「夜勤のある公務員」と聞くと、どのような仕事を思い浮かべるでしょうか。安定した日中勤務のイメージが強い公務員ですが、実は国民の安全や社会インフラを24時間体制で支えるため、夜勤が不可欠な職種が数多く存在します。
夜勤のある国家公務員の具体的な職種、市役所での夜勤の実態について知りたい方や、夜勤手当の仕組み、また公務員として働きながら夜勤と土日休みを両立させる方法に関心がある方もいるかもしれません。
この記事では、夜勤を伴う公務員の仕事内容から、待遇、働き方の実態、そして健康を維持するための注意点まで、網羅的に解説します。あなたの疑問や不安を解消し、キャリアを考える上での一助となる情報を提供します。
- 夜勤がある公務員の具体的な職種と業務内容
- 夜勤手当や割増賃金の仕組みと具体的な計算方法
- 夜勤をしながら土日休みを確保するための制度と方法
- 夜勤に伴う課題や健康リスクと、その具体的な対策
夜勤のある公務員の職種とリアルな働き方

- 夜勤のある国家公務員の職種一覧
- 市役所における夜勤の実態と担当部署
- 夜勤で土日休みを実現する方法
- 夜勤のメリットとデメリットを比較
夜勤のある国家公務員の職種一覧
国民の安全や社会基盤を24時間体制で守るため、国レベルで夜勤が必須となる職種は多岐にわたります。これらの職種は、それぞれが専門的な役割を担い、昼夜を問わず社会の安定に貢献しています。
例えば、地域の治安維持を担う警察官、火災や救急事案に対応する消防士、国防を担う自衛官は、24時間体制の交代勤務が基本です。また、受刑者の監督や施設の安全確保を行う刑務官も、昼夜間勤務を通じて社会秩序の維持に努めています。
さらに、空港や港湾で国の玄関口を守る税関職員や入国管理局職員、空と海の安全を司る航空管制官や海上保安官も、シフト制による夜間勤務が欠かせません。その他、皇居や国会議事堂といった国家の重要施設を警備する皇宮護衛官や国会衛視も、交代制で夜間の警備にあたります。
これらの職種の特徴を比較すると、業務内容や勤務体系、求められる資質が大きく異なることが分かります。
職種 | 主な業務内容 | 勤務体系 | 主な特徴 |
---|---|---|---|
警察官 | パトロール、捜査、交番勤務 | 交替制(2~3交代) | 24時間体制、緊急対応、社会貢献度大 |
消防士 | 消火、救急、救助 | 24時間勤務制 | 人命救助、体力勝負、高い緊張感 |
自衛官 | 警備、訓練、災害派遣 | 部隊ごとに異なる | 国家防衛、長期任務や海外派遣もあり |
刑務官 | 受刑者管理、監督 | 昼夜間勤務(24h) | 高い緊張感、閉鎖空間での勤務 |
税関職員 | 税関検査、不正取引の監視 | シフト制 | 国境警備の最前線、突発的な対応 |
航空管制官 | 航空機の安全な航行監視・指示 | シフト制 | 高度な集中力、重大事故の未然防止 |
海上保安官 | 海上警備、海難救助 | シフト制 | 海上の安全確保、密輸等の取り締まり |
皇宮護衛官 | 皇居や御所の警備・護衛 | 交替制 | 国家の象徴を守る誇りと責任 |
国会衛視 | 国会議事堂の警備、出入者管理 | 交替制 | 国家の重要施設の警備 |
夜勤のある国家公務員は、社会の根幹を支える極めて重要な役割を担っています。
市役所における夜勤の実態と担当部署
市役所は日中開庁が基本ですが、市民サービスや危機管理のために夜間も業務が継続されています。その中心となるのが「宿日直」体制と、災害時に稼働する専門部署です。
宿日直による夜間市民サービス
多くの市役所では、夜間や休日に戸籍届(死亡、出生、婚姻など)の受理や、火葬許可証の発行といった緊急性の高い窓口業務を行うため、宿日直担当者が待機しています。
この体制は、市役所の正規職員や会計年度任用職員が直接担当する「直営」の場合と、警備会社などに業務を委託する「外部委託」の場合があり、自治体の規模や方針によって運営形態が異なります。
防災・危機管理部署の夜間体制
一方、台風や地震などの自然災害に備える防災課や危機管理課は、夜間も情報収集や警戒態勢を維持する重要な役割を担います。
