公務員の仕事で、もしミスをしたら責任はどうなるのか、不安に感じていませんか。実際に起きた事例を知り、万が一の事態に備えたいと考えるのは自然なことです。公務員賠償責任保険には損保ジャパンなど様々な商品があり、どれが自分にとっておすすめなのか迷うかもしれません。
この記事では、公務員賠償責任保険の必要性について、法的根拠から具体的な補償内容、保険料の相場、そして加入を判断するためのポイントまで、網羅的に解説していきます。
- 公務員が負う賠償責任の基本ルール
- 保険の具体的な補償内容と保険料の相場
- 実際の事故事例とパワハラなどへの対応
- 自身に合った保険を選ぶための比較ポイント
公務員賠償責任保険は必要か?まず知るべき法的責任

公務員の仕事は社会全体に奉仕する重要な役割を担っており、その職務遂行には大きな責任が伴います。しかし、人間である以上、意図せずミスをしてしまう可能性は誰にでもあるものです。
ここでは、公務員賠償責任保険の必要性を考える上で、まず基本となる法的な責任の仕組みについて解説します。
- 公務員がミスをしたら責任はどうなるのか?
- 「公務員賠償責任保険」とは?その仕組み
- 保険で補償される具体的な内容を解説
- 気になる保険料は?公務員賠償責任保険の相場
- 公務員賠償責任保険の加入率
公務員がミスをしたら責任はどうなるのか?
結論から言うと、公務員が職務上のミスで市民に損害を与えた場合、原則として賠償責任を負うのは国や地方公共団体であり、公務員個人が直接責任を問われることはありません。
なぜなら、「国家賠償法」という法律が、公務員の行為による損害は国や公共団体が賠償することを定めているからです。これは、公務員が訴訟を恐れて仕事が萎縮してしまうのを防ぎ、行政サービスを円滑に提供するための大切な仕組みになっています。
ただし、個人が全く責任を負わないわけではない点に注意が必要です。その職員に「故意」または「重過失」があったと判断された場合、国や公共団体は支払った賠償金を職員本人に請求(求償)できます。
「重過失」とは、通常求められる注意を著しく欠いた、ほとんど故意に近い状態を指し、単なるうっかりミスは含まれないとされています。
「公務員賠償責任保険」とは?その仕組み
公務員賠償責任保険とは、職務上のミスによって損害賠償請求や訴訟が起きた際に、公務員個人が負う経済的な負担に備えるための保険制度です。
前述の通り、個人が直接責任を負うことは稀ですが、国や自治体から「重過失」を理由に求償されるリスクは存在します。また、住民訴訟や情報漏えい、ハラスメントなどを理由に訴えられた場合、たとえ勝訴しても弁護士費用などの争訟費用は自己負担となる可能性があります。
このような万が一の事態に備え、経済的な安心を確保するのが公務員賠償責任保険の役割です。自治体や共済組合などを通じた団体契約が主流で、比較的安価な保険料で加入できるのが一般的です。
保険で補償される具体的な内容を解説
公務員賠償責任保険は、損害賠償金だけでなく、訴訟に関わる様々な費用を幅広くカバーする点が特徴です。
裁判には多額の費用がかかるため、たとえ最終的に勝訴したとしても、弁護士費用などの持ち出しで大きな経済的負担を強いられるケースがあります。保険に加入していれば、こうした事態にも対応できるため、安心して職務に専念することにつながります。
具体的に補償される主な内容は以下の通りです。
補償内容の種類 | 具体的な補償対象 |
損害賠償金 | 住民訴訟、民事訴訟、求償請求などで個人が負担する賠償金 |
争訟費用 | 訴訟に必要な弁護士費用、着手金、報酬金、鑑定料など |
初期対応費用 | 謝罪のための見舞金や見舞品の購入費用など |
ハラスメント対応 | パワハラ・セクハラ関連の訴訟費用 |
情報漏えい対応 | 個人情報漏えい時の損害賠償金(特約の場合あり) |
注意すべき免責事項
一方で、全てのケースで保険金が支払われるわけではありません。例えば、故意による加害行為や犯罪行為、公序良俗に反する行為によって生じた損害は補償の対象外となります。保険はあくまで誠実に職務を行った上での「万が一」に備えるための制度であることを理解しておくことが大切です。
