「公務員の勤務時間は、なぜ8時間きっかりではなく7時間45分なのだろう?」と疑問に思ったことはありませんか。この15分の差には、実は民間企業とのバランスを考慮した明確な理由が存在します。
公務員の労働時間が7時間45分なのはなぜかという問いの答えは、単なる歴史的経緯に留まりません。この記事では、その背景にある法制度から、7時間45分のメリット、そして実際の年間休日までを詳しく解説します。
さらに、土日祝日の出勤ケースや、今後の働き方を大きく変える可能性のある週休3日制の動向にも触れていきます。公務員の働き方について、多角的な視点からその全体像を解き明かしていきましょう。
- 公務員の勤務時間が7時間45分になった歴史的背景と法的根拠
- 残業や休日出勤などリアルな働き方の実態
- 一般行政職と専門職(警察官・教員)の勤務形態の違い
- 週休3日制など今後の公務員の働き方の展望
公務員が7時間45分勤務なのはなぜ?制度の背景と実態

- 公務員の労働時間が7時間45分なのはなぜですか?
- 15分の差は大きい?7時間45分勤務のメリットとは?
- 定時で帰れる?知っておきたい公務員の残業事情
- 公務員の年間休日はどのくらい?民間との違いを比較
- 公務員にもある?土日祝日に出勤するケースとは
- 休日出勤時の手当や代休制度
公務員の労働時間が7時間45分なのはなぜですか?

公務員の勤務時間が1日7時間45分と定められている最も大きな理由は、民間企業の勤務実態との均衡を図るためです。
根拠となっているのは、2008年に行われた人事院勧告です。公務員の給与や勤務条件は、労働基本権が一部制限されている代償として、社会一般の情勢に適応するよう人事院が勧告を行うことで調整されています。
このとき、従業員50人以上の民間事業所を調査したところ、1日の平均所定勤務時間が7時間45分に近い実態であったことが分かりました。
この結果を受け、民間企業との乖離を是正する目的で、2009年4月から国家公務員の勤務時間は「1日8時間・週40時間」から「1日7時間45分・週38時間45分」へと短縮されたのです。多くの民間企業で勤怠管理が15分単位で行われていることも、この時間に設定された背景の一つと考えられます。
15分の差は大きい?7時間45分勤務のメリットとは?

1日15分の差は、年間に換算すると大きな時間となり、働き手にとって多くのメリットをもたらします。
最大の利点は、終業時間が早まることで生まれるプライベート時間の充実です。毎日15分早く退勤できることで、家族と過ごす時間を増やしたり、通勤ラッシュを避けたりすることが可能になります。また、趣味や自己研鑽のための時間を確保しやすくなるため、資格取得やスキルアップにも繋がります。
このように日々の生活に余裕が生まれることは、心身のリフレッシュを促し、仕事へのモチベーション維持にも良い影響を与えます。
定時で帰れる?知っておきたい公務員の残業事情

「公務員は定時で帰れる」というイメージがありますが、実際は部署や時期によって大きく異なり、残業は決して少なくありません。
特に国家公務員の本省庁(霞が関など)では、国会対応や政策立案、予算編成などの業務が集中し、月平均の残業時間が30時間を超えることも珍しくありません。
一方、地方の出先機関などでは残業が比較的少ない傾向にあります。地方公務員の場合も、自治体や部署による差が顕著です。例えば、税務課や財政課は特定の時期に業務が集中し、繁忙期には残業が増加します。
残業に対しては「超過勤務手当」が法律や条例に基づいて支給されます。近年は働き方改革が進み、PCのログで勤務時間を管理するなど厳格化が進んでいます。しかし、予算の制約や業務量の多さから、全ての残業が完全に申請されているとは言えないケースも依然として課題として残っています。
公務員の年間休日はどのくらい?民間との違いを比較

公務員の年間休日は、民間企業の平均と比較して多い傾向にあります。
公務員の休日は、基本的に土日、祝日、そして年末年始(12月29日~1月3日の6日間)が定められており、これだけで年間約120日になります。さらに、多くの職場で5日程度の夏季休暇が設定されているため、合計すると年間休日は125日前後となるのが一般的です。
一方で、民間企業の年間休日は企業規模によって異なりますが、厚生労働省の調査によると平均は110日前後です。もちろん、大企業などでは125日以上の休日を設けている場合もありますが、全体で見ると公務員の休日数は恵まれていると言えます。
区分 | 年間休日数(目安) | 有給休暇(最大付与) |
公務員 | 約125日~129日 | 20日 |
民間企業(平均) | 約110日~116日 | 20日 |
また、公務員は年次有給休暇の取得率も民間企業より高い傾向があり、各種特別休暇(結婚、忌引、子の看護など)の制度も法律で手厚く保障されています。
公務員にもある?土日祝日に出勤するケースとは
公務員は原則としてカレンダー通りの休日ですが、住民サービスや職務の性質上、土日祝日に出勤するケースも存在します。
最も代表的なのは、市区町村の役所の窓口業務です。平日に来庁できない住民のために、土日も住民票や各種証明書の発行、婚姻届の受付などを行っている自治体が多くあります。住民課や保険年金課などの職員が、交代制で対応に当たります。
また、観光課や文化振興課など、イベントの企画・運営を担当する部署では、週末に開催されるお祭りや行事のために休日出勤が多くなります。その他、地震や豪雨などの災害発生時には、所属部署に関わらず全職員が非常態勢に入り、曜日を問わず出勤して対応することになります。
休日出勤時の手当や代休制度