災害発生の恐れがある場合、職員が交代で宿直し、警報発令時や災害発生時には即座に対応できる体制を整えています。災害の規模に応じて、夜間でも数十人から数百人規模の職員が招集され、災害対策本部が設置されることもあります。
その他、庁舎内の設備トラブルや市民からの緊急連絡(道路の陥没など)への初期対応も、宿日直担当の重要な業務です。このように、市役所の夜勤は、市民の日常生活と安全を守るために不可欠な業務と言えます。
夜勤で土日休みを実現する方法

夜勤を伴う交代制勤務の公務員にとって、土日休みを確保することは働き続ける上で大切な課題です。結論から言うと、「週休日の振替」と「代休制度」を計画的に活用することで、土日休みを実現することは可能です。
週休日の振替制度
まず、公務員の勤務制度では、本来の週休日(通常は土日)に勤務した場合、別の平日に休みを振り替える「週休日の振替」が認められています。
これは、勤務を命じられた日から起算して、原則として4週間前から8週間後までの期間内で設定できます。この制度をうまく利用すれば、週末に勤務した分を平日に休むことで、週休2日を維持できます。
代休制度の活用
また、祝日などの「休日」に勤務した場合は、「代休」を取得できます。代休は、休日勤務後に別の勤務日を休みとして指定する制度です。これも週休日の振替と同様に、8週間以内に取得するのが一般的です。
これらの制度を最大限に活用するためには、月々のシフトを作成する段階で、上司や同僚と連携し、計画的に休日の割り振りを調整することが鍵となります。
例えば、夜勤明けの非番日の翌日に週休日を連続させるなど、心身の回復を考慮したシフトを組むことで、不規則な勤務の中でもプライベートの時間を確保しやすくなります。
夜勤のメリットとデメリットを比較
夜勤のある公務員の働き方は、特有のメリットがある一方で、無視できないデメリットも存在します。双方を理解し、自身のライフスタイルや価値観と照らし合わせることが大切です。
メリット
最大のメリットは、収入面の増加が期待できる点です。法律に基づき、深夜時間帯(原則22時~翌5時)の勤務には、通常の勤務時間単価に25%以上が上乗せされた「夜勤手当(深夜割増賃金)」が支給されます。これにより、日勤のみの職員に比べて給与が高くなる傾向にあります。
また、平日の昼間に自由な時間ができることも魅力の一つです。役所や銀行、病院など、土日祝日が休みの施設を利用しやすくなるため、プライベートの用事を効率的に済ませられます。
デメリット
一方で、最も大きなデメリットは、生活リズムが不規則になりがちで、心身への負担が大きいことです。昼夜逆転の生活は体内時計を乱し、慢性的な睡眠不足や体調不良につながる可能性があります。特に、勤務に慣れるまでは体調管理が難しいと感じるかもしれません。
さらに、家族や友人との時間が合わせにくくなる点も挙げられます。多くの人が休んでいる土日や祝日に勤務することが多いため、プライベートな交流や家庭生活との両立に工夫が求められる場面も出てきます。
夜勤のある公務員に必須の知識と対策

- 夜勤手当の仕組みと計算例
- 夜勤で職員が直面する課題と負担
- 夜勤がもたらす健康リスクと対策
- 夜勤のある公務員に必須の知識と対策(まとめ)
夜勤手当の仕組みと計算例
夜勤のある公務員にとって、夜勤手当は給与の重要な要素です。この手当は、正規の勤務時間として深夜帯(原則22時~翌5時)に勤務した場合に支給されるもので、その計算方法は法律や規則で定められています。
夜勤手当の基本的な計算式は、以下の通りです。
ここで言う「勤務1時間あたりの給与額」は、単なる基本給(俸給)だけでなく、地域手当など月々決まって支給される手当を含んだ月額給与を基に算出されます。
具体的な計算例
例えば、月給(俸給+地域手当等)が27万円で、1ヶ月の所定労働時間が160時間の職員の場合を考えてみましょう。
- 勤務1時間あたりの給与額を算出
270,000円 ÷ 160時間 = 1,687.5円 - 1時間あたりの夜勤手当(割増分)を算出
1,687.5円 × 0.25 = 421.875円 - 1回の夜勤(深夜7時間勤務)での手当額を算出
421.875円 × 7時間 = 約2,953円
もし月に4回このような夜勤があれば、夜勤手当だけで約11,812円が給与に加算される計算になります。、夜勤手当は基本給や勤務回数によって変動するため、自身の給与規程を確認し、仕組みを理解しておくことが大切です。
