【公務員】55歳から昇給停止?対象者と退職金に与える影響

【公務員】55歳から昇給停止?対象者と退職金に与える影響

公務員として働く中で、「55歳で昇給停止になる」という話を聞き、ご自身のキャリアや将来の生活設計に不安を感じていませんか。

この制度が一体いつから始まったのか、近年話題の定年延長によって昇給停止は廃止されるのか、また、もし昇格した場合は給与がどうなるのか、といった疑問は尽きないことでしょう。

さらに、一般企業の制度と比較して、公務員の給与体系が社会的にどのような位置づけにあるのかも気になるところです。

この記事では、そうした疑問や不安を解消するため、公務員の55歳昇給停止制度について、最新の情報を基に分かりやすく解説します。

  • 55歳昇給停止制度の具体的な仕組みと背景
  • 昇給停止が生涯年収や退職金に与える影響
  • 定年延長に伴う制度の廃止と新しい給与措置
  • 一般企業の制度との比較と公務員給与の今後
目次

【公務員】55歳から昇給停止?制度概要と個人への影響

公務員55歳昇給停止の制度概要と個人への影響

このセクションでは、55歳からの昇給停止制度がどのようなものか、その基本的な仕組みから、個人の給与やキャリアに与える具体的な影響までを詳しく掘り下げていきます。

  • 昇給停止はいつから?制度の対象者と時期
  • なぜ55歳で昇給停止に?導入された背景
  • 誕生月で明暗が?給与改定タイミングの仕組み
  • 昇給停止でも昇格は別?例外規定と昇給の条件
  • 勤務成績による特例昇給の条件と昇給幅
  • モデル別に試算!55歳昇給停止で生涯年収はどうなる?
  • 昇給停止が退職金に与える具体的な影響

昇給停止はいつから?制度の対象者と時期

55歳昇給停止はいつから?制度の対象者と時期

昇給停止制度は、国家公務員において平成26年(2014年)1月1日から本格的に導入されました。その後、多くの地方自治体でも同様の制度が順次適用されています。

この制度の対象となるのは、原則として年齢が55歳を超える全ての一般職公務員です。具体的には、55歳の誕生日を迎えた後の最初の昇給時期から、昇給が停止されることになります。

ただし、一部の職種、例えば医療職給料表(一)などが適用される職員については、昇給停止年齢が57歳に設定されている場合もあります。ご自身の職種がどの区分に該当するかは、所属する組織の給与規程を確認することが大切です。

なぜ55歳で昇給停止に?導入された背景

なぜ55歳で昇給停止に?導入された背景

55歳で昇給が停止される制度が導入された背景には、主に3つの理由があります。

第一に、民間企業の給与水準との均衡を図るためです。制度導入前は、50代後半の公務員の給与水準が、同世代の民間企業の従業員と比較して高くなる傾向が指摘されていました。この官民の格差を是正することが、制度導入の大きな目的の一つでした。

第二に、国の財政状況です。少子高齢化が進む中で、公務員の人件費を適切に管理し、財政の健全化を図る必要がありました。高齢層の給与上昇を抑制することで、人件費全体の膨張を防ぐ狙いがあります。

そして第三に、世代間の給与配分の適正化です。高齢層への配分を抑制した分の原資を、若手や中堅職員の処遇改善に充てることで、組織全体の活力を維持し、能力のある人材を確保することも意図されています。

誕生月で明暗が?給与改定タイミングの仕組み

55歳の誕生月で明暗が?給与改定タイミングの仕組み

昇給停止の適用タイミングは、職員の誕生月によって有利不利が生じる可能性があり、しばしば「誕生月による明暗」と表現されます。これは、昇給の基準日と誕生日の前後関係によって、昇給できる最後の年が変わってくるためです。

公務員の定期昇給は、多くの場合、毎年4月1日や1月1日といった特定の基準日に行われます。昇給停止のルールは「55歳を超える職員」に適用されますが、この「超える」とは、法律上「55歳の誕生日当日」からを指します。

具体的なケース

例えば、昇給基準日が4月1日の組織に勤めている場合を考えてみましょう。

  • 4月2日生まれの職員
    昇給基準日の4月1日時点ではまだ54歳です。そのため、この年の昇給は対象となり、給与が上がります。昇給が停止されるのは、翌年度からです。
  • 3月31日生まれの職員
    昇給基準日の4月1日時点では、すでに55歳に達しています。したがって、この年の昇給は対象外となり、前年度から給与は上がりません。