公務員が休日に勤務した場合、その対価として代休(代日休暇)の取得、または手当の支給が制度として明確に保障されています。
休日出勤をした場合、原則として他の平日に代わりの休みを取得します。しかし、業務の都合などで代休の取得が難しい場合は、代わりに「休日勤務手当」が支給される仕組みです。この手当には割増賃金が適用されます。
例えば、祝日や年末年始に勤務した場合は、通常の勤務時間単価の1.35倍(135%)の手当が支払われます。土日の場合も同様に、手当として支給されるか、もしくは代休を取得するかを選択できます。このように、休日労働に対しては制度的な補償がしっかりと整備されており、サービス出勤とならないような配慮がなされています。
なぜ適用外?公務員の7時間45分勤務と特別法

- 公務員に労働基準法が適用されないケースと特別法
- 職種で違う?警察官や教員の勤務時間と休日の実態
- 教員の残業を規定する給特法とは
- 公務員の働き方は変わる?週休3日制の導入はいつ?
- 公務員が7時間45分勤務なのはなぜ?理由と実態(まとめ)
公務員に労働基準法が適用されないケースと特別法
公務員には、民間企業の労働者と同じように労働基準法が適用される部分もありますが、その身分や職務の公共性から、労働基準法の一部の規定(労働争議など)は適用されず、代わりとなる特別な法律が定められています。
労働基準法が適用されない主な理由は、公務員が「全体の奉仕者」であり、行政サービスを安定的に提供する責務を負っているためです。もしストライキなどの労働争議が認められると、国民生活に重大な支障をきたす恐れがあります。
そのため、国家公務員には「国家公務員法」、地方公務員には「地方公務員法」が適用されます。これらの法律や、それに基づく人事院規則・各自治体の条例によって、勤務時間、給与、休暇、服務規律といった労働条件が細かく規定されています。
労働基準法の精神は反映されていますが、公務員の特殊性に応じた独自のルールが運用されているのです。
職種で違う?警察官や教員の勤務時間と休日の実態

同じ公務員という身分でも、職種によって勤務時間や休日のあり方は大きく異なります。特に、一般行政職とは働き方が全く違うのが警察官や教員です。
警察官の働き方
警察官の多くは、24時間体制を維持するための交代制勤務です。例えば、交番勤務では「当番(24時間勤務)→非番(休み)→日勤または公休(休み)」というサイクルを繰り返します。休みは不定期で、事件や事故があれば非番や休日でも呼び出されることがあります。
教員の働き方
教員は原則として土日祝日が休みですが、部活動の指導や大会の引率、授業準備などで休日出勤が常態化しているケースが少なくありません。また、授業以外の業務が非常に多く、法定の勤務時間を大幅に超える長時間労働が社会的な問題となっています。
このように、職務の特性に応じて、公務員の働き方は多様化しています。
職種 | 勤務形態の主な特徴 | 休日 |
一般行政職 | 毎日勤務(定時勤務) | 土日祝日 |
警察官(交番勤務) | 交代制勤務(24時間勤務あり) | 不定期(シフト制) |
教員 | 毎日勤務+時間外業務が多い | 土日祝日(部活動等で出勤多) |
教員の残業を規定する給特法とは

公立学校の教員には、原則として残業代(時間外勤務手当)が支払われません。この根拠となっているのが、「給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)」という法律です。
この法律は1971年に制定され、教員の仕事は創造的で自発的なものであり、勤務時間の管理が難しいという考えに基づいています。そのため、時間外労働に対して残業代を支払う代わりに、給与月額の4%に相当する「教職調整額」を一律で支給することが定められました。
しかし、制定当時には想定されていなかった部活動の長時間化や、保護者対応の複雑化などにより、教員の業務量は激増しました。結果として、給特法が教員の長時間労働や「サービス残業」を助長する一因になっていると指摘されており、現在、中央教育審議会などで制度の抜本的な見直しが議論されています。
公務員の働き方は変わる?週休3日制の導入はいつ?

公務員の働き方は、今まさに大きな変革期を迎えており、その象徴が「週休3日制」の導入です。
これは、公務員の人材確保や職員のワークライフバランス向上を目的とした動きです。国家公務員では、2025年4月から、希望する職員が「選択的週休3日制」を利用できるよう、制度の本格導入が進められています。これは、1週間の総労働時間を維持したまま、1日あたりの勤務時間を長くすることで休日を増やす仕組みです。
地方自治体でも導入の動きは加速しており、東京都や千葉県など、すでに試行や本格導入を始めている自治体も出てきています。育児や介護、あるいは大学院での学び直しなど、職員一人ひとりの事情に応じた柔軟な働き方を可能にすることが期待されます。
一方で、窓口業務など住民サービスの維持や、職員間の公平性をどう担保するかといった課題もあり、今後の動向が注目されます。
公務員が7時間45分勤務なのはなぜ?理由と実態(まとめ)
この記事では、公務員の勤務時間に関する様々な疑問について解説してきました。最後に、本記事の要点を箇条書きでまとめます。
- 公務員の7時間45分勤務は民間企業の勤務実態に合わせた結果
- 根拠は2008年の人事院勧告
- 15分の差がプライベートの充実や自己研鑽の時間に繋がる
- 公務員の残業は部署や時期により大きく異なる
- 国家公務員の本省庁は残業が多い傾向にある
- 年間休日は約125日で民間平均より多い
- 窓口業務やイベント対応で土日祝日に出勤するケースもある
- 休日出勤には代休や手当が制度的に保障されている
- 公務員には労働基準法ではなく国家公務員法などの特別法が適用される
- 警察官や教員など専門職は一般行政職と働き方が大きく異なる
- 警察官は交代制勤務、教員は長時間労働が課題となっている
- 教員に残業代が出ないのは給特法という特別な法律が理由
- 働き方改革の一環として週休3日制の導入が進んでいる
- 国家公務員では2025年度から選択的週休3日制が本格導入される
- 公務員の働き方は制度と実態の両面から理解することが大切