気になる保険料は?公務員賠償責任保険の相場
加入を検討する上で、保険料がいくらかかるのかは重要なポイントです。公務員賠償責任保険の保険料は、補償の限度額や加入する団体の制度によって異なりますが、一般的には年間数千円程度と、比較的手頃な価格で設定されています。
月額に換算すると数百円程度の負担で、万が一の賠償リスクに備えることができます。団体割引が適用されることが多いため、個人で同等の保険に加入するよりも割安になるのが大きなメリットです。
【プラン別保険料の例:自治労共済生協の場合】
補償タイプ | 年間保険料 | 補償限度額 |
タイプS | 7,440円 | 3億円 |
タイプA | 6,240円 | 1億円 |
タイプB | 4,800円 | 5,000万円 |
タイプC | 2,880円 | 3,000万円 |
出典:自治労共済生協
保険料は、補償限度額の大きさに比例して高くなる傾向があります。また、管理職など責任の重い役職の場合は、一般職員よりも保険料が高く設定されていることもあります。
公務員賠償責任保険の加入率
「他の人は加入しているのだろうか」と気になる方も多いかもしれません。
全国の公務員における正確な加入率の公式データはありませんが、主要な共済組合や保険代理店の発表によると、加入者数は全国で数十万人規模にのぼると考えられます。例えば、自治労共済では10万人以上、アルプスカードが扱う保険では5万人といった規模の加入者がいるとされています。
これらの数字から、かなりの数の公務員が、職務上のリスクに備える必要性を感じて保険に加入していることがうかがえます。「同僚や上司に勧められた」「万が一の時に家族に迷惑をかけたくない」といった理由で加入を決める方が多いようです。
公務員賠償責任保険は必要か?加入判断のポイント

ここまで、公務員の法的責任の仕組みや保険の概要について解説しました。ここからは、具体的な事故事例やリスクの種類、保険の選び方など、実際に加入を判断するためのより実践的なポイントを掘り下げていきます。
- 他人事じゃない!情報漏洩・器物損壊の事故事例
- 増加中のパワハラ!公務員賠償責任保険で備える
- 公務員賠償責任保険のおすすめは損保ジャパン?
- 最終判断の前に!加入すべき職種や役職とは
- 公務員賠償責任保険は必要か?法的責任と訴訟リスク(まとめ)
他人事じゃない!情報漏洩・器物損壊の事故事例
保険の必要性を判断する上で、どのようなリスクが実際に起こりうるのかを知ることは非常に参考になります。
「自分は大丈夫」と思っていても、些細な不注意が大きな損害賠償につながる可能性はゼロではありません。例えば、以下のような事例が実際に報告されています。
- 個人情報の漏洩
職務上知り得た住民の個人情報を誤って外部に漏らしてしまい、損害賠償請求に発展したケース。 - 公用車の物損事故
公用車を運転中に不注意で事故を起こし、相手車両の修理費などを求償されたケース。 - 施設の管理ミス
庁舎の排水弁を閉め忘れ施設を水浸しにしてしまい、多額の損害を発生させたケース。 - 窓口での不適切な言動
住民への応対時の言動が精神的苦痛を与えたとして訴えられ、争訟費用が発生したケース。
これらの事例は、決して特別なものではなく、どの職場でも起こりうる身近なリスクと言えます。
増加中のパワハラ!公務員賠償責任保険で備える
近年、職場におけるパワーハラスメント(パワハラ)は社会的な問題となっており、公務員の職場も例外ではありません。
パワハラを理由に部下などから訴えられた場合、公務員賠償責任保険は有効な備えとなります。ただし、補償の範囲には注意が必要です。
多くの保険では、パワハラで訴えられた際の弁護士費用などの「争訟費用」は補償の対象となります。これにより、裁判にかかる経済的負担を軽減することが可能です。
しかし、パワハラ行為が「故意」であったと認定され、裁判で損害賠償金の支払いが命じられた場合、その賠償金自体は補償の対象外となるのが一般的です。
あくまで保険は不測の事態に備えるものであり、ハラスメント行為自体を許容するものではない、という点を理解しておく必要があります。
公務員賠償責任保険のおすすめは損保ジャパン?