このように、誕生日が1日違うだけで、最後の昇給機会を1年分得られるかどうかが変わってきます。これは、同じ学年で同期入庁した職員の間でも、生涯賃金に差が生じる要因となり得るのです。

昇給停止でも昇格は別?例外規定と昇給の条件

55歳昇給停止でも昇格は別?例外規定と昇給の条件

55歳を超えて定期昇給が停止された後でも、給与が上がる可能性は残されています。その最も大きな例外が「昇格」した場合です。

昇格とは、係長から課長へ、といったように職務の等級が上がることを指します。これは、毎年行われる定期昇給(号俸が上がること)とは全く別の制度です。したがって、55歳を超えていても、より上位の役職に昇格した際には、新しい職務の等級に応じた給与が適用されるため、結果的に月額の給与は上がります。

ただし、注意点もあります。昇格時の給与決定においては、無制限に給与が上がるわけではなく、一定の抑制措置が取られることが一般的です。例えば、昇格直前の号俸が高位であった場合には、昇格後の給与の上がり幅が通常よりも小さく調整されることがあります。

昇格は昇給停止後も給与を上げるための重要な要素ですが、その上がり方には一定のルールが設けられている点を理解しておく必要があります。

勤務成績による特例昇給の条件と昇給幅

勤務成績による特例昇給の条件と昇給幅

昇給停止には、昇格以外にも例外的な措置が設けられています。それは、勤務成績が特に優れていると評価された場合の「特例昇給」です。

標準的な勤務成績の職員は55歳以降、昇給が停止されますが、人事評価において「特に良好」あるいは「極めて良好」といった非常に高い評価を得た場合に限り、限定的な昇給が認められることがあります。これは、年齢にかかわらず高い成果を上げ続ける職員のモチベーションを維持するための仕組みと言えます。

しかし、この特例昇給で上がる給与の幅は、55歳未満の職員の定期昇給と比べて大幅に抑制されているのが実情です。具体的には、通常の昇給額の半分から3分の1程度の昇給に留まることが多く、給与が大きく増えるわけではありません。

したがって、特例昇給はあくまで例外的な措置であり、ほとんどの職員にとっては、55歳以降、給与は頭打ちになると考えておくのが現実的です。

モデル別に試算!55歳昇給停止で生涯年収はどうなる?

モデル別に試算!55歳昇給停止で生涯年収はどうなる?

55歳での昇給停止は、生涯にわたって受け取る給与の総額にどの程度の影響を与えるのでしょうか。具体的なモデルを基に試算すると、その影響の大きさが分かります。

生涯年収への影響シミュレーション

ここでは、55歳時点で月給35万円の地方公務員が、65歳で定年退職するまでの10年間を想定してみます。毎年1回、2,000円の昇給があったと仮定して比較します。

比較ケース55歳以降10年間の給与・賞与への影響生涯賃金の差(概算)
昇給が継続した場合・毎年の昇給が10年間累積
・基本給の上昇に伴い賞与額も増加
55歳で昇給停止した場合・給与と賞与は55歳時点の金額で固定約100万円~150万円以上の減少

昇給が停止されると、月々の給与が上がらないだけでなく、基本給を基に計算される賞与(ボーナス)の額も増えません。

この差が10年間蓄積されると、昇給が継続した場合に比べて、生涯賃金で100万円から150万円、あるいはそれ以上の差が生じる可能性があるのです。

この金額はあくまで一例であり、役職や昇給ペースによって差はさらに開くことも考えられます。

昇給停止が退職金に与える具体的な影響

昇給停止が退職金に与える具体的な影響

昇給停止の影響は、月々の給与や賞与だけに留まりません。退職時に受け取る退職手当、いわゆる退職金にも間接的に影響を及ぼします。

退職金の額は、多くの場合、「退職日の俸給月額」を基礎として、勤続年数などに応じた支給率を掛けて算出されます。つまり、退職する時点での給与が高いほど、退職金も高くなる仕組みです。

55歳で昇給が停止されると、それ以降、退職するまでの間、給与のベースが上がりません。もし昇給が続いていれば、60歳や65歳の退職時点ではもっと高い給与額になっていたはずです。

前述の通り、退職金の算定基礎となる「退職日の俸給月額」が55歳時点から据え置かれるため、結果として受け取る退職金の額も、昇給が続いた場合に比べて低くなることになります。生涯年収だけでなく、退職後の生活設計に関わる退職金にも影響が及ぶ点は、この制度の重要なポイントです。

