近年、公務員不足が深刻な問題となっています。特に地方自治体では、採用希望者が減少し、業務量が増加することで、人手が足りない状況が続いています。その結果、業務の負担が大きくなり、公務員を辞めたいと感じる理由も増えています。
また、公務員は安定した職業と思われがちですが、実際には若手社員が潰れるほどの過重労働や住民対応のストレスを抱えていることもあります。特に、経験の浅い職員に業務が集中し、長時間労働が続くことで心身に大きな負担がかかるケースも少なくありません。
さらに、近年の離職理由を見ると、給与や待遇の不満だけでなく、業務量の多さや人間関係の悩みが影響していることが分かります。人手不足が進むほど、一人あたりの業務負担が増え、公務員の働き方そのものが変化しつつあります。本記事では、公務員不足の原因や影響、今後の対応策について詳しく解説していきます。
- 公務員不足が深刻化している理由と背景
- 公務員の人手不足による影響と働き方の変化
- 若手公務員が辞めたいと感じる主な原因
- 公務員不足を解決するための対策や今後の見通し
公務員不足が深刻化する背景とは?

- 地方公務員の人手不足はなぜ起きているのか?
- 人手不足で辞めたいと感じる理由
- 地方公務員の内定辞退率は?
- 公務員の若手社員が潰れる要因
- 公務員の離職理由と実態
地方公務員の人手不足はなぜ起きているのか?
地方公務員の人手不足は、全国の自治体で深刻な問題となっています。その背景には、いくつかの理由があります。
採用希望者の減少
公務員試験の受験者数が年々減少しており、特に地方では応募者が少なくなっています。これは、少子化の影響に加え、民間企業の賃金が上昇し、公務員より魅力的な職場が増えているためです。
業務の負担増加
行政サービスの範囲は広がっており、福祉や防災、デジタル化など新しい業務が増えています。しかし、人員の増加が追いついておらず、一人当たりの業務負担が大きくなっているのが現状です。
財政の制約
多くの自治体では財政が厳しく、新たに職員を雇う余裕がありません。そのため、人員削減が続き、職場の負担が増えています。特に、過疎地域では公務員の人数が減る一方で、高齢者向けの行政サービスのニーズが増えているため、業務のバランスが取れなくなっています。
このような要因が重なり、地方公務員の人手不足が深刻化しています。
人手不足で辞めたいと感じる理由

公務員の人手不足が進む中、「辞めたい」と感じる職員も増えています。その主な理由を見ていきましょう。
過重労働が続く
公務員の仕事は安定していると考えられがちですが、実際には長時間労働が常態化しています。特に、地方自治体では人手が足りないため、一人ひとりの業務負担が大きくなり、休日でも対応しなければならないこともあります。
給与が民間より低い
公務員の給与は、民間企業と比較して必ずしも高いとは言えません。特に、若手職員の場合、残業が多くても手当が十分に支給されないことがあり、モチベーションの低下につながっています。
住民対応のストレス
行政サービスは住民に直接関わるため、窓口業務などではクレーム対応が多くなります。理不尽な要求や苦情に日々対応することが精神的な負担となり、離職を考える職員も少なくありません。
このような理由から、公務員を辞めたいと考える人が増えています。働き方の改善や人員補充が急務となっているのが現状です。
地方公務員の内定辞退率は?

近年、地方公務員の内定辞退率が高まっている背景には、いくつかの要因が考えられます。特に、北海道庁では内定辞退率が60%を超える年もあり、深刻な状況となっています。
内定辞退の主な要因
- 転勤の多さ
都道府県庁では広範囲な地域への転勤が避けられず、これを敬遠する傾向があります。特に北海道のように広大な地域を持つ自治体では、転勤範囲の広さが内定辞退の一因となっています。 - 地元志向の高まり
近年、受験者はより小さな自治体や地元の市町村を選ぶ傾向が強まっています。これは、地域に密着した仕事を希望する志向が影響しています。 - 他自治体や国家公務員との競合
東京都や23区、国家公務員の内定を受け、そちらに流れる人も多い状況です。仕事内容の違いや勤務地の希望が影響しています。
内定辞退率の具体例
以下は、いくつかの自治体における内定辞退率の例です。
自治体名 | 内定辞退率 |
---|---|
北海道庁 | 約60%以上 |
埼玉県 | 約35% |
札幌市 | 約21.8% |
さいたま市 | 約31.0% |
横浜市 | 約33.2% |
名古屋市 | 約14.2% |
大阪市 | 約28.2% |
福岡市 | 約14.3% |
地方公務員の内定辞退率の上昇は、転勤の多さや地元志向の高まり、他自治体や国家公務員との競合など、複数の要因が絡み合っています。自治体は、これらの要因を踏まえ、内定者の確保や魅力向上に向けた取り組みが求められています。
公務員の若手社員が潰れる要因

