「公務員から公務員へ転職したら、退職金はそのまま引き継げるの?」と不安に感じていませんか。
実は、引き継ぎには厳しい条件があり、知らずに手続きを進めると数百万円単位で損をする可能性があります。
本記事では、退職金を通算するための条件や調べ方を解説します。転職後も退職金で後悔しないために、ぜひ最後までご一読ください。
- 自己都合退職での退職金通算は、転職先の条例によって異なる。
- 通算には退職と採用の間に空白期間を1日も作らないことが必須。
- 給与に影響する職歴加算と、退職金の通算は全く別の制度である。
公務員から公務員への転職|退職金引き継ぎの可否

「公務員同士の転職なら、退職金は当然引き継がれる」と考えるのは間違いです。正しくは「退職手当の通算制度」という仕組みですが、無条件で使えるわけではありません。制度の実態を知らずに転職を進めると、将来もらえるお金に大きな差が出る恐れもあります。
退職手当の通算制度により可能になる
退職手当の通算制度は、法律や自治体の条例に基づいた仕組みです。前の職場で働いた期間(勤続年数)を転職先に合算して、退職金を計算できます。
国家公務員の場合、働く期間に応じて支給率が決まっており、一定の年数に達するまでは1年あたりの金額が上がっていく設計です。その後、上限となる最高支給月数に達します。
同じ期間を働いたとしても、通算できるかどうかで最終的な受取額には数百万単位の差が生じるケースも珍しくありません。老後の資金を左右する、非常に重要な制度といえるでしょう。
自己都合退職は割愛と扱いが異なる
退職の形によって、制度が適用されるかどうかは根本的に変わります。「割愛(かつあい)」と「自己都合退職」の違いを整理しました。
| 退職の形態 | 特徴 | 通算の可否 |
| 割愛(かつあい) | 自治体同士の話し合いによる人事異動 | 原則として認められる |
| 自己都合退職 | 自分の意思で試験を受けて転職する | 自治体のルールにより判断が分かれる |
最近は人手不足を背景に、自己都合の転職者にも通算を認める自治体が増えてきました。一方で、独自のルールで制限をかけている自治体も依然として少なくありません。自分がどのような形式で転職するのかを正しく理解し、事前に現地のルールを確かめておきましょう。
退職金を引き継ぐための絶対条件

条例で通算が認められていても、実務上の条件を一つでも満たさなければ権利を失います。知らなかったでは済まされない落とし穴が2つあるため、次の内容をかならず確認してください。
採用日までの無職期間をゼロにする
前の職場の退職日と、新しい職場の採用日の間に1日も休みを挟んではいけません。法律や条例で「引き続いて勤務した」と認められる必要があるからです。具体的には「3月31日に退職し、4月1日に採用される」といった日程を組みましょう。
休日は発令上連続しているとみなされますが、自分の都合で採用日を後ろにずらすと、通算の権利を失う恐れがあります。空白期間の数え方は自治体ごとに異なる場合があるため、日程については事前に人事担当者と相談しておくと安心です。
前職の退職時に退職金を受け取らない
制度を利用するには、退職時に金銭を受け取らないのが原則です。もし受け取った後でも、お金を返せば通算できる救済措置はありますが、手間や期限を考えると避けるべきでしょう。
手続きの段階で、現在の職場の人事担当者へ「退職手当の通算を希望する」と明確に伝えてください。内定が出た時点で早めに確認しておけば、より確実です。 手続きが進んでからでは手遅れになる可能性が高いため、合格通知を受け取ったらすぐに行動しましょう。
ちなみに、条例の内容は応募前から自分で調べられます。具体的な手続きは、合格後の採用説明などの場で確認するのが現実的といえます。
退職金の通算と職歴加算を区別する重要性

「給与の引き継ぎ(職歴加算)」と「退職金の通算」を同じ制度だと誤解する方は少なくありません。採用条件が充実して見えても、退職金の通算が保証されているとは限らないためです。転職前に、かならず両方の制度を別々に確認しておきましょう。
給与に影響する職歴加算の仕組みを把握する
職歴加算とは、過去の経験を評価して新しい職場での基本給(号給)を決める際に、前職の期間を上乗せする仕組みです。
民間企業での経験をどれくらい評価するかは、自治体によって差が出ます。近年は人手不足を背景に、民間からの転職者に対して評価基準を見直す自治体も増えてきました。転職後すぐに給与水準が上がりやすい点は、経験者採用ならではの魅力といえるでしょう。
退職金の通算とは別制度であることを知る
職歴加算で基本給が高くなっても、退職金の計算に使う勤続年数が合算されるわけではありません。退職金の通算は、条例という独自のルールに基づいた別の制度だからです。
たとえばA市で6年働きB市へ転職した場合、職歴加算によってB市での給与にはA市の経験が反映されます。しかし、退職金の通算が認められないと、B市での勤続年数はゼロから数え直しです。
前職の期間が長い場合、将来受け取る退職金に数百万円もの差が出るかもしれません。入職前に両制度のチェックが、将来の後悔を防ぐ鍵となります。
転職先の退職手当条例を調べる手順