【公務員】55歳から昇給停止?民間との比較

公務員55歳昇給停止の今後と民間との比較

制度の仕組みを理解したところで、次にその社会的な位置づけと将来の動向を見ていきましょう。民間企業の制度との比較や、定年延長によってこの制度がどう変わったのかを解説します。

  • 一般企業と比較|50代社員の給与カーブの違い
  • 定年延長でついに廃止へ|当分の間の新給与措置とは?
  • 【公務員】55歳からの昇給停止で押さえるべき重要点(まとめ)

一般企業と比較|50代社員の給与カーブの違い

一般企業と比較|50代社員の給与カーブの違い

55歳からの昇給停止は、民間企業の制度と比較することで、その位置づけがより明確になります。結論から言うと、形は違えど、民間企業でも50代後半で給与の上昇が緩やかになったり、減少に転じたりする仕組みは広く見られます。

その代表的な制度が「役職定年制」です。これは、部長や課長といった管理職が、55歳前後などの一定の年齢に達した時点で役職を退き、専門職や一般職に移る制度を指します。役職から外れることに伴い、役職手当などがなくなり、給与水準が下がるのが一般的です。

以下の表は、公務員と民間企業の50代における給与関連制度の一般的な違いをまとめたものです。

比較項目公務員民間企業(大手中心)
給与の抑制方法55歳以降の定期昇給を停止役職定年制(役職から外し減給)
給与カーブ55歳で頭打ち、ほぼ横ばい50代半ばをピークに横ばいまたは減少
目的官民格差の是正、人件費抑制組織の新陳代謝、若手の登用機会創出

このように、公務員の昇給停止は、民間企業の役職定年制と類似した、高齢層の人件費を抑制し、組織の新陳代謝を促す機能を持っていると言えます。

呼び方や仕組みは異なりますが、50代後半で給与カーブが平坦になるという点では、社会的な大きな流れに沿った制度と考えられるでしょう。

定年延長でついに廃止へ|当分の間の新給与措置とは?

定年延長でついに廃止へ。当分の間の新給与措置とは?

近年、公務員の働き方における最大の変更点が「定年延長」です。2023年度から、公務員の定年が段階的に60歳から65歳へと引き上げられることになりました。

この大きな変化に伴い、従来の「55歳昇給停止」制度は、実はすでに「廃止」されています。もし55歳で昇給が停止されたまま定年が65歳になると、職員は10年間も給与が上がらない状態で働き続けることになり、モチベーションの維持が困難になるためです。

新たに導入された「当分の間の措置」

昇給停止制度の廃止と引き換えに、新たな給与制度として「当分の間の措置」が導入されました。これは、職員が60歳に達した後の給与に関するルールです。

具体的には、60歳に達した日以降の最初の4月1日から、その職員の俸給月額(基本給)が、60歳時点の「7割」の水準に引き下げられます。つまり、60歳までは従来通り昇給しますが、60歳になった段階で給与水準が一度リセットされる形です。

この措置は、定年延長による人件費の急激な増大を避けるために設けられました。「当分の間」とされているのは、これが今後の社会情勢の変化などに応じて見直される可能性を含んだ経過措置であるためです。この制度変更により、公務員の給与体系は新たな段階に入ったと言えます。

【公務員】55歳からの昇給停止で押さえるべき重要点(まとめ)

この記事では、昇給停止制度の仕組みから、定年延長による制度の廃止、そして新たな給与体系までを解説しました。最後に、本記事の重要なポイントをまとめます。

  • 55歳昇給停止制度は2014年から本格導入された
  • 主な目的は民間給与との均衡と人件費の抑制であった
  • 原則として55歳を超える全ての職員が対象
  • 一部の医療職などでは停止年齢が57歳の場合もある
  • 昇給基準日と誕生日の関係で最後の昇給機会に差が出ることがあった
  • 昇格した場合は例外的に給与が上がる可能性があった
  • ただし昇格時の給与の上がり幅には抑制措置が設けられていた
  • 勤務成績が極めて良好な場合も小幅な特例昇給の道があった
  • 昇給停止は生涯年収や退職金の額にも影響を及ぼした
  • 民間企業の役職定年制と類似した機能を持つ制度であった
  • 公務員の定年が65歳へ延長されたことに伴い、55歳昇給停止制度は廃止された
  • 代わりに60歳以降の給与を7割水準とする「当分の間の措置」が導入された
  • この7割措置は今後の見直しが予定される経過措置である
  • 公務員の給与体系は定年延長により新たなフェーズに入っている
  • 自身の正確な給与については必ず所属組織の最新規程を確認することが大切
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