公務員の若手が「潰れる」と言われる背景には、仕事の厳しさや職場環境の問題があります。特に人手不足の自治体では、若手職員の負担が大きくなりやすいです。
若手公務員が抱える問題
- 過重労働
新卒で採用された職員でも、ベテラン職員並みの仕事を求められることがある。特に地方では人手が足りず、休日出勤が増えることも。 - 精神的な負担
住民対応が厳しく、クレーム処理がストレスになる。特に窓口業務や福祉関連の部署は精神的な負担が大きい。 - スキル習得の難しさ
ジョブローテーションにより、専門性が身につきにくい。経験を積みたくても、異動が多いため難しい状況にある。
若手職員の離職が増えている
過重労働や精神的ストレスにより、公務員を辞める若手が増えています。特に、仕事とプライベートのバランスが取れず、体調を崩すケースも少なくありません。
改善策の必要性
職員の負担を減らすには、業務の効率化やテクノロジーの活用が重要です。RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入し、単純作業の負担を減らす自治体も増えています。また、メンタルケアの充実や働き方の柔軟性を高める取り組みも求められています。
公務員の離職理由と実態

公務員の離職は近年増加傾向にあり、特に若手の退職が目立っています。安定した職業とされる公務員ですが、なぜ辞める人が増えているのでしょうか。
主な離職理由は以下の3つです。
- 業務の多さと人手不足
公務員の仕事は多岐にわたります。窓口業務だけでなく、書類作成や住民対応、地域のイベント運営まで幅広く対応しなければなりません。しかし、人員が不足しているため、一人あたりの負担が大きくなり、精神的・肉体的に疲れ果ててしまう人も少なくありません。 - 長時間労働と休日の少なさ
特に地方公務員は、住民の生活を支える仕事が多く、繁忙期には残業や休日出勤が増えることがあります。勤務時間が長くなることで、プライベートの時間が削られ、ワークライフバランスが崩れやすいのが実情です。 - 給与と待遇への不満
公務員の給与は安定していますが、昇給のペースは遅く、業務量に見合わないと感じる人もいます。また、民間企業の賃上げが進む中で、公務員の給与は伸び悩んでおり、より良い条件を求めて転職する人も増えています。
このような問題により、公務員の離職は今後も続くと考えられます。人員を増やし、業務の負担を減らす対策が必要でしょう。
公務員不足への対応と今後の展望

- 人手不足の解決策
- 公務員の待遇は本当に安定?
- 公務員がリストラされないのはなぜ?
- 人手不足で公務員の業務はどう変化?
- 公務員不足への対応と今後の展望(まとめ)
人手不足の解決策
地方公務員の人手不足は深刻化していますが、いくつかの対策が考えられます。効果的な方法を紹介します。
業務の効率化
多くの自治体では、業務のデジタル化が進められています。特に、AIやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入し、書類作成やデータ入力などの単純作業を自動化する動きが活発です。これにより、職員の負担を軽減し、より重要な業務に集中できる環境を作れます。
非正規職員の処遇改善
地方公務員の業務を支える非常勤職員は多いですが、給与や待遇が安定していないことが問題視されています。時給の引き上げや雇用の安定化を進めることで、より多くの人が働きやすくなり、人材の確保につながるでしょう。
採用活動の見直し
公務員試験の柔軟化や、民間経験者の採用拡大も必要です。試験日程の変更や、社会人経験者向けの枠を増やすことで、多様な人材を確保できる可能性があります。
こうした対策を組み合わせることで、地方公務員の人手不足を改善し、より良い行政サービスを維持できるでしょう。
公務員の待遇は本当に安定?

