいつ廃止になりますか?

専業主婦の年金である「第3号被保険者制度」は、2025年にすぐ廃止されるわけではありません。政府は2025年の国会で見直し案を話し合う予定ですが、現段階では「縮小」や「条件の変更」にとどまりそうです。
1985年にこの制度ができてから、長い間「保険料を払わずに年金がもらえるのは不公平だ」との声が続いてきました。2024年には厚生年金の加入対象が広がり、パート主婦も対象になるケースが増えてきています。
これから数年で第3号の対象者は減る可能性がありますが、すぐ全員が保険料を払うようになるわけではないでしょう。今後は5年ごとの見直しの中で、段階的に廃止されるかどうかが決まっていく見通しです。
いきなり変わる心配は少ないですが、自分の働き方や年収によって影響を受けるため、制度の動きを定期的にチェックしておくことが大切です。
専業主婦の年金がずるいと感じる人への制度解説

- 専業主婦の年金の増やし方は?
- 国民健康保険と扶養のどちらが得か?
- 夫の死亡時|手続きと支給額
- 主婦年金が廃止されるとどうなる?家計への影響
- 老後資金を試算|専業主婦はいくら必要?
- 専業主婦の年金がずるいと言われる理由とは(まとめ)
専業主婦の年金の増やし方は?
専業主婦でも将来もらえる年金を増やす方法はいくつかあります。その中でよく使われているのが「任意加入」「付加年金」「iDeCo(イデコ)」の3つです。
まず、60歳を過ぎて年金の加入期間が足りない人は「任意加入」で保険料を追加で払うと、年金が増えます。この期間に「付加年金」もつけると、月400円の追加で年金が毎年200円ずつ上乗せされる仕組みです。ただし、付加年金に加入できるのは自営業やその配偶者などの「第1号被保険者」に限られ、会社員や公務員の配偶者で扶養に入っている「第3号被保険者」の専業主婦(夫)は付加年金に加入できません。
さらにiDeCoを使えば、自分で積み立てたお金を将来の年金として受け取れます。運用益が非課税になるので、節税しながら老後資金をつくることができます。
ただし、iDeCoは60歳まで引き出せません。また、付加年金は国民年金基金に入っていると使えないため、注意が必要です。
これらの方法をうまく組み合わせれば、条件に合う専業主婦でも年金額をアップさせることができます。長い目で見て備えるのが安心です。
国民健康保険と扶養のどちらが得か?

パートなどで働く人が増える中、「国民健康保険」と「扶養のまま」のどちらがよいか悩む人も多いです。ポイントは保険料と受けられるサービスのバランスにあります。
まず、年収が130万円未満であれば、一般的に夫の健康保険の扶養に入ることができ、保険料はかかりません。ただし、130万円を超えると原則として扶養から外れて自分で国民健康保険に入る必要がありますが、勤務先や健康保険組合の条件によって異なる場合があります。
国民健康保険に入ると保険料は発生しますが、医療費が軽くなる制度や、出産育児一時金なども利用できます。また、支払った保険料は所得控除の対象になるため、税金を減らせる場合もあります。
年収が150万円以上になると、扶養を外れて働いたほうが手取りが増えるケースもあります。ただし、収入が少ないうちは扶養のままの方が安心です。自分の年収やライフプランに合わせて判断しましょう。
夫の死亡時|手続きと支給額
夫が亡くなった場合、専業主婦でも「遺族年金」を受け取れる可能性があります。これは生活を守るための仕組みで、2つの種類があります。
1つ目は「遺族基礎年金」で、子どもがいる場合に支給されます。たとえば、18歳未満の子が1人いれば、年間で約80万円ほど受け取れる見込みです。2人目以降の子どもには加算があります。なお、遺族基礎年金には引き続き収入要件があります。
2つ目は「遺族厚生年金」で、夫が厚生年金に入っていたときに対象となります。受け取れる額は、夫が払ってきた年金の一部にあたります。子どもがいない場合はこちらのみになります。また、2025年4月からの制度改正により、子どもがいない30歳未満の配偶者の場合は、遺族厚生年金の支給が5年間の有期給付となります。今後、段階的に対象年齢が40歳未満などへ拡大される予定です。なお、遺族厚生年金については、これまであった収入要件(年収850万円未満など)は撤廃されました。
申請には、住民票や戸籍などの書類が必要です。年金事務所に行き、必要な用紙をもらって手続きを進めます。手続きは早めにすることで、支給までの時間を短くできます。
不安な場合は、事前に年金事務所に相談しておくと安心です。
主婦年金が廃止されるとどうなる?家計への影響

もし専業主婦の年金制度が廃止された場合、家計には大きな変化が生まれます。今までは夫の扶養に入っていれば年金を払わずに将来の年金をもらえる制度がありました。これがなくなると、専業主婦も毎月1万6千円ほどの保険料を自分で払う必要が出てきます。
たとえば、20年間にわたって年金を納めた場合、単純に見積もっても支払う額は約384万円です。これを家計でまかなうには、夫の収入アップやパート収入の確保が必要になります。もし準備が足りなければ、老後の生活費にも影響します。
また、共働きを選ぶ家庭が増えるかもしれません。そうなると子育てや家事の負担も分け合う必要が出てきます。今のうちに収支を見直し、もしもの制度変更にそなえる準備が重要でしょう。
老後資金を試算|専業主婦はいくら必要?
老後にゆとりある生活を送るためには、年金だけでは足りません。特に専業主婦だった人は、自分がもらえる年金が少ないため、早めに準備しておくことが安心につながります。
総務省の調査では、夫婦2人の月の生活費は約26万円です。一方で、2人あわせた年金は約22万円と言われています。つまり毎月4万円ほど不足します。これが30年続くと約1,440万円の貯金が必要になる計算です。
さらに、医療費や介護など、思わぬ出費も考えられます。生活費に少し余裕を持たせて、約2,000万円程度の老後資金が目安になるでしょう。iDeCoや積立NISAなどの制度を使って、計画的に貯めていくのがポイントです。
専業主婦の年金がずるいと言われる理由とは(まとめ)
記事のポイントをまとめます。
- 専業主婦は第3号被保険者制度により保険料を払わずに年金を受け取れる
- 第3号は夫が厚生年金に加入している場合に適用される
- 年収が一定以下であれば自分で保険料を払う必要がない
- 保険料は夫の厚生年金から支払われている形になる
- 老齢基礎年金の満額は月約6万8,000円(2024年度)
- 40年間制度に該当していれば満額の年金がもらえる
- 実際の受給額は平均で月5万4,000円~5万6,000円ほど
- 専業主婦は配偶者控除により税金面でも優遇されている
- 優遇制度の背景には昭和の家庭モデルがある
- 共働き家庭と比べて不公平と感じる人が多い
- 制度は段階的に見直される見通しだが、すぐには廃止されない
- iDeCoや任意加入を活用すれば専業主婦でも年金を増やせる
- 第3号の対象外になると自分で保険料を払う必要が出てくる
- 年金だけでは老後資金が不足しやすく、貯蓄が重要になる
- 制度の変化に備え、早めの情報収集と対策が求められる