退職金が通算されるかどうかは、採用される自治体が定める「退職手当条例」の内容で決まります。ネット上の計算シミュレーションは参考程度にとどめ、公式情報を確かめるのが確実です。
志望先自治体の例規集をネットで検索する
各自治体は、条例や規則をまとめた「例規集」をホームページで公開しています。検索サイトで「○○市 例規集」や「○○県 例規集」と入力すれば、多くはトップページに見つかるはずです。
ページを開いた後は、サイト内の検索窓に「退職手当」と打ち込んで探すとスムーズに見つかります。カテゴリから探すときは、以下の項目を目安にしましょう。
- 職員
- 給与・退職手当
- 人事・服務
カテゴリ名は自治体ごとに違いますが、誰でも無料でチェックできます。
退職手当に関する条例の項目を確認する
例規集から「職員の退職手当に関する条例」を見つけたら、「引き続いて職員となった者」や「通算」という言葉が含まれる規定を探してください。
自己都合で退職した人が対象に含まれているか、例外ルールがないかが大切なポイントです。
もし内容が難しいと感じたら、採用先の人事課へ直接聞いてみるのが一番です。「退職金の通算について知りたい」と伝えれば、担当者が正確に教えてくれます。
応募前に問い合わせるのが不安な場合は、合格後の手続きで確認しても遅くはありません。
転職活動のリスクを抑える方法

退職金の制度調査と並行して、現職でのトラブル回避や転職後の後悔を防ぐ準備も進めましょう。お金の損得だけでなく、職場環境やキャリアの将来性を含めた総合的な判断が欠かせません。
公務員から公務員の転職がばれるのを防ぐ
転職活動が今の職場に知れわたると、業務に支障が出たり人間関係のトラブルに発展したりする恐れがあります。採用試験のために有給休暇を取る際、具体的な理由まで詳しく説明する必要はありません。
内定が決まるまでは、職場内で転職の意思を明かさないのが賢明でしょう。円滑な引き継ぎを意識して現在の業務に集中する姿勢が、転職後の評判にもつながります。
公務員から公務員の転職による後悔を防ぐ
転職先のルールで退職金の通算(合算)が認められない場合、そのまま移るか現職に留まるかの選択を迫られます。その際は、通算できない場合の受取額と、転職で得られるメリット全体を比較してみてください。
たとえば勤続6年ほどの若手であれば、自己都合退職の支給率は低く、受取額もそれほど多くありません。「通算できないと将来の受取総額が下がる」という事実を重く受け止めたうえで、転職先での給与の伸びしろや生涯年収を冷静に見積もりましょう。
以下の視点をバランスよく考慮し、転職の価値を判断するのが重要です。
- 年収の変化
- 職場の雰囲気や環境
- ワークライフバランス(私生活との調和)
- 将来のキャリアパス
これらの観点を総合的に考慮することが、後悔しない選択につながります。
公務員から公務員への転職と退職金の引継ぎ(まとめ)
公務員間の転職で退職金を引き継ぐには、転職先の条例確認と空白期間ゼロの徹底が欠かせません。制度の全体像を正しく理解した上で、確実な情報に基づいて準備を進めてください。
押さえるべき重要な点は以下の3つです。
- 退職日と採用日の間に空白期間を1日も作らないこと
- 前職の退職時に退職金を受け取らず人事担当者に通算希望を伝えること
- 職歴加算(給与)と退職金の通算はそれぞれ別制度として個別に確認すること
志望先の自治体ホームページで公開されている例規集を調べ、退職手当条例の内容を自分の目で確認しましょう。
条文の解釈に迷う部分があれば、採用先の人事課への問い合わせをためらわないでください。割愛と自己都合の違いを正しく理解し、確実な情報に基づいた準備が転職後の後悔を防ぎます。