公務員は安定した職業と言われますが、最近は変化が見られます。待遇が本当に安定しているのか、詳しく見ていきましょう。
給与の変動と賃金の見直し
公務員の給与は民間企業と比べて安定しているものの、物価上昇や民間の賃上げと比較すると上がりにくい傾向があります。2024年の人事院勧告では平均2.76%の昇給がありましたが、民間の5%超の賃上げと比べると低めです。
雇用の安定性
公務員は解雇されにくい職業ですが、近年では一部の職種でリストラに近い動きも見られます。自治体の財政難による定員削減や、契約職員の雇い止めが増えているため、絶対に安泰とは言えません。
福利厚生の充実
育児休暇や年次有給休暇など、民間よりも充実した制度が整っています。しかし、手当の見直しや地域による格差が広がっており、すべての公務員が同じ待遇を受けられるわけではありません。
公務員の待遇は以前ほどの安定感はなく、今後の社会情勢によって変化する可能性が高いでしょう。
公務員がリストラされないのはなぜ?

一般的に、公務員はリストラされないと言われます。その理由を詳しく見ていきましょう。
法律による雇用の保護
公務員は「国家公務員法」や「地方公務員法」によって守られています。これらの法律では、職員の解雇は厳しく制限されており、民間企業のように業績悪化を理由に人員削減することはできません。特に「分限免職」と呼ばれる解雇の制度はありますが、適用されるケースは非常に少ないのが現状です。
公共サービスの維持が必要
公務員は、行政サービスを提供する役割を担っています。たとえば、役所の窓口業務や警察、消防、学校などの仕事は、景気の影響を受けずに安定して提供されるべきものです。そのため、大規模なリストラは行われません。
行政改革による変化
一方で、財政難や業務の効率化を目的とした行政改革が進んでおり、希望退職の勧奨や非正規職員の雇い止めといった形で、公務員の数を調整する動きも見られます。つまり、直接的なリストラが行われなくても、間接的に人員削減が進んでいるのです。
公務員は法律上リストラされにくいものの、将来的な雇用環境は変わる可能性があります。実際には、特定の条件下で「分限免職」や「希望退職」が行われることもあり、完全にリストラがないわけではありません。
人手不足で公務員の業務はどう変化?

公務員の人手不足が深刻化しており、業務にも影響が出ています。具体的にどのような変化が起きているのかを解説します。
一人当たりの負担が増加
人手が足りないため、一人の職員が担当する業務の範囲が広がっています。たとえば、住民対応をする窓口業務では、少ない人数で多くの人を対応しなければならず、待ち時間が長くなるケースも増えています。
業務のデジタル化が進行
人手不足を補うために、行政のデジタル化が急速に進んでいます。例えば、東京都では2024年3月末時点で行政手続のデジタル化率が78.9%に達しており、多くの手続きがオンラインで可能になっています。また、AIを活用した業務の自動化が導入される自治体も増えています。これにより、一部の業務は効率化されましたが、デジタル化の対応に追われる職員も増えているのが現状です。
非正規職員への依存が増加
人手不足を補うため、非常勤職員の雇用が増えています。しかし、給与や雇用条件の違いにより、安定して人材を確保するのが難しく、結果的に業務の継続性に問題が生じることもあります。
人手不足により公務員の働き方は変化しており、今後もさらなる業務改革が求められるでしょう。
公務員不足への対応と今後の展望(まとめ)
記事のポイントをまとめます。
- 地方公務員の人手不足は全国の自治体で深刻化している
- 公務員試験の受験者数が減少し、特に地方では応募者が少ない
- 民間企業の賃金上昇により、公務員より魅力的な職場が増えている
- 行政サービスの範囲が拡大し、業務の負担が増加している
- 財政の制約により、新たな職員を雇う余裕がない自治体が多い
- 過疎地域では公務員が減少する一方で、高齢者向けの業務が増加
- 公務員の長時間労働が常態化し、辞めたいと考える職員が増えている
- 窓口業務のクレーム対応が精神的な負担となり、離職につながる
- 公務員の給与は民間企業と比較して必ずしも高くない
- 若手公務員はベテラン並みの業務を求められ、負担が大きい
- 内定辞退率が高く、特に北海道庁では60%以上の年もある
- 地方公務員の転勤が多く、地元志向の高まりが辞退率に影響している
- RPAやAIの活用により業務の効率化が進んでいるが、対応が追いつかない自治体もある
- 非正規職員への依存が増えているが、待遇の格差が課題となっている
- 公務員の待遇は安定しているが、今後の改革次第で変化する可能性がある