夜勤で職員が直面する課題と負担

夜勤勤務は、日中の勤務とは異なる特有の課題や負担を伴います。これらを事前に理解しておくことは、心身の健康を維持し、仕事を長く続けるために不可欠です。
生活リズムの乱れと健康への影響
最も大きな課題は、生活リズムの乱れによる健康への影響です。本来休息すべき夜間に活動し、活動すべき昼間に睡眠をとる生活は、体内時計を狂わせ、慢性的な睡眠不足や疲労感につながります。これにより、集中力や判断力が低下し、業務上のミスを引き起こすリスクが高まる可能性も指摘されています。
精神的・社会的な負担
また、精神的・社会的な負担も少なくありません。夜間に勤務することで、家族や友人と過ごす時間が減り、社会的な孤立感を感じやすくなることがあります。特に、夜間は一緒に働く同僚の数も限られるため、日中勤務に比べてコミュニケーションの機会が減り、精神的な支えを得にくい状況になることも考えられます。
予測困難な業務への対応
市役所の宿直や警察・消防の緊急対応など、夜勤業務は突発的な事案や複雑な対応を求められる場面が多くあります。いつ何が起こるか分からないという緊張感が常に伴い、精神的なプレッシャーが大きくなる傾向にあります。
特に災害発生時には、徹夜での対応や連続勤務を余儀なくされることもあり、肉体的・精神的な負担は計り知れません。これらの課題に対し、組織的なサポート体制の確認や、後述するセルフケアの実践が重要となります。
夜勤がもたらす健康リスクと対策
夜勤は、私たちの身体に様々な健康リスクをもたらす可能性があります。しかし、リスクを正しく理解し、適切な対策を講じることで、その影響を最小限に抑えることができます。
主な健康リスク
長期的な夜勤勤務が関連すると指摘されている健康リスクには、以下のようなものがあります。
- 睡眠障害
不眠や日中の過度な眠気など、睡眠の質と量に関する問題が生じやすくなります。 - 生活習慣病
体内時計の乱れや不規則な食生活から、肥満、糖尿病、高血圧、心血管疾患などのリスクが高まると考えられています。 - 消化器系の不調
夜間の食事は胃腸に負担をかけ、胃炎や便秘などの不調を引き起こす一因となります。 - メンタルヘルス不調
ストレスや社会的孤立感から、うつ症状や不安障害につながるケースも報告されています。
リスクへの具体的な対策
これらのリスクに対しては、多角的な対策が有効です。まず、睡眠の質を高めるため、夜勤明けに眠る際は、遮光カーテンやアイマスクを活用して寝室を暗く静かな環境に整えることが大切です。
食生活においては、夜勤中の食事は消化の良いものを腹八分目にし、脂肪分や糖分の多い食事は避けるよう心がけます。
また、定期的な健康診断の受診も欠かせません。特に夜勤を月4回以上行う場合、法律で年2回の健康診断が義務付けられています。自身の健康状態を客観的に把握し、異常があれば早期に対処することが、深刻な事態を防ぐための鍵となります。
夜勤のある公務員に必須の知識と対策(まとめ)
夜勤のある公務員として、健康的に、そして長期的に活躍するためには、これまで述べてきた知識と対策を総合的に実践することが求められます。最後に、この記事の要点をまとめます。
- 夜勤のある公務員には警察官や消防士など多様な職種がある
- 市役所でも宿日直や防災体制で夜間業務が行われている
- 夜勤のメリットは夜勤手当による収入増や平日の自由時間
- デメリットは生活リズムの乱れや心身への負担
- 週休日の振替や代休制度の活用で土日休みは確保可能
- 計画的なシフト調整が休日確保と健康維持の鍵となる
- 夜勤手当は深夜勤務時間に対して25%以上の割増で支給される
- 残業や休日労働と重なると割増率はさらに加算される
- 夜勤は睡眠障害や生活習慣病などの健康リスクを伴う
- 精神的な孤立感や業務上のプレッシャーも課題となる
- 健康リスクを理解し早期に対策を講じることが大切
- 質の高い睡眠確保のため寝室環境を整える
- 夜勤中の食事は消化の良いものを選び暴飲暴食を避ける
- 適度な運動やストレス解消法を日常生活に取り入れる
- 年2回の定期健康診断を必ず受診し健康状態を把握する