保険への加入を決めた場合、次に考えるのは「どの保険を選べばよいか」という点です。損保ジャパンをはじめ、様々な会社が公務員向けの賠償責任保険を提供しており、それぞれに特徴があります。
自分に合った保険を選ぶためには、いくつかのポイントを比較検討することが鍵となります。
補償範囲
住民訴訟や情報漏えい、ハラスメントなど、自分の職務内容に潜むリスクを幅広くカバーしているかを確認しましょう。
過去の行為や退職後の補償
保険加入前の行為に起因する請求や、退職後に訴えられた場合でも補償が適用されるかは非常に重要なポイントです。例えば、損保ジャパンが提供するプランの中には、退職後5年間の補償が自動で付帯されるものもあります。
保険料と補償限度額のバランス
支払う保険料と、万が一の際に受け取れる補償限度額のバランスが適切かを見極めましょう。所属する自治体や共済の団体契約プランを確認するのが第一歩です。
一つの商品に絞るのではなく、複数の商品を比較し、自身の職務リスクや予算に最も合ったプランを選択することが賢明です。
最終判断の前に!加入すべき職種や役職とは
公務員賠償責任保険の必要性は、全ての職員に一律というわけではなく、職種や役職によって異なります。
一般的に、以下のような職務に就いている方は、損害賠償リスクが相対的に高いと考えられ、保険加入の必要性が高いと言えます。
- 住民と直接関わる職種
福祉、税務、戸籍など、窓口や訪問で直接住民と接する機会が多い業務。 - 専門的な判断が求められる職種
建築士や医師、保健師など、専門的な知識に基づく判断が市民の財産や身体に影響を与える可能性がある業務。 - 許認可や財産管理に関わる職種
許認可の判断や公金の管理などを担当し、ミスが直接的な金銭的損害につながりやすい業務。 - 管理職
部下の行為に対する監督責任を問われる可能性がある課長級以上の役職。
逆に、警察官や消防士のように、専用の補償制度が別途用意されている職種もあります。まずはご自身の仕事内容にどのようなリスクがあるかを客観的に分析することが、加入判断の第一歩となります。
公務員賠償責任保険は必要か?法的責任と訴訟リスク(まとめ)
この記事で解説した内容を踏まえ、公務員賠償責任保険の必要性について要点をまとめます。
- 公務員のミスは原則として国や自治体が賠償する
- ただし重過失の場合は個人に求償される可能性がある
- 単純な事務ミスが重過失と認定されることは稀である
- 保険は賠償金だけでなく高額になりがちな弁護士費用もカバーする
- 訴訟では勝訴しても弁護士費用は自己負担になる場合がある
- 保険料は月額数百円からと比較的安価に設定されている
- 全国で数十万人規模の公務員が加入している実績がある
- 情報漏えいや物損事故など身近なリスクは多岐にわたる
- パワハラ訴訟では弁護士費用は補償されるが賠償金は対象外が多い
- 保険選びは補償範囲や退職後のカバーがポイントとなる
- 損保ジャパンなど各社の商品を比較検討することが望ましい
- 住民対応が多い職種や専門職は特に加入の必要性が高い
- 管理職は部下に対する監督責任のリスクも考慮すべきである
- 最終的な加入判断は個々の職務リスクに応じて行うべきである
- 万が一の経済的負担から自身と家族を守るための有効な手段